第十話 波の底に沈む音
最後に大事なお知らせがあるよ!最後まで読んでね!
十話! 記念すべき十話!!!
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朝、最初に目を覚ましたのは僕だった。
カーテンの隙間から差し込む光が、昨日より少しだけ白い。
名古屋の二日目。
体は重いはずなのに、頭は妙に冴えていた。
隣のベッドを見ると、Sは相変わらず無防備な寝相で、ふうは丸くなって眠っている。
優だけが、すでに起きていた。
ベッドに腰掛け、スマホを見つめたまま、ほとんど動かない。
画面の光が、彼の横顔を淡く照らしている。
「……おはよ」
声をかけられて、少し遅れて優は顔を上げた。
「おはよう。早いな」
その一言で会話は終わった。
別に不自然じゃない。
いつも通り、のはずだった。
でも、なぜか胸の奥に、小さな引っかかりが残った。
名古屋港水族館へ向かう電車の中は、朝のわりに混んでいた。
窓に映る自分たちの姿は、修学旅行の班みたいで、少し笑える。
Sはテンション高めで、
「シャチ見たい! イルカも!」
と騒いでいる。
ふうはそれを横目で見ながら、
「人多いから、先に写真スポット把握しよ」
と現実的だ。
優は、相槌を打ちながら、時々スマホを確認していた。
それが一度や二度なら気にならなかった。
水族館に入ると、空気が一変する。
涼しくて、暗くて、青い。
巨大な水槽の前に立った瞬間、言葉がなくなった。
ゆっくりと泳ぐ魚たち。
ガラス越しに揺れる光。
「……すげえ」
Sが珍しく小声で言う。
ふうは夢中でシャッターを切っている。
優は、水槽から少し離れた場所で立ち止まっていた。
魚を見るというより、奥の暗がりを見つめているように見えた。
「優?」
呼ぶと、すぐにこちらを向く。
一瞬だけ、何かを隠すみたいな表情をしてから。
「ごめん、今行く」
その「ごめん」が、やけに耳に残った。
イルカショーでは、全員ちゃんと笑っていた。
拍手もしたし、写真も撮った。
楽しくなかったわけじゃない。
でも、優は途中で一度だけ、席を外した。
戻ってきたとき、目元が少し赤く見えたのは、照明のせいだと思うことにした。
昼を軽く済ませて、次は名古屋城。
真っ青な空に、金の鯱がやけに眩しい。
観光客の波に流されながら、城の中を進む。
歴史の展示を見て、
「昔の人、よくこれ作ったな」
とSが感心する。
ふうは構図を探すように、何度も立ち止まる。
こーは、階段の多さに軽く文句を言いながらも、ちゃんとついてくる。
優は、ここでも少し遅れがちだった。
「疲れてる?」
聞くと、すぐに首を横に振る。
「大丈夫。ちょっと考え事してただけ」
その答えが、なぜか一番不安だった。
最後は熱田神宮。
街の喧騒から切り離されたような、静かな空間。
鳥居をくぐった瞬間、空気が変わるのがわかる。
木々の影が濃くて、足音が吸い込まれていく。
自然と、全員の口数が減った。
ふざけていたSですら、ここでは声を抑えている。
拝殿の前で手を合わせる。
何を願ったのか、自分でもよくわからない。
ただ、今のこの関係が、
このまま続けばいいと思った。
優は、少し遅れて手を合わせた。
その横顔は、どこか決意めいた硬さがあった。
帰り道、駅へ向かう途中で、優が言った。
「今日は、ありがとう」
唐突で、妙に改まった言い方だった。
「何? 急に〜!」
こーが笑う。
「楽しかったってだけだよ」
そう言って、優は目を逸らした。
夕方、名古屋駅で解散する。
改札前で、それぞれの帰路を確認する。
乗り換えの時間。
「じゃあね〜! またチャットで!」
「写真送るね」
軽い言葉を交わしながら、別れていく。
最後に残ったのは、優とこーだけだった。
「気をつけて帰れよ」
「優もね」
一瞬、優が何か言いかけて、やめた。
「また連絡するね」
そう言って、背を向ける。
人混みに紛れていく背中を見送りながら、
こーは胸の奥の違和感を、うまく言葉にできなかった。
楽しかった。
確かに、楽しかった。
でも。
__どこかで、音が一つ、ずれていた気がした。
その理由を知るのは、
もう少し先の話になる。
最後まで読んでくれてありがとうございます!
<大事なお知らせ>
えー、このたび、私「余花崎奏太」は、
「カクヨム」にて本作品「この音が、消えませんように。」を
本日1/28(水) 23:00、第一話〜第九話を一斉公開いたします!
なぜ、一斉公開なのかというと、単純に何回もページを開いてもらうより、
一回で何話も読めた方がお得じゃん?みたいな感じで一斉公開という形になります!
質問などはコメントで受け付けておりますので、いつでも質問してください!
公開名 :あの音が、消えませんように。
作者 :余花崎蒼太(@Yokazaki-sota) https://kakuyomu.jp/users/Yokazaki-sota
公開日時:1/28 23:00 第一話〜第九話




