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花道闊歩 -異世界ガイドとして死ぬ運命の少女たちを幸せな老衰エンドへ導きます-  作者: ガリガリワン
第一部 第六章 旅立ち編

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第五十話 星の下で地に潜る


 天星(てんせい)山脈。

 元々はここ緑峰(りょくほう)大陸の右下に位置する、

 ルサナン大陸の砂草(さそう)山脈と繋がっていた山脈。


 俺たちは今この山脈を登り、

 洞窟を通って縦断(じゅうだん)しようとしてる。


 まあ、ちょー危険な山脈ではあるが、

 それは標高が高いところだけだ。


 麓だとか中腹付近にそう危険は多くない。

 もちろん暴野(ぼうや)だって多少いるし、道もない。


 山といえば高いところほど極寒……

 だけど、この山脈というかこの世界の仕組み的に、

 俺が元いた世界と違って気温の仕組みはまるで違う。


 元いた世界で言う赤道付近は住みやすい気候だ。


 天星(てんせい)山脈は標高が高くなっても、

 極寒だとかいう環境じゃないし、普通の気温。


 加えて今の季節は冬。普通なら雪だらけだ。

 しかし、面白いのが上にいくにつれて雪が消える。


 この世界は北極のような場所が極寒で、

 南極が灼熱の大地、気温が真ん中でぶつかってる。


 ただし、暖かい空気は上に残って冷たい空気は下に行く。そのせいか空に近づくにつれて暖かくなる……

 

 こう言うところは異世界っぽいな。



 さて、少しばかりこの世界の気温について整理したが、タイミング的にもこれは必須な整理。


 俺たちはこれからこの世界を歩く。

 となれば世界の仕組みくらい知らないとマズい。


 異世界転生5年目。山場の戦争も一旦峠は過ぎた。

 だけどここで終わりじゃない。


 フリィアちゃんとリルメスを幸せにして、

 尚且(なおか)老衰(ろうすい)させなきゃいけない。


 ……最近難しく物事を考える癖が増えてきた。

 もっと楽観的でもいいのだろうか。


 いや……うーん……柔軟な発想は必要だし、

 頭が固すぎても嫌だしなぁ……


「フリィ、大剣重くないの?」


 俺がそんな悩みを抱えていたら、

 他愛のない会話、まあ雑談が始まった。


「うん、重くないよ。わたし鍛えてるから」


 背中に大剣を担ぐフリィアちゃんは、

 そう言って右腕に力を入れて筋肉を見せてる。


 ただ、その腕自体そうムキムキじゃない。


「フリィア様の怪力は一体どこからなんでしょうか」


 グラバさんもそれについては疑問だ。


「ウチも長い間色んな人を見てきたけどさ、

 フリィアみたいな子は初めて見たよ……」


 シルフさんはこの中じゃ最年長、

 70年以上生きてるこの人でもわからないのか。


「いっぱい鍛えてきましたから」


 フリィアちゃんはちょっと誇らしげだ。


 ま、ただ鍛えてそこまでなれるなら、

 世の中そう苦労したりしないんだがな。


「フリィア様のお家って強い戦士でもいたですなの?」


 メアラがそう聞けばフリィアちゃんは首を傾げ、

 少し考えているような素振りを見せた後に──


「わたしのお父さんとお母さんは、

 一流ギルドにいたらしいんだけど……

 等級とか、どういう人かはわからないんだよね」


 フリィアちゃんの両親は全知脳(ぜんちのう)でも、

 明確な情報だとかが出てこない。


 一流ギルド……ってことは大体上級以上?


 四流・三流・二流・一流・殿堂入り、

 これがギルドの階級分けだ。


 となると一流はかなりすごい。

 この怪力は親譲りなのか、それとも才能とは違う、

 また別の力によるものなのか……気になるな。


「しかし……こんなに力持ちでしたら、

 もしかしたら史上初の俊級(しゅんきゅう)女性大剣剣士に──」


 ルダクルの言う通り素質はめちゃくちゃある。


「なれるかな……?」

「なれますよ。フリィアちゃんなら」


 俺が断言するのには根拠は少ないが、

 まあ、なれると言いたくなってしまう。


 フリィアちゃんを見た奴らはみんなこう思うはずだ。


 天才。


 俺だってそう思う。

 でもフリィアちゃんは天才というよりは、

 またなにかべつの……なんか……ダメだ語彙力がない。


 とりあえず、なんかすごいんだ!



 * * *



「ここが洞窟……?」


 あの話から5時間くらい歩いて、

 日が暮れる前に洞窟の入口に到着した。


 みんなはもっと派手な入口、デカめなのを想像してただろうが……実際はめちゃくちゃ小さい。


 人が一人通れるレベルの穴だ。


「ここ入るの?」

「えぇここですよ。

 ちょっと進めば広くなりますし安心してください」


 リルメスが嫌そうな顔をしてたが、

 そう言えば少しだけその表情は和らいだ。



照白(フホルワ)


 グラバさんは単音詠唱で光の球を作り出した。

 実はこれ、光魔法じゃない。


 火魔法の一つで下級魔法、照明担当の魔法。


 意外に下級魔法は日常生活で使われる魔法が多い、

 使いやすいってのが最大の理由だろう。


「それじゃ……行きますか」


 グラバさんを先頭に俺たちは穴の中に入る。

 洞窟、死のリスト的に危険信号はない。


 ただ、死なないだけで危険はあるだろうな。

 緊張感はちゃんと保ったままでいこう。



 そんなわけで夕暮れ時に洞窟入りしたんだが、

 中はめっちゃ広いし結構明るかった。


「グラバ、ピカピカしてるのはなにかしら?」

「あれは魔光石(まこうせき)です。魔力を多く含む鉱石で、

 そうですね……武器などによく使われてますよ」


 いつものリルメスだったら、

 もっとキャッキャっと騒ぐもんだが……


 そう言う気分じゃないだろうな。


「ここら辺明るいけど……ちょっと寒いね」

「……静かですなの」


 魔光石(まこうせき)が明るいから助かってるが、

 本来もっと暗くて不気味だったんだろうか。


 にしても……暴野(ぼうや)が一体もいない。


「ケルエタ、ウチずっと気になってたんだけど、

 この大陸出身の妖精(サルェタ)族なのか?」


 シルフさんがそう聞いてきた。


「……そりゃあこの大陸出身ですよ」


 言えない。異世界転生してきましたなんて言えない。

 てか、言っても頭おかしい奴扱いだ。


「ケルエタには身内とかいたのか?

 ウチはそう言うのがいた記憶がないんだよ」


 確かにシルフさんから身内関連の話は聞いたことがない。基本常にテグトトさんと一緒に居た。


「そうですね……私にも居ましたが、

 あんまり記憶は残ってないですね」


 母さんとかばあちゃんのことくらいしか覚えてない。

 というか……名前……名前を思い出せなくなった。


 忘れるわけない。そう思ってたし確信してた。

 なのに……なのに何故か忘れたんだ。


 嫌いなわけないし、親孝行したかったって思うほど俺は前世を悔いてる。


 思い出せない……ていうか、どんどん前世の記憶が俺の頭の中から消えていってる。


 完全記憶に前世は含まれないのか……?


「お母さんってやっぱり頭良いんですか?」


 フリィアちゃんが何気なく聞いてきたけど、

 まあ……多分頭は悪い方だったと思う。


 俺を女手(おんなで)ひとつで育ててくれたが、

 父親がいないってことはクソ野郎だったはずだ。


 母さんは資格だとかもなかっただろうし、

 朝から晩まで働き詰め……ある程度学歴があれば、

 そこまでの苦労する働き方はしないだろう。


 つくづく最低なことをしたと感じる。

 そんなに頑張った末路は子の死なんてな……


 ……ダメだ。やっぱりダメだ。

 母さんの名前が思い出せない。


 嫌な気分だ。喉に魚の骨がつっかえたような、

 あの不快感が俺に付き纏ってる。



「ケルエタさん……?」


 俺は少し黙っていたようだ。

 そのせいか咄嗟に言ってしまった。


「……私の母ですよ? 当然です」


「確かにケルエタのお母様なら納得だわ」


 正直、賢いとは思ってないけど、

 ここで親を下げるような程度には堕ちてない。


「物知りはお母様譲りだったのね」

「まあ、私が少し学に精通しているだけですよ」


 ……まあそんな話をしているわけだが、

 この洞窟マジでなにも起きないな。


 死のリストにも特に記載はないが、

 それで本当になにも起きないなんて不気味だ。


 大体5日間で洞窟は出られるが──



「……なんも起きなかったですね」



 5日間トラブルゼロだった。


 ……とりあえず山脈は越えられた。

 あとは山脈の麓を歩きながら最南部に向かう。


 うん。今のところ順調だ。

 こうなれば最後の難関は港だな……


 にしても──


「一気に暖かくなったなぁ」


 シルフさんが言う通り暖かい。

 北部と南部の違いが早速出てきたな。


「進みましょうか」


 山脈を楽々越えた俺たちは、

 港を目指してまた歩き始める。


 早くて3週間だが多分1ヶ月かかる。


 浮いて移動だから疲れないが、

 心労は地道に溜まっていくなぁ。

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