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花道闊歩 -異世界ガイドとして死ぬ運命の少女たちを幸せな老衰エンドへ導きます-  作者: ガリガリワン
第二部 第七章 ギルド編

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第五十九話 惜別せし少女たち


 依頼を受けた日の夕方。

 砂暴知(サリブリ)族の群れを壊滅させた後、

 もう一個依頼を受けてその日は帰路に就く。


 ガガルさんやメグバさんにホクホトさん。

 あの三人はパーティートップの実力者で、

 俺たちには驚いてたが全然強い。

 リルメスやフリィアちゃんより余裕でだ。


 それでもまあ、グラバさんには敵わないわな。


 依頼から帰る時の会話は楽しいほどに騒がしかった。


 なんでここまで強い新人は初めてらしく、

 パーティーの戦士たちからは羨望の眼差し。


「いやぁ〜ほんっと強いんだなお前たちは!」


 ガガルさんは何度もこう言ってくれる。


 戦争で感覚が麻痺していたが、

 この世界では上級戦士は才能持ちの存在。

 言わば天才と呼ばれる域にいるんだ。


「ふふ、あたしは魔法の天才だから!」


 帰り道は馬車が塊のように道を歩き、

 馬車に揺られながら色んな人と会話した。


「天才だよ……その歳であの魔法は見たことない」


 天使の輪っかを布で拭きながら話すメグバさん。

 俺はその輪っかを拭けるってのが驚きだ。


「おいら、フリィアの大剣に驚いたぞ〜。

 その剣、星殲竜(シーランドリュ)の大剣ですよネ?

 お高い剣に見合う強さですネ〜」


「えへへ……嬉しいです」


 ホクホトさんは(おに)族にしては華奢な身体で、

 真っ黒な肌ながらものほほんとした女性だ。


 個人的にホクホトさんが一番二人を気にしてる。


「謙虚で良い子だな〜」


 ホクホトさんはフリィアちゃんと同じくらいの背で、

 後ろから抱きついた状態でさっきから話してる。


 この人の流派は天剣(てんけん)流。

 前戦ったユレケオって戦士よりかなり速くて、

 武器はちっちゃい剣、わかりやすく言えばダガーか。



「なぁグラバのおっちゃん。

 あんたらこんな強えのに、なんでうちなんかに?

 もっと良い条件のところはあったと思うんだが」


(わたくし)たちが実力を隠すのも、

 色々と訳がありまして……目立てないんです」


 ガガルさんはグラバさんをおっちゃん呼びだ。

 性格的におっちゃん呼びはしっくりきたんだろう。


「……なら俺も色々聞かねえさ!

 俺が憧れた人もそうだったからな!」


 訳アリの俺たちを歓迎してくれて、

 自分より強い存在がきたってのにこの人たちは、

 一切気を落とすような素振りを見せてこない。


 つくづく善人集団だな。

 というより、この世界の人ってこんな感じか?

 元いた世界が悪いだけで本来、人ってこれくらい優しいものなのか? 最近基準が乱れてきてるな……



 まあ、会話は途切れることなく、

 無事に俺たちは王都のバグラに帰ってきた。


「んじゃあまた明日同じ時間にここでな。

 ……てか、俺たちこの後飲みに行くけどよ、

 あんたらも来るか?」


 ガガルさんはギルドに着いてから、

 飲みに誘ってくれたが断ることにした。


「すみません。お気持ちは嬉しいですが、

 宿で帰りを待つ子たちがいまして……」

「あーそうか、わりぃわりぃ。

 んじゃあこれ、今日の分の報酬だ。

 特別報酬もあったから多いぜ」


 ガガルさんはそうしてジャラジャラ音を立てる、

 綺麗な小袋をグラバさんに手渡した。


「……さて、帰りましょうか」


 ガガルさんたちが段々と俺たちから離れる中、

 俺たちも宿に向かって歩き始めた。


「グラバ、どれくらい稼げたのかしら」

「ざっと見ましたが金貨16枚ほどですね。

 おそらく、かなり多く入れてもらってますよ」


 ガガルさんとは出会って2日目だが、

 すでにある程度信頼できる人として認知してる。


「いっぱいですね」


 フリィアちゃんは嬉しそうにそう言うと、

 リルメスが今日の夕飯をグラバさんに聞いた。


「ちょっとくらい今日は贅沢してもいいでしょ?

 あたし美味しいお店でお肉が食べたいわ!」


 ルサナン大陸は肉料理が豊富、

 リルメスは肉が大好きなので相性抜群だ。


「肉……今日くらい良いということにしましょうか、

 宿に戻ったらみんなを連れまして行きましょう」


 そんなグラバさんの言葉に飛び跳ねて喜ぶリルメス。


 グラバさんもリルメスを甘やかすタイプなので、

 そんな姿のリルメスを見る目は嬉しそうだった。


「はしゃぐのはいいですけど、リルメスお嬢様、

 食べすぎて明日動けなくなるのはなしですよ?」

「そんな食いしん坊じゃないわよ!!」


 俺の軽い冗談を強く否定したリルメス、

 顔はちょっとだけ赤くなってた。


 ……戦争から3ヶ月程度、

 順調にテンションが戻り始めてきた。


 シンプルにこう言う会話は大好きだ。



「わたし、そろそろ服も買いたいです」

「そうですね……ハンドラ王国に入った際、

 港で買った服を使い回してるだけですし……

 明日にでも買いに行きましょうか」


 会話しながらも俺たちは宿に着いた。

 服の話で会話は終わり、三人がいる部屋に向かう。


「……なんか静かね」


 廊下を歩く中そう言うリルメス、

 それは俺も思った。みんな寝てるのか?


「おそらく他の部屋の方も帰ってないのですよ」

「そう言うことなのね」


 床はたまにギシッと音を立てて、この宿が長く、

 この地に建っていることを証明してくる。


 グラバさんが俺たちの泊まる部屋の扉を開けると、

 中はやけに静かで夕暮れの日差しが窓から入り込んでいた。強く照らされた部屋は少しばかり埃が見える。


「……?」

「ちょっと〜メアラー? ルダクルー?

 シルフも……ねえどこにいるのー!」


 リルメスがそう呼んでも返事はない。


「……みんなは?」


 グラバさんは部屋の中にあるテーブルを見て、

 その場で立ち止まって静止してしまった。


「グラバさん……?」


 俺は声をかけてテーブルの方を見ると──


[ウチらは旅を抜ける。

 あんたたちにこれ以上迷惑はかけれない、

 全員の同意の下だ。何年かしたら、

 ウチらはデエス帝国に行く、また会おう]


 そんな言葉が込められた手紙があった。

 文字の癖的にルダクルが書いたんだろう、

 シルフさんに言われて書いたんだ。


 そんな紙は少しだけ水で濡らして乾かしたような、

 所々くしゃっとなった物で、文字は震えている。


 この世界の文字、人知(じんち)族が扱う人口(じんこう)語だ。


「……」


「ケルエタさんにグラバさん……

 どうしたんですか……?」

「そうよ。二人とも黙っちゃって」


 フリィアちゃんとリルメスがそう言って、

 テーブルの手紙に目を通した。


「……」

「なによこれ……」


 理解なんて出来ないだろう。


「だって……なんで!!」


 そりゃそうだ……


「なんで……そんなの余計なお世話よ……!!」


 迷惑をかけるなんてのはただの建前でもあり本音。


「あたしたちになんで……言わないのよ!!」


 本当はあの三人が俺たちと一緒にいることに、

 耐えきれなくなったというのが正しい。


 自責。

 それを抱いて生きるのはメアラやルダクルにとって、

 地獄のような体験になる。


「なんで……なんでっ……!!」


 俺は話を事前に船で聞いていたが、

 まさかこんなに早く……


「リルメスちゃん……」

「フリィ……フリィは悲しくないの?」


 涙を流しながらうずくまるリルメス。


「悲しいし……寂しいよ」


 リルメスの背中をさするフリィアちゃん。

 フリィアちゃんはリルメスと違って、

 一切涙を流すことなく現実を受け止めていた。


「なんで……みんな離れていくのよ」


 リルメスの心は立ち直れてない。

 戦争で負った心の傷は今も尚深く残っていて、

 最近の明るさはそれを必死に隠そうとしていたのかもしれない。


「なんで……あたしはみんなと一緒にいたいのに」

「わたしは……離れないよ。

 それに三人ともいつか会えるよ」


 グラバさんに俺は聞く。


「グラバさん……あの三人は生きて──」

「ケルエタ様、その話はやめましょう。

 ……信じるしかありません」


 ……そう、だよな。


「……フリィ、あたしって弱い?」

「……弱くないよ」

「フリィ……あたし、あたし……」

「もういいよ。今日は休もうリルメスちゃん」

「……うん」


 最近……フリィアちゃんが少し怖い。


 十二歳。それは人間で言えば思春期真っ只中、

 そこでの経験が今後の人格形成を決めるんだ。


 だってのに……フリィアちゃんは泣かないし、

 怒ったりだとかもあまり見ない。


 笑ったり喜んだりはするが、

 一番理解できないのが、怪我に無反応ということ。


 怪我はフリィアちゃん自体慣れてないはずだ。

 今日も手を火傷したのに無反応だった。


 泣かないし怯まない。

 異常……とでも言うべきなのか?


 ただ、異常と決めつけるのも良くない。


 フリィアちゃんの心は、

 もしかすると凍てついているのかもしれない。


「リルメスちゃん立てる……?」

「うん……ありがと」


 他人優先の意識がああさせているのか、

 フリィアちゃんはそれで幸せなのだろうか。


 三人はいなくなった今、

 俺は改めて知った。


 リルメスのこともフリィアちゃんのことも、

 まだまだ、全然知らないということに。


 二人を幸せにするには心を知らなきゃいけない。


 なのに俺はまだ、二人を理解できていない。


 リルメスだって俺が思っているより、

 限界だったということがここで分かった。


 フリィアちゃんだって……なにか無理してるはず。



 俺は人の心をまだ知りきれていない。


 俺に……二人を幸せにできるのか?


 ……このままでいいのか?


 日が沈んで部屋が暗くなり始めた中で、

 俺は黄緑の光を発しながら空中に静止し続け、

 ただ漠然と……不安に呑まれてしまった。

第二部 第七章 ギルド編 完


次章

第二部 第八章 不骨の札屍族編


* * *


ここまでお読みいただきありがとうございます!

次回からは戦闘多めの賞となっております!

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