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花道闊歩 -異世界ガイドとして死ぬ運命の少女たちを幸せな老衰エンドへ導きます-  作者: ガリガリワン
第一部 第一章 貧乏少女編

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第八話 親孝行


「お嬢様お目当てのお飲み物はこちらです」


 俺は自信を持ってそう言うと、

 フリィアちゃんが瓶を一本持ってリルメスお嬢様に手渡した。


「ふーん……見た目は悪くないわね」


 興味深そうに瓶を見るリルメスお嬢様。

 恐らくだがこの執事(しつじ)、いやグラバさんは、

 この柑鮮(フルジュア)がユユジュからできてることを知っている。


「お嬢様、先に(わたくし)めが毒味させていただきます」

「いやよ! あたしが飲むのっ!」


 おうおう、アホ毛がぴょこぴょこ揺れてる。

 つくづく思うが生意気なわがままお嬢様だ。


「お嬢様っ!」


 リルメスお嬢様は瓶の(ふた)を開けて口に入れてしまった。執事(しつじ)のグラバさんは肝を冷やしただろうな。


「お嬢様!? お嬢様! 大丈夫ですか!?」


 でも安心してくれグラバさん──


「……なによ。こっれぇ……美味しい!!」


 ウチのジュース、バカ美味いんで。


「お嬢様……?」

「美味しいわっ! これ美味しすぎるわよ!!」


 リルメスお嬢様は一気飲みした。

 品性が欠けるレベルの飲みっぷりだが、

 余程(よほど)美味かったんだろう。不機嫌そうな顔はパッと明るくなって、可愛らしい笑顔を浮かべてる。


「グラバさん。貴方も飲んでみませんか?」

「えぇ……よ、よいのですか?」


 俺はフリィアちゃんに瓶を手渡しさせた。


「で、では──」


 グラバさん。あんたお疲れだろ?

 効くぜ。このジュースは骨まで染みるぞ。


「うまっ……! なんだこ……ん″ん″

 美味しいですね……一体どうやって?」


 敬語が崩れるレベルか、ふふふ嬉しいな。


「それは企業秘密です」


「ねぇ、これ美味しすぎるわ! いっぱい買って!!」

「そ、そうですね。これは常備(じょうび)したい……

 ケルエタ様、あと何本ありますか?」


 ハマったな? 貴族だって商売じゃ対等な客だ。


「それが一本限定でして……」

「えーっ!! なんでよ! お金なら払うわ!」


 案の定、お嬢様はめちゃくちゃ不機嫌になった。


「……ケルエタ様。非常に下劣(げれつ)ではありますが、

 金銭(きんせん)面での支援を致しますので我々に──」

「あぁ売りますよ! 支援ありがとうございまーす!」


 あ〜〜。これこれこれェッ!!

 待ってましたそのお言葉!


「……ということは制限は?」

「なしですよグラバさん! 在庫を補充したら優先的に送りますし、制限なんてあるはずがないです!」


 執事(しつじ)のグラバさんはホッとしてた。


 多分、わがままなお嬢様がこれを逃すわけもなく、

 たくさん買えなかったら一生文句祭りだったはずだ。


「では……毎月、白金貨6枚はいかがでしょう?」


 え、そんなくれんの?


「白金貨6枚……6枚? ろくみゃい……?」


 フリィアちゃんがバカになってる。


「ふぇえ、そんなにくれるんですかぁ……?」


 俺もバカになった。

 日本円で30万円。こんな簡単な商売で?


「ですが、見合った商品を提供してくださいませ。

 大金です。責任が伴うことをお忘れにならずに」


 お堅いこと言っちゃって〜。

 うへへへ、30万円。毎月30万円確定?

 うっは〜、最高すぎだろこれ〜!



「ねぇグラバ、この二人″屋敷に住まわせましょ″」


「え?」「ふぇ?」「は?」


 お嬢様以外の三人全員、耳を疑った。


「だって、屋敷だったら作ってすぐ飲めるでしょ?

 空き部屋ばっかなんだしそうしましょ!」


「で、ですがお嬢様、こちらの方々は貴族ではっ」

「うるさいわね〜あたしが良いって言ってるの!」


 ……マジで?



 * * *



 マジだ……


 今、俺とフリィアちゃんは別荘(べっそう)の中に入ってる。

 普通に生きてちゃまず入れない空間だ。


 執事(しつじ)の人がいっぱいいて、ザ・メイドって感じの女性も多い。それに鎧を着た人もたくさんいる。


「あの……私たち場違いなんじゃ?」

「……お嬢様の決定ですので。

 忠告しておきますが危害なんて加えようものなら、

 これから先の人生は短くなることになりますよ」


 しませんしません。なんなら守る対象です。


 それにしても廊下はピッカピカで綺麗だ。

 日差しが窓から入り込んでて暖かい。


「……その、フリィアちゃんにおばあちゃんがいるんですけど、その人も一緒に住むことって……?」

「無理です……さすがにこれ以上は……」


 ですよね……フリィアちゃんは今の言葉を聞いて、

 ちょっとだけしょんぼりしてた。まあ、会えないわけじゃない。


「その……このあと外出って」

「部屋を紹介しましたら許可しましょう。

 基本的に自由としますが屋敷内は見張りをつけます。

 少々不快だとは思いますが、我慢なさってください」



 俺とフリィアちゃん用の部屋はデカかった。

 良い旅館の一室みたいな……いやデカいな。


 フリィアちゃんが住んでたボロつきあげた小家、

 あれが丸々入るレベルでデカい部屋だ。


「……ここで基本的に生活してもらいます。

 ケルエタ様、あの柑鮮(フルジュア)という飲み物は、

 常に五本以上は維持(いじ)していただきたい。

 それさえできていれば自由としましょう」


 楽な仕事すぎる〜……一日で生活変わったな〜。


「では、お出かけするようですので、

 (わたくし)めはこれで。(わたくし)はお嬢様の部屋におりますので、何かあればご報告くださいませ」


 フリィアちゃんはまだ状況が理解できてなかった。

 もちろん俺も若干夢現(ゆめうつつ)だ。


「あぁ、それとこれは前払いです」


 フリィアちゃんの手がグラバさんに開かれ、

 白金貨6枚が手のひらの上に置かれた。


 キラキラだ。宝石みたいですげぇ綺麗だ……


 そうして固まってる間にグラバさんは部屋を出て行って、廊下を歩く足音が遠くなって行った。


「……ケルエタさん」

「なんだ?」

「わたし、お金持ち?」

「あぁ……かなりな」


 フリィアちゃんは子供らしい声にならない声で、

 しっかりと6枚握りしめたまま足踏みした。


「やったやったやったぁ!!

 おばあちゃんとご飯行きたい!!」

「あぁ、私もそれは言おうと思ってた。

 行こう。商売大大大成功記念でな」



 * * *



 てことで、ステーキを食べに来た。

 この世界でもステーキっていう名前だった。


「美味しそ〜……」

「こんなご馳走をフリィアから貰えるなんて……

 ばあば、涙が溢れて前が……うぅっ、うぅうっ」


 親孝行。いやフリィアちゃんの両親は亡くなってる。

 でもおばあちゃんはフリィアちゃんのたった一人の身寄りだ。


 幸せそうだ。どっちもな。


「ケルエタさん……あぁりがとうございますぅ」


 おばあちゃんは深く頭を下げてくれた。

 机に並ぶステーキ二枚の前で深く頭を下げてた。


 ……感謝。思えば感謝されることは増えた。


「いえいえ、いいんです。

 礼は長生きでお願いしますよ?」

「老いぼれになってもこんな幸せを……いんやぁ、

 なんて良い人生なんでしょうかぁ……」


 親孝行……稼いだ金でフリィアちゃんは……

 俺はそういうのしたことなかったな……


 母さん。俺の母さんは一人で俺を育てあげてくれた。

 いつだって母さんは味方だった。


『喧嘩負けた』

『じゃあ強くなっちゃう?』


『テスト……部屋開けないで、寝るから』

『ケンちゃん……あっ』


『大学落ちた……ごめん』

『いいのよ。お金は出すから大丈夫よ』


『母さん。今年も帰れないと思う』

『そう……頑張ってるもんね。

 母さんは大丈夫だよ』


 親孝行……俺、最低だ。

 親より先に死んだんだ。



 いや……なに思い出してんだ。

 もう関係ないだろ。忘れろ。

 俺はもう異世界の住人なんだ。


「ケルエタさん……?」

「ん、あぁフリィアちゃん。なんだ?」

「その……ケルエタさんに改めて感謝したくって。

 命も救ってくれたし、こうやってお金だって……」


 ……そう、そうだな。



「ありがとうございますっ!

 わたし! ケルエタさんのおかげで″幸せ″です!」



 あぁ……なんだ?

 感謝、されたことがないわけじゃない。


 でも……心の底からの感謝だ。

 俺は、親不孝者の最低野郎だ。


 だけど……必要とされてるんだ。

 こうして俺は生きてるんだ。


 ……悪くないな。

 母さんごめん。親孝行はできない。

 でも……俺、この世界で本気で頑張るよ。


 主人公じゃなくてもいい。

 誰かに感謝されるような……立派な人になる。


「あぁ……どういたしまして」



【十二歳、戦争に巻き込まれ死亡】



 乗り越えさせよう。俺は異世界案内役(ガイド)なんだ。

第一部 第一章 貧乏少女編 -完-


次章

第一部 第二章 天才お嬢様編


* * *


ここまで読んで頂きありがとうございます!!

第一章いかがでしたでしょうか?

次章の第二章はフリィアとリルメスの深掘りです!


明日も【8:15】【18:15】に投稿です!


ぜひ少しでも面白いと感じましたら、

評価の★★★★★とブクマの方をお願い致します!

↑執筆する中で非常に励みになります!

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― 新着の感想 ―
いいですね! 無機物化の転生ってどうにも受け身になりがちな作品があって気になるのですが この作品は制約が酷いけど工夫のしがいもあって、その上でちゃんと意思疎通しながら未来を構築していく感じが面白いです…
一章拝読させて頂きました。 主人公がバリバリ無双するってわけじゃないのが斬新で、また能力も万能ですが制限がキツいので先の展開が読めず楽しみです。 まだ序盤ですがかなり期待大!引き続き応援してます。
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