第六話 異世界で通用するお金の稼ぎ方
「飲み物を……売る?」
フリィアちゃんは首を傾げている。
説明しよう……坂田流最強商売法。
ちなみにこれでも店長代理ながらに、全店舗期間限定メニュー売り上げ第一位を叩き出した男だぞ。
売り方は知っている。
まずだ! この世界で一番人気な飲み物はなにか。
それは考える余地もなくただ一つ!【ゴルジュア】
これは俺の元いた世界で言えばりんごジュースだ。
……そして全知脳によれば、
この世界に″オレンジジュース″的存在はない!
それもそのはずだ。
オレンジのような果実はこの世界には存在しない。
というより……毒があって食べられない!
そのオレンジと同じ味を持つ果実だが、
毒さえ取り除けばオレンジのようなものだ。
オレンジジュースが人気な理由。
健康志向の人に好まれる成分に、
さっぱりとしたあの味だろう。
元はアメリカの朝食にベストマッチしたおかげで、
オレンジジュースは人気になったらしい。
だが、オレンジジュースは好んで飲む奴が……
かなり、とても、すごく多い。
ちなみに俺は嫌いだ。
さて……今回使う食材はたった一つ!
「フリィアちゃん。よく【ユユジュ】があるだろ。
あのどこにでもある果実を″飲み物″にするんだ」
「えぇ!? あれ猛毒ですよ……人殺しはちょっと」
【ユユジュ】そう、これがこの世界のオレンジ枠だ。
だがこの果実、猛毒である。
この世界にユユジュの毒を取り除けたやつはいない。
だが、全知脳の優秀なところは記されていない物でも、
ざっくりなら知識として知れる。
めちゃくちゃな話だが、こればっかりはありがたい。
全知脳のざっくりとした知識だが……ユユジュは、
果実の中心部に大量の毒が含まれてる。
でも、そこさえ取り除けば大丈夫だ。
毒嚢のような感じじゃなくて、
シンプルに毒の繊維が固まってる。
普通、これを取り除けば良い話だが……
毒の繊維は他の部位とまったく見た目が変わらない。
だから、食べられてないんだろう。
「まあ待て、毒なんて食わせて殺すわけじゃない。
その果実、実はめちゃくちゃ美味いんだ。
ただ毒があるから食べられてない。そうだろう?」
フリィアちゃんはコクコクと頷いてる。
「私には毒がどこにあるかわかる。
信じてくれ、必ず売れる飲み物を作ろう」
フリィアちゃんは不安そうだった。
間違えたら人殺しで即極刑だ。
しかし、ここは俺に対する信頼が勝った。
チョロいって言い方もあるが、信じてくれて助かる。
* * *
「っ……? !? え、美味しい!!」
大成功〜。ははんやっぱりな。
生搾りでもここまで反応が良いなら売れる。
不安そうなフリィアちゃんにユユジュを取ってもらって、俺が指示を出した通りに切ったら毒なしのユユジュが出来上がった。それを絞って飲んでみたら──
「美味しいよケルエタさん! すごいよ!」
鼻が伸びまくっちまう褒め言葉だ。
毒の場所は大雑把にしかわからないから大きく切るが、数自体この果実は大量にあるから助かる。
「どうだ。それは売れそうか?
人知族の口はわからんからな」
異世界と俺の元いた世界で味覚は違うかもしれない。
だからこそ、フリィアちゃんが美味しいと言えば、
確実とは言えずともウケる可能性は高い。
「絶対売れるよっ! おばあちゃんに飲ませてくる!」
そんなことを言ってフリィアちゃんは走って家の中に入って行った。
ユユジュ、これはとにかく入手が簡単。
加えて競合もなしでレシピは俺だけのもの。
勝った……これを軌道に乗らせたら、
億万長者だって余裕でなれる。
ふっふふふ……異世界転生、なにも力だけが全てじゃない。知識……癖はあるが使いこなせばチートだ。
「あぁ〜っどうもどうもぉ……貴方がケルエタさん?
フリィアを助けてくださりありがとうございます。
その……飲み物とっても美味しかったですぅ」
俺が内心笑みを浮かべていると、フリィアちゃんが自分のおばあちゃんを連れてきた。
おっとりとしたおばあちゃん。
そう言えば挨拶もまだだった。
「そうです。私がケルエタです。
どうです? どれくらい美味しかったですか?」
「今まで飲んできた飲み物の中で一番美味しかった。
妖精族様が気をかけてくれるなんて……
私の人生終わり近いですがぁ幸せですぅ〜っ」
おばあちゃん泣き始めちゃったよ。
そんな美味いの? えー……飲めない?
飲みたいんだけど……俺ってアレ飲める?
【不可】
はっ、全知脳は非情な奴だ。
オブラートに包むこともしてくれない。
「幸せ、ですか……お婆さん、私はフリィアちゃんを幸せにするために森からやって参りました。
どうですか? これ売って儲けません?」
「いんやぁ……ありがたいことばっかり……
でも、どうやって売るんですぅ?」
そう、そこが問題さ。
まずユユジュは先入観で拒絶される。
ので、ある程度影響力のある奴に、
ユユジュと伝えて飲まさせるんだ。
絶対拒絶されるが、そこはゴリ押しだろう。
安全を保証するやり方なんてたくさんある。
「お婆さん。ここらで商人などはいますか?」
「え〜っと……村の中心部におっきなお家があるだろう? あれの近くに広場があるんだけど……明日かな〜? 明日確か商人さんが首都から来るんだよねぇ」
曖昧そうだが十分だ。
地理とか学面の知識は知れても、
人の動きや心までは知れない。
こう言ったコミュニケーションは大事にしよう。
「なら明日、この飲み物を瓶に詰め30本ほど売ります」
「ふぇ〜っ? 30本……ケルエタさんそんな作るの?」
フリィアちゃんはまだ不安そうだ。
だってまあ、猛毒の果実ジュースなんて売れるかわからないし、作るのも肉体労働だ。
失敗した時が怖いんだろうが、
失敗なんてさせないさ。俺がいるんだから。
「確実に30本完売させる。
私を信じれば、明日には満腹になれますよ」
その言葉に二人は目を輝かせた。
もう俺を信じ切っている状態だ。
こうなっちゃえば事は上手く進む。
明日……明日が勝負だ。商人をこの味で惚れさせて、
この国で流行るレベルのジュースを作り出してやる。
んー。今日は良い天気だ。
声が戻って超順調! 楽しいな〜。
異世界楽しい〜ずっとこんなんで良い……
* *【あるお嬢様の執事の視点】* *
「もー! これ飲みたくないわ!!」
「お、お嬢様……ですがこの屋敷にはこれしかないのですよ……我慢してください」
……ゴルジュア。非常に美味なる飲み物ですが、
飽きというのが訪れるが故に我々は生きている。
はぁ……どうしましょう。
商人もゴルジュア以外持ってきませんし、
交渉しても届くには時間がかかります……
どうにかして飲み物を変えなければ……
「ねぇ、″グラバ″〜違う飲み物はないの〜?」
「″リルメス″お嬢様……それがないのです」
「も〜〜。お父様ったら……!」
リルメス・レクセト・ボルワール。
七歳になられた領主リアバダ様の孫娘様。
非常にわがまま……というより父親譲りの気の強さ。
はぁ……いや、リルメスお嬢様はとても可愛い。
ですが、やはりわがままは辛いですね……
逆に言えばわがままというだけで自慢のお嬢様です。
しかし、どうしたものか……新たな飲み物を作る売り手を、ダメもとで明日にでも探しに行きましょうかね。




