~転校生~
俺、仲澤遥夜は高校生活2年目の春を迎えた。1年の時のクラスは特に何もなく、平穏に時を過ごした。
そのおかげか、2年に進級したときの成績は学年トップだった。
…でも、1人の女によって人生をありえないほど変えられることになった。
「マジで?ありえねーよ!」
「いや、それがマジなんだよ!」
「何がマジなんだ?」
俺は2人の会話に割り込む。
「いやさ、超可愛い転校生が来るってずっと言ってんだよコイツ」
「それがマジなんだって!今日の朝…」
コイツが言うには、今朝職員室に寄ったとき、他校の制服を来た金髪の超可愛いコがうちの担任に怒られていたらしい。もちろん理由は頭髪で。
「でも金髪で可愛いコなんてそうそういねーよ?」
「確かにそうだけどさ…」
「可愛かったらなんでもいいのかよ…」
去年の冬、ストレートにフられた俺は今そういうことから遠ざかっている。
「仲澤、顔はイケてるのに頭良すぎるんだよ。俺たちからすれば頼りになる仲間だけどさ、女はバカにされるのが1番嫌いなんだぜ?」
「そうは言っても、バカは嫌いなんだから仕方ないだろ………」
「よーし、席に着けー!」
担任が教室に入ってきた。みんな各自の席に戻り、俺も自分の席に戻った。
そういえば、俺の隣の席が空いている。新学年早々遅刻するなんて、バカな奴だな。………もしかして………?
「みんな、もう知ってるかもしれないが、このクラスに転校生が来ることになった。では、入ってきてくれ」
ドアを開けて入ってきたのは、本当に金髪の女の子だった。染めているにしては髪がサラサラで、身長は160cm前後だろうか、腰まである長い髪を揺らしながら教卓の横で立ち止まった。
「彼女が転校生の北城愛姫さんだ。みんな、仲良くしてやってくれ」
スカートの裾がやけに短く、ガムかなにかを噛んでいる。コレじゃ、誰も近づきがたいだろう。
「北城さん、何か自己紹介でも…」
「ない」
ない、の一言で担任の言葉を遮り、自己紹介を終えた。多分、誰も友達になりたいとは思わないだろう。少なくとも、俺がそうだ。
「………じゃ、あそこの空いてる席に座ってくれ」
………やっぱりアイツの席は俺の隣か。
ゆっくりと歩いてくるその姿は、やはりどこか嫌いになれない部分があった。
「よろしく」
「………あぁ」
椅子に座った北城から返ってきたのは、予想はしていたがやはり生返事だった。
結局北城は放課後まで誰とも言葉を交わさず、足早に教室を出て行った。
「やっぱり変な奴だよな」
「ちょっと可愛いからって調子に乗ってるんじゃない?」
「友達いないんじゃねーの?」
などいきなりの罵声を浴びていた北城はこれからどうなるのだろうか。
そんなことになんか興味がないはずの俺も、なぜか気になっていた。
そして次の日、俺は北城に校内を案内しなくてはならなくなった。めんどうだからいい、と北城に言われたが、この学校は何かと部屋が多い。迷子になられて俺が怒られるのはごめんだ。
「ここが理科室で………って聞いてるのか、北城」
「………はぁ………。めんどうだからいいって言っただろ」
そう言ってカバンから取り出した箱から何かを出して口にくわえた。
「バカ、んなもん吸ってんじゃねえよ」
タバコを奪い取り、左手のライターと箱も奪い取る。
「何すんだよ、お前に関係ないだろ!」
「関係ないわけないだろ、自分がまだ子供だってことくらい………!」
気がつけば、周りを不良グループに囲まれていた。
「子供なのはお前だよ、バーカ」
北城は不良の間を通り抜け、歩き去る。
「お前最近ちょっと調子乗りすぎじゃねーか?頭良いからって良い人面すんなよ」
「………中学の頃と同じだな。バカはバカらしく大人しくしていればいいんだよ」