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花道闊歩 -異世界ガイドとして死ぬ運命の少女たちを幸せな老衰エンドへ導きます-  作者: ガリガリワン
第一部 第一章 貧乏少女編

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第七話 訪れる貴客

 

 異世界転生して十五日目。

 昨日フリィアちゃんとおばあちゃんが頑張ったから、

 ユユジュのジュースは30本出来上がってる。


 今日が勝負時だ。


「う、上手くいくかな?」

「私の商売に狂いはない。

 家で待つお婆さんのためにも稼ぐぞ」


 商品名、これは一夜悩んで考えた。


 ゴルジュアはりんごジュースで、

 日本語で当て字するなら【檎鮮(ゴルジュア)】とかだな。


 雰囲気(ふんいき)的にはゴルジュア並みの人気を持ってほしい。


「ケルエタさんが言うなら大丈夫ですねっ……」


 ……フルジュア。【柑鮮(フルジュア)】が商品名だ。


 よし……緊張(きんちょう)するな。

 大丈夫だ。っふー……よし──


「フリィアちゃん。売りに行くぞ」

「は、はい……!」



 * * *



 荷車(にぐるま)を押して村の中心部まで向かう。

 デッカいあの家は領主リアダバの別荘(べっそう)


 確か今は娘のリルメスというお嬢様が、

 首都(しゅと)を離れて滞在しているらしい。


 ……もう一人の幸せにするべき女の子はリルメスだ。

 根拠は死のリストの死因一覧……ここで奇跡的にコンタクトを取れたら最高すぎる収穫になる。


 リルメスが対象じゃなかった場合、

 骨折り損だが、正直こればっかりは予想を結論として考えて行動するしかない。


 とりあえず、とにかく売って名を知らしめよう。

 そうしたらいずれ出会える。滞在してる期間中に会うには初動(しょどう)でめちゃくちゃ売らなければ……




「……柑鮮(フルジュア)? なんだそれ」


 村の中心部、広場に着いた。

 まあ早速注目は集まる。なにせ新商品、新しいものってのは小さなコミュニティじゃ絶対的な力を持つ。


試飲(しいん)してみますか?」

「うおっ、あんた妖精(サルェタ)族か……」


 試飲(しいん)しますかって聞いてんだよ。

 商品よりも興味(きょうみ)深そうに俺を見る一人の男。

 多分農家。てか、俺の種族ってそんなに珍しいのか?


全知脳(ぜんちのう)発動】


 はぇ〜珍しいらしい。っていうか幸福の象徴か。


【詳細】

妖精(サルェタ)族 宿す属性 光。

 森奥や洞窟(どうくつ)最深部、山頂などに生息する種族。

 知性を持ち対話も可能で誰に対しても友好的。

 妖精(サルェタ)族に気に入られると幸福が舞い降り、

 生活なども豊かになるという実体験談(じったいけんだん)が多い。

 そのため、幸福の象徴として(あが)められている存在】


【続きを読む】なんてあるが、まあ後でいい。

 今は商売する時間なんだ。稼ぐぞ〜。


「どうです。私が監修した飲み物です。

 檎鮮(ゴルジュア)より甘酸っぱくさっぱりしますよ」


 商品を凝視(ぎょうし)する男は瓶を持って言う。


「これ何で出来てるんだ?」


 さぁきたぞ。こっからが勝負だ。


「″ユユジュ″です」

「へー、ユユジュ……ユユジュ!?

 テメッざけんな何売ってんだよ!?」


 ほーらブチギレ、でも策はある。


「フリィアちゃん。これ飲んでみて」

「いいんですか……!」


 フリィアちゃんは俺がコツンと体当たりした瓶の蓋を開けて、グビグビと一気飲みした。


 銭湯にいるおっちゃんみたいな飲みっぷりだ。


「美味しい〜」

「うぇ〜っ死ぬぞ嬢ちゃん……」


「ユユジュは即効性の毒です。

 接種から一分ほどで口内が痙攣(けいれん)し、

 やがて胃から吸収されて全身の筋肉が痙攣(けいれん)

 そして最後には心臓が止まって死にますが……

 こうして喋ってる間に、一分経ちました」


 フリィアちゃんはニコニコと余韻(よいん)に浸っている。


「す、すげぇ……どうやって作ったんだ!?」

「企業秘密です。お買い上げになられますか?」


 農家の男は悩んでる。

 もうこうなれば勝ちだ。

 

「……試飲(しいん)させてくれ、話はそれからだ」


 ほらきた。『試飲(しいん)させてくれ』これが勝ち演出。


「フリィアちゃん、少し飲ませてあげて」

「はい。ちょっとですけど……!」


 フリィアちゃんが別瓶(べつびん)に注いだ柑鮮(フルジュア)を、

 農家の男は恐る恐る口にした。



「ぬぉおおわあああああっっ!?

 うんまぁああああい!!!」


 オーバーリアクションだな……

 まあ、マジで美味い時の反応だ。


「なんだこれぇ……美味すぎる!!」

「では、お買い上げになられますか?」


「三本くれッ! 次はいつ販売だ!?」

「お客様〜これ一本限定でしてぇ。

 今なら、宣伝してくだされば一本追加で渡しますよ」


 そう、これが俺の策略。

 人間は特典に弱い。言わば無料が大好きだ。


 宣伝という微妙(びみょう)に楽な仕事。

 それをするだけでこの超美味い限定品がプラス一本!

 こんなの誰だって引き受ける。そうなればこっちとしては宣伝が勝手にされて軌道に乗るッ!


「するぅッ!! いや、させてくれェ!!」


 ははっ血眼(ちまなこ)だ。怪しいもんは入れてないぞ?


 それにしてもまあ〜男は必死で、そこら辺の奴を捕まえるために走って俺たちから離れてった。



「フリィアちゃん」

「はいっケルエタさん」

「商売大成功だ。つまり?」

「お金持ち……?」


 ピンポーン。


「大正解。稼ぐぞ〜っ」

「やったぁ〜!」



 * * *



 販売開始から一時間。二十五本売り切れた。

 もっと作ればよかったが、(えさ)は与えすぎちゃならん。


「ケルエタさん……グロワール銅貨がこんなに!」


 フリィアちゃんは目を輝かせて小袋の中を見せてくる。ふふふ、いや、さすがに俺も嬉しいな。


全知脳(ぜんちのう)発動】


 あ、そういえばお金の知識はまだなかったな。


【グロワール通貨 種類 銅・大銅・銀・金・白金。

 グロワール王国の通貨は五種類。円換算(えんかんさん)は以下表。


 銅貨  100円

 大銅貨 500円

 銀貨  1000円

 金貨  10000円

 白金貨  50000円

 また、換金(かんきん)制度も存在している】


【続きを読む】は相変わらず無視で、なるほどな。

 ならこれ何円あるんだ? 金額設定はおばあちゃんに任せてたが、見た感じ銅貨4枚で取引してたし……


 売り切れば12000円……? 400円のジュース?

 たっっか、そんな高いんだ。いや待てよ。


 何も金銭(きんせん)面の感覚は日本じゃないんだ。

 400円が200円くらいの感覚なのかもしれない。


 ってなると……ちょっと高い美味いジュースか。

 そりゃぁ売れるか〜!



「ケルエタの旦那ッ……お屋敷の執事長(しつじちょう)様とお嬢様が!」


 宣伝協力してくれてた農家の男が、

 ちょっと冷や汗垂らしながらそう言ってきた。


 屋敷……? え、マジで? もうくんの?


「ケルエタさん。お屋敷の執事長(しつじちょう)様とお嬢様って……」

「どう考えてもお偉いさんですよ。

 っふー。ちょっと緊張しましょうか」


 執事長(しつじちょう)……執事の中のボスだな。

 それにお嬢様も来るのか……いきなり接触成功?



「お、お嬢様、(にら)むのはおやめください」

「なに見てんのよ!!」


 もしかしてあれ……? 

 正面から歩いてくる二人組、服は高そうだ。


 顔に古傷がある背の高い超イケオジ執事(しつじ)と、

 周囲に(にら)みを効かせる超強気で美形なお嬢様。


「貴方がケルエタ様でしょうか……?

 初めまして、(わたくし)領主リアバダの執事長(しつじちょう)をやらせていただいている……グラバ・シャクベルトと申します」


 礼儀正しい紳士(しんし)のおじさん……

 俺の店の店長みたいな人だな。


「どうも……私はケルエタと言います」

「領主の執事(しつじ)様とお嬢様……は、初めまして、

 わたしはフリィア・サタニルドって言います」


 なんだフリィアちゃん。礼儀は知ってるんだな。


「……お嬢様」

「なによ! あたしも名乗るの!?」

「お嬢様……一人称を(わたくし)に……!」


 どうやら、随分(ずいぶん)手を焼いてるみたいだな。

 わがまま強気お嬢様は嫌々名乗ってくれた。


「リルメス・レクセト・ボルワールよ……

 美味しい飲み物があるって聞いたのだけれど、

 それはどこにあるの? 早く飲ませてちょうだい」


 そのグラバって人は髪が焦茶で目は緑っぽくて、

 リルメスは赤紫の髪に綺麗な桃色の目だ。


 まあ……お屋敷の執事長(しつじちょう)様とクソ生意気なお嬢様。

 ここに来たってことは……【柑鮮(フルジュア)】が目当てだな?



 初日でここまでいけるなんてな。


 村が小さいのもあるのかもしれんが、

 売り切れる前に来てくれてよかった。


 売ろう。そして魅了させるんだ。

 貴族と関わりを持ったら最高だ……!

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