第十一話 今のうちに
はい十一話です!
わかりにくいけど、ここからこー視点です。
優 :音源、最新版上げたよ〜! 念のため、前のも残してある
こー:ありがと。確認するね。
S :お、きたきた! ていうかファイル数多くない?
ふう:ほんとだ。優、整理めっちゃ細かいね。
優 :まぁ、消えたら困るからねー
その一言が、妙に静かに落ちた。
いつも通りのチャットのはずなのに、そこだけ温度が違う気がした。
こー:まあ、確かに大事だよね。
S :大丈夫大丈夫!このペースなら夏の思い出曲、普通に完成っしょ!
ふう:MVも仮できてるよ
ふう:今の雰囲気、すごくいい
優 :じゃあ、この曲、
優 :今のうちに、ちゃんと仕上げとこ
一瞬、指が止まった。
今のうち、という言葉が、やけに引っかかる。
こー:今のうち?
S :ん?
S :期限とかあるん?w
優 :ないないw
優 :ただの言い方だよ。
ふう:なんだ〜びっくりした〜!
ふう:でも、今が一番ノってる気はするよね
S :それな!!
S :このメンバー、噛み合いすぎw
確かにそうだった。
作詞、作曲、アレンジ、映像。
一度も大きくぶつからず、自然に形になっていく。
(出来すぎてる、気もするけど)
こー:投稿タイミング、どうする?
こー:前と同じ時間帯?
優 :それがいい
優 :前と、同じで
S :運命論者〜!
S :でも実際、前の伸び方エグかったしな
ふう:偶然にしては、だったよね
その言葉に、誰もすぐ返事をしなかった。
偶然。
でも、偶然で片付けるには、少しだけ出来すぎている。
こー:名古屋の時もさ
こー:なんか変じゃなかった?
S :急にどうしたw
こー:写真見返してたら
こー:時間、ちょっとズレてる気がして
ふう:あ
ふう:私もそれ思った
S :え、マジ?
S :気のせいじゃね?
数秒、返信がない。
優 :気のせいじゃない?
優 :多分
その「多分」が、やけに弱く見えた。
ふう:まあ、楽しかったからいっか
S :そーそー!
S :変でもなんでも、今楽しいし!
その「今」という言葉が、胸に残る。
(今、か……)
夜、ひとりで音源を聴き返す。
悪くない。むしろ、今までで一番いい。
それなのに、なぜか思う。
__この時間があまり長く続かない気がする。
理由は分からない。
ただ、楽しい瞬間ほど、終わりが近いような、そんな予感。
翌日、共有フォルダに新しいバックアップが増えていた。
優 :全部、残しといた
優 :後で必要になるかもしれないから!
こー:必要?
優 :うん
優 :形に残ってないと、意味ないでしょ?
意味。
その言葉の輪郭が、まだ見えない。
でもこのとき、誰も知らなかった。
この一年が、特別で、
そして限られているかもしれないことを。
チャットは今日も続く。
いつも通り、明るく、軽やかに。
明日もこんな感じで投稿するかも。
なんか書いてると文章がポンポン出てきて、
ある程度最終回までの道筋は立ってます。




