表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/25

第九話 知らない街の温度

はいちょっと遅れてます!ごめんなさい!

九話です!

最後にお知らせがあります!

名古屋駅に着いた瞬間、空気が変わった。


同じ日本のはずなのに、どこか別の国に来たみたいだった。

天井の高いホーム、止まらない人の流れ、響き続けるアナウンス。

京都からずっと普通列車に揺られてきたはずなのに、その時間が一気に圧縮されて、現実だけが目の前に現れた。


Sが真っ先に声を上げる。

人の多さに圧倒されたようで、それでも楽しそうだった。


ふうは辺りを見回しながら、情報を一つも逃さないように目を動かしている。

こーは少しだけ眉をひそめて、ぽつりと言った。


「これ、絶対迷うやつじゃん…」


その声は、もう遠慮のないタメ口だった。

それを聞いて、なぜか少しだけ嬉しくなる。


駅構内を進むたびに、方向感覚が曖昧になっていく。

地図を見ても、実際の空間が広すぎて、頭の中でうまく結びつかない。


改札を出るまでに、早速一度遠回りをした。

誰も責めなかったし、むしろそれすら旅の一部みたいだった。


外に出た瞬間、熱気が一気に押し寄せる。


湿った空気が肌にまとわりついて、呼吸が少し重くなる。

大阪よりも、京都よりも、明らかに強い夏だった。


「うわ、暑……」


こーが額を押さえながら言う。

Sは笑って、これぞ名古屋だと言わんばかりに大げさにうなずいた。


最初の目的は、昼ごはんだった。

せっかく来たんだから、名古屋っぽいものを食べよう、という流れになるのは自然だった。


地下街に入ると、少しだけ涼しくなる。

でも道は複雑で、同じ場所を通っている気がしてくる。


結局、観光客向けの味噌カツの店に落ち着いた。

完璧な選択じゃないかもしれないけど、今の僕たちにはちょうどよかった。


料理が運ばれてきた瞬間、甘くて濃い味噌の匂いが広がる。

僕は皿を見て、正直な感想を口にした。


「量、多くない?」


一口食べると、思った以上に重くて、それでも嫌じゃない味だった。

Sは目を輝かせて、これは当たりだと断言する。

ふうは黙って食べながら、たまに写真を撮っていた。


同じテーブルで、同じものを食べている。

それだけのことなのに、胸の奥が少し温かくなる。


午後は、特に目的を決めずに街を歩いた。


栄のあたりまで移動して、高いビルを見上げたり、知らない店を覗いたりする。

ふうは街の一角を切り取るように、何度もシャッターを切っていた。


Sは相変わらず元気で、名古屋の街に完全に飲み込まれている。

こーは、朝よりも表情が柔らかくなっていた。


「……来てよかったな」


その一言は、誰に向けたわけでもなかった。

でも、確かに全員に届いた気がした。


夕方、宿にチェックインする。


ビジネスホテルの一室。

狭いけれど、清潔で、妙に落ち着く空間だった。


ベッドに腰を下ろした瞬間、移動の疲れが一気に出る。

長い電車の時間、慣れない街、人の多さ。


それでも、不思議と嫌な疲れじゃなかった。


夜は、近くのコンビニで買ったものを部屋で食べた。

名古屋限定のお菓子や、適当に選んだ飲み物。


窓の外には、知らない街の夜景が広がっている。

光の並び方も、音の距離感も、全部が新鮮だった。


布団に入る前、少しだけ今日一日を思い返す。


京都で合流した瞬間。

名古屋駅に降り立ったときの空気。

笑いながら食べた味噌カツ。


この場所に来られたのは、音楽があったからだ。

それだけは、間違いない。


電気を消して、部屋が暗くなる。

誰かが小さく寝返りを打つ音が聞こえる。


知らない街で迎える夜。

でも、不安はなかった。


この一年の中で、

また一つ、確実に忘れられない日が増えた。


そう思いながら、ゆっくり目を閉じた。

次は、21:00!

「カクヨム」にてこの作品を公開する予定です!

詳細は、次のお話の最後にてお知らせします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ