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花道闊歩 -異世界ガイドとして死ぬ運命の少女たちを幸せな老衰エンドへ導きます-  作者: ガリガリワン
第一部 第五章 戦争編

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第四十三話 人生は夢だらけ


 * *【グラバ・シャクベルトの人生】* *



 夢を見ていた。


 グラバ・シャクベルトという名を持ち、

 (わたくし)はこの広く美しい残酷な世界に生まれた。


 元々、(わたくし)星焉(せいえん)大陸のデエス帝国で生まれ、

 色々な経緯(けいい)()てここ緑峰(りょくほう)大陸にやってきたのだ。


 (わたくし)は幼い頃からとにかく魔法が好きで、

 魔法への熱意は夢中という言葉がよく似合う。


 ただ昔から損の多い人生で、

 心配されたことも誰かを頼ったこともあまりない。


 頼まれてしまうと成り行きで承諾して、

 結果……後々自身の首を絞め続けてしまう。


 べつに……それ自体苦痛じゃなかった。


 歳を重ねるごとに頼られる回数は増え、

 やりたいことも中途半端になり続けていく。


 大体、十八歳の頃だろうか、

 (わたくし)の人生に転機が訪れる。



「なんだ一人で食事なんて寂しいなぁ」

「……誰です」


 他愛のないどこにでもあるような店で、

 (わたくし)は自身を慰めるかのような食事をしていた。


 そこで馴れ馴れしく隣に座ったのは、

 後の領主、リアバダ様。


「一人で飯なんて寂しいだろう」

「……勝手にさせてください」


 その頃の(わたくし)は誰も信用できず、

 温かい言葉をかけられても拒絶していた。


「あーあ、なんだ。意外に照れ屋なのか?」


 バンバンと(わたくし)の背中を叩くリアバダ様、

 当時、そんな鬱陶(うっとう)しさを感じる振る舞いが少し──


「……まぁ、そうですね」


 ほんの少しだけ嬉しかった。


 たったそこでの少しの会話で、

 最初は拒絶していたのに気がつけば(わたくし)は、

 リアバダ様と次また会う約束をしていたのです。


 不思議でした。


 自身からまた会いたいと思うなんて不思議だった。


 それでも、同時に恐怖や不安はありました。


 こうやって仲良くなれそうでも……

 どこかで頼られてしまい、そこから常に頼られ始め、

 次第に関係性は頼られるだけのものになってしまう。


 何度もあった。そんなこと何度も……


 だからこそ、怖かったし不安だったし、

 (わたくし)は、はっきり言って諦めていましたね。


 どうせ同じだろう。どうせ頼ってくる。

 どうせ今まで通り。どうせ……どうせ。


「グラバ、暇なら()と共に来い」

「……え?」


 どうせ……?


「お前の話を聞いているとな。

 グラバの人生はすごいつまらないと感じる」

「失礼ですね……」


 リアバダ様が貴族であることも知っていました。


 聞けば、リアバダ様は旅をして世界を知り、

 故郷で領主になるため頑張っていると……


 それに比べて(わたくし)は自分のために生きていなかった。


「ですが……よろしいのですか?」


「旅は長い、3年程度か? 3年で()は三十歳だ。

 3年で()緑峰(りょくほう)に帰る。……はっきり言っておくが、

 ()と共に来れば、楽しい人生を()せてやる」


 根拠なんてない断言……

 いつもの(わたくし)ならそんなの断っていた。


 ただ……


「……そこまで言うなら行きましょう。

 ちょうど、今だけは暇だったので」


 当たり前に価値があるとは思えない。

 変わってみたい、そんな好奇心だけが原動力。


「はは、なら決まりだな。てことで今日から仲間だ。

 仲間になったからには、()も聞きたいことがある。

 グラバはなんで今まで人の手助けばっかしたんだ?

 それをして何か恩返しとかされたのか?」

「されてないですよ」


 リアバダ様は(わたくし)にそう聞いてきました。


「はぁ? なら、なぜしてたのだ」


「……皆、弱みを抱えて生きている。

 十八歳などと言う年齢でこう言うのは、

 少しばかり生意気ですが……(わたくし)は──」


 誰しも弱みを抱えて生きていて、

 常に頭を悩ませ続けている。


 誰からも手を差し伸べられない者はいずれ、

 黒く沈み二度と上がってこない。


「誰もが手を伸ばさない中でも、

 (わたくし)だけは手を伸ばしていたいんです」


 そのせいか、頼られることは嫌いじゃなかった。

 ただ、(わたくし)は夢を見ていたのです。


 対等に関わってくれる″友″と言える存在……


「……ははっ!! なら()もそれを真似るぞ!

 グラバ、()の手を握れ!! 引っ張ってやる。

 お前のその人生を鮮やかにしてみせよう」



 それが(わたくし)がリアバダ様の熱に浮かされた瞬間、

 その日から今に至るまで、(わたくし)は浮かれている。


「グラバ、こうして領主になったわけだが……

 そのなんだ……()は一人では……だから──」

「らしくありませんね……リアバダ様。

 頼ってください、慣れてますから」


 その時のリアバダ様の顔はよく覚えています。


「……はっ、はははっ! そうか!!

 頼るぞ! グラバが後悔するほどに頼るからな!!」


 太陽のような笑顔、皆を照らす光、

 眩しかった……目を閉じてしまうほどに。


 そこから月日は流れ、息子のリクラト様や、

 孫に当たるリルメスお嬢様と増えていった。


「グラバよ。どうだ人生は?」

「正直、昔より大変ですよ」

「んがはははっ、そうかそうか。

 それでは聞こう、楽しいか?」

「えぇ……毎日、心が躍るほどに」


 リクラト様もわがままだった。

 リルメスお嬢様もとてもわがままだった。


 ただ、どちらも笑顔だけは太陽のようだった。


 それだけで(わたくし)の苦労は消えていく、

 悩みだってありましたけど、それでも楽しい。


 無理難題でさえ、苦痛ではない。


 なぜなら──


「……親友(グラバ)、これからも頼むぞ」


 リアバダ様のその笑顔を絶やしたくないから。


「もちろんでございます。親友(リアバダ様)



 * * *



「リアバダ様ッ!!」

「おぉグラバか」

「……っ、早く逃げましょう!!」


 戦争が起きた時、(わたくし)はリルメスお嬢様をエルメットさんに預け、リアバダ様に会いに行った。


「時にグラバよ。()の人生幸せであった」

「こんな時に……いえ、今なら間に合います!!」


 リアバダ様はいつも書斎(しょさい)におり、

 椅子に座って本などを読んでいる。


 ただ、この日は窓の外を眺めていた。


「妻のラユエマが死んでから、

 ()は少しばかり絶望した。

 ただグラバ、お前がいたから楽しかった」


 リアバダ様はこの戦争で死ぬ覚悟を決めている。

 もう助かる気もない状態だった。


「リアバダ様……」

「リクラトも城で嫁と共に死ぬようだ。

 グラバ、この行為に意味があると思うか?」


 そんなことを聞いてきた。


「っ……ない、とは言い切れません。

 貴族とは、生まれてから死ぬまでのその期間が、

 常に高貴なものでなければならないと……」

「あぁそうだ。()もそう思ってしまった」


 受け止め難い現実。


「ただ一つだけ、頼みがある」


 リアバダ様は最期に頼ってくれた。


「リルメスを……頼んでもいいか?」


 ……戦争。それは結末がどうなろうと、

 必ず犠牲という悲劇の起こる最悪の出来事。


「リルメスお嬢様を……」


「グラバ……結局頼ってばっかだった。

 ()はグラバがいたから領主になれたのだ。

 だから、ただ一言……ありがとう」


 椅子から立ち上がって部屋に飾られている剣を持つリアバダ様、それは旅をしていた時に使っていた物。


「リアバダ様……(わたくし)はっ」

「言うなグラバ……生きてしまいたくなる」


 (わたくし)は……その言葉を貴方に返したかった。


「いずれここにも敵が来るだろう……

 ()の散り際は血飛沫にて飾り上げる。

 栄えた者の去り際は酷く寂しいものなのだ。

 グラバよ。最後に聞かせてくれ」


 リアバダ様は(わたくし)に顔を見せてくれた。


 それはあまりにも暖かく、

 ギラギラともしていない穏やかな微笑み、

 死を確信した者が感じる最期の幸せを表す笑顔。


「楽しいか? 人生は」


「…………楽しいです」


 言えない。

 リアバダ様がいないと楽しめないなど、

 (わたくし)は絶対に言えない。


「そうか……では、リルメスを頼んだ」


「御意……」



 涙をグッと堪えて(わたくし)は走った。

 託された意志を踏み(にじ)らないために。



『グラバ、()は思うのだ。

 人生とは夢の集合体だとな』

『それはどういう……?』


『この世に生まれて辺りを見渡せば、

 あまりにも夢は溢れていて、目は一切休憩出来ぬ。

 ただ、それだけなのだ。数ある夢の中から一つに向かって走る。それが人生の道というやつなのだ』


 夢を見ていた。


『グラバ。人生は夢だらけだ。

 いずれ()のことなど忘れるくらい楽しめ』


 この人に死ぬまで仕え続けることを──

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