表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/25

第十二話 保存期限

はい十二話です!

夜。

机の上には、まだ温かいままの紅茶と、閉じられたカーテン。

今日も、外には出なかった。

でも、不思議と息は苦しくなかった。


スマホが震えた。

優 :今日は集まれる?

S :おっ、来た!

ふう:行けるよ〜

こー:大丈夫


「集まる」という言葉が、もう少しだけ現実味を持つようになっていた。

顔を合わせなくても、声を出さなくても、

この四人は、確かに“同じ場所”にいる。


S :じゃあ次の曲、方向決めよ!

S :前のやつより、ちょい明るめで!

ふう:夏終わったけどね笑

S :関係ねぇ!心は年中夏!

こー:陽キャすぎ

S :褒め言葉だろそれ!


画面越しに、Sの声が聞こえる気がした。

文字だけなのに、うるさい。


優 :明るいの、いいと思う

優 :テンポは少し速めで

ふう:歌詞はだれがする?

こー:俺やるよ

ふう:私も少し書くね

S :最高じゃん!


いつの間にか、役割を確認しなくなっていた。

それが当たり前になっているのが、少し怖くて、少し嬉しい。


S :てか優

S :最近返事早くね?

S :秒じゃん

ふう:確かに

こー:言われてみれば

優  :そう?

優  :たまたまじゃない?


その「たまたま」が、やけに整いすぎている気がした。

いつも同じ時間帯。

いつも同じリズム。


ふう:スケジュールきっちりしてそう〜

優 :まあね〜

S :意外〜

S :俺なんてさっき起きたもん!

こー:今22時だけど

S :細けぇことはいいんだよ!


 笑いの流れに乗りながら、

 こーは、画面の端に表示された時刻を見る。


 22:07。


 そして、優のメッセージは、22:07、22:08、22:09。

 まるで、刻まれているみたいだった。


こー:優ってさ

こー:いつ寝てんの?

S :急にどうした

ふう:確かに謎

優 :ちゃんと寝てるよ


少し、間があった。

ほんの一瞬。

でも、こーは見逃さなかった。


S :怪しい…

S :絶対夜型だろ

優 :違う

ふう:じゃあ朝型?

優 :どっちでもない


その答えが、一番よく分からなかった。


S :なにそれ哲学〜?

ふう:笑

こー:まあいいや

こー:曲の話戻そ


流してしまった。

流せてしまった自分に、少しだけ引っかかりを覚えながら。


優 :デモ送るね。今日中に。

S :今日中!? いま22時だよ!

ふう:無理しないでね。

優 :大丈夫


その「大丈夫」は、

誰かに言い聞かせるみたいだった。


数分後、ファイルが届く。


S :はっや

S :てか完成度えぐ

ふう:綺麗……

こー:すご


言葉が、それ以上出てこなかった。

完成しすぎている。

勢いじゃない。

削るところも、残すところも、全部決まっている。


S :これさ

S :最初から全部見えてた?

優 :うん

優 :終わりまで


その言い方が、なぜか胸に残った。

「曲の終わり」だけじゃない気がして。


ふう:タイトルどうする?

こー:仮でいいなら

こー:「保存期限」


送った瞬間、少し後悔した。

重いかもしれない、と思った。


S :え、良くね?

ふう:私は好き

優 :いいね


優の返事は、短かったけど、否定じゃなかった。


優  :今のうちに

優  :残しておこう


まただ。

その言葉。


こー:なんで?

S :哲学第二弾?

ふう:笑


優 :なんとなく

優 :消えるものもあるから


誰も、深掘りしなかった。

でも、全員が、

少しだけ画面を見つめる時間が伸びた。


S :ま、消える前にバズらせよ!

ふう:前向きすぎ

こー:それでいいか


それでいい、はずだった。


優 :今日はここまでにしよ

優 :続きはまた今度!

S :了解!

ふう:おやすみ

S :おやすみ〜!

こー:おやすみ


チャットが静かになる。


画面を閉じても、「保存期限」という言葉が、頭から離れなかった。


期限付きなのは、曲なのか。

この場所なのか。

それとも__


答えは、まだ、来ない。

今日も昨日みたいな感じで投稿するかもです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ