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花道闊歩 -異世界ガイドとして死ぬ運命の少女たちを幸せな老衰エンドへ導きます-  作者: ガリガリワン
第一部 第五章 戦争編

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第三十九話 完全詠唱


 * *【グラバ視点】* *



 ゴスエトの代償召喚(だいしょうしょうかん)にて生まれた召喚体、霊玉華(ゴスルッシュ)


 私はそれをテグトト様の戦いから遠ざけるため、

 あえて正面から殴りつけ場所を変えました。


 ある程度殴り合ってわかりましたが、

 この召喚体、完全な近接特化……

 

 意図的にどちらかを潰すように作られた存在。


 相手としても腕の一本を使った召喚だけあって、

 力、速度共に英級(えいきゅう)上澄みほどの強さ。


 テグトト様もお強いですが相性が非常に悪い、

 ですから好都合というところでしょうか。



 それに(わたくし)はこの召喚体より確実に強い。



 ……そう言えば、

 あの二人からもよく質問されましたね。


『グラバってなんでそんなに強いのよ』

『わたしもそれ気になります!』


 いつの日か、リルメスお嬢様とフリィア様からの、

 何気ないたった一つの質問。


『……そうですね。ただ意地っ張りなだけです』

『なによそれー、期待はずれだわ!』

『グラバさん。意地っ張りって……?』


 (わたくし)はこの48年間の半分を戦いに捧げた。

 その中で得た知識はどれも今に活きています。


『絶対にこれだけは譲らないという意志ですよ』


 (わたくし)はなにも最初から強くもなければ。

 才能などもないと思っていた。


 しかし、意外に(わたくし)の全身には、

 才能と呼ぶべき力が多く秘められていた。


 これでもし、見切りをつけて諦めていたら──


『何事も一度最後までやってみるべきなのです。

 魔法であれ剣であれ未来の心配などせずに、

 ただ前を向いて歩く。それが(わたくし)の意地ですよ』


 多くの才能は開花しないままだったでしょう。


 これは(わたくし)の持論ですが、

 ″大人″になるとは、物事の果てを見る決意です。


 結果がどうであれそれを直視する勇気、

 絶望も幸福も味わう覚悟がある者だけが、

 ″大人″という存在へと立場を足を踏み入れるのです。



 この戦争自体、正直どうなるかはわからない……

 ですが……限りなく幸せからは遠ざかっている。


 それでも……(わたくし)は直視する覚悟が出来た。


 全てが終わった先でたとえ、

 血に塗れた仲間の(しかばね)を背にしたとしても──


 ……。


 もしここに二人がいるのであれば、

 ぜひこれを教えて差し上げたかった。


 これが″大人″になること……


 だから(わたくし)は強いのです……!!


「ッォアアア!!」


 (わたくし)霊玉華(ゴスルッシュ)の腹部目掛けて拳を突き刺しました。


 真っ白な身体に(わたくし)の拳が突き刺さると、

 波の様に肉を押して後方へと吹き飛ばしたのです。


 家屋(かおく)へとその巨体は衝突しましたが、

 霊玉華(ゴスルッシュ)もすぐさま体勢を直してきました。


 ですが──


呼応(こおう)せよ火の悪魔よ。

 その赫燿(かくよう)なる力を我が身に宿せ。

 火炎片球(イグアトラ)……!」


 (わたくし)が下級魔法の中途詠唱を行うには、

 あまりにも大きすぎる隙なのですよ。


 この魔法自体、決して強力ではありませんが、

 今、この状況下で下手に高難度な魔法を扱うより、

 下級魔法に全ての技術を詰め込む方が強い……


「ッウォゥオオア!」


 等級では英級(えいきゅう)程度。

 確かに魔法使いと近接型の戦いでは、

 魔法使いに対して圧倒的に近接が有利。


 ですけど、(わたくし)、近接もいけるのです。


 ……圧倒的な優位、なのに違和感がします。

 なんというか……この召喚体は単純すぎる。


 もちろん召喚魔法の召喚体は基本単純、

 それでもこの個体は代償召喚(だいしょうしょうかん)にて生まれた存在。


 ここまで一直線な動きしか出来ないわけがない。


「……なんだか危ない気がしますね」


 純白宿すその巨体は変わらず(わたくし)に向かって、

 ただただ、方向を変えるわけでもなく猪突猛進(正面全力疾走)


「!」


 その時でした。


 霊玉華(ゴスルッシュ)(わたくし)の目の前で身体中の赤い花を枯らし、

 一気に赤い光を辺りに放った後に爆発したのです。


「っぐ」


 咄嗟(とっさ)に腕で身体を守ってはみせましたが、

 やはり初動では明らかにこちらが遅れた。


 違和感。

 それはこの召喚体が(わたくし)を倒すためではなく、

 ゴスエトからどれだけ遠くへ離せるかが目的。


 爆風によって動くこともできず、

 背中の向く方にある空へと向かって吹き飛びました。


 ……最速で戻ったとしても5分以上。

 召喚体が消えたと言えどしくじりましたね。



 * *【テグトト視点】* *



「なにコソコソ話してるのさ、

 随分と呑気で驚きだよ……!」


 ゴスエトも魔法を放つ速度は上がり続けておる。

 このままじゃいずれ負けるのは我ら。


 この状況下で我がこの者に勝つ方法、

 それは、我の一番の魔法を完全詠唱で放つこと。


「おしゃべりはそんなに嫌いかのう?」

「ウチら実はすっごくおしゃべりなんだよね」


 相手は準俊級(じゅんしゅんきゅう)という我の人生最大の強敵。


 あやつの魔法をこの目で見て対処する時、

 何度も走馬灯が過ぎるんじゃよな……



 我は魔法大学である魔法使いから聞いたことがある。


『魔法戦はどこまで自由になれるか。

 それが、私が魔法使いで生きていられる理由』


 その魔法使いは、こう考えているから強い、

 そう自身で確信していたのじゃ。


 ……我もその考えにはかなり納得しておる。


 魔法戦じゃ、いつだって頭が良い奴が勝つ、

 剣士の戦いよりも圧倒的に知で勝つんじゃ。


 この今の我の状況、まさに頭の使い所。

 完全詠唱をキメテこの者を正面から負かす方法……



「……? 君、なにしてんの」


「逃げるんじゃよぉ!」


「はぁ!?」

「テグ、逃げるってマジ!?」


 我は背を向けて思いっきり走って逃げ始めた。

 もちろん、あやつもそんな我を逃すわけない。


「呆れた……頭おかしくなっちゃったの?」

「失礼な奴じゃなぁ!」


 そう言われてもしょうがないとは思うが、

 もちろんこれも策のうちじゃ。


 完全詠唱は基本的に長い詠唱が必要。

 じゃから走りながら詠唱して迎え撃つんじゃ。


 じゃが、敵もバカじゃない。


 杖に魔法陣が見えた瞬間、

 この逃げが攻撃体勢だとバレる。


 だから前傾姿勢で杖を隠しながら走っとる。


「おいテグ!! なにやってんだよぉ!」


 シルフの叫び声、場を埋める大きな声じゃ。


 じゃがこれも実は策の一つ。

 詠唱の声をかき消してもらうために、

 シルフにデカい声で叫んでもらう。


白水刺(ホアッシスト)!」


 追ってくる中でも魔法は飛んでくる。

 これをどれだけ避けながら詠唱できるかが賭けじゃ。


「いつまで逃げるつもり……!」



 我はすでに魔法の詠唱を六割終えておる。


 今回放つ魔法は英級(えいきゅう)雷魔法の魔雷(ロラングア)


 我の最も得意で大好きな魔法じゃ。


 中途詠唱でも十分強いこれを、

 我は今回完全詠唱で放つのじゃ。



雷狂(らいきょう)の悪魔。

 西方(せいほう)の大地に降り立ちし茈雷(しらい)よ。

 その身には暴れ狂う雷が宿っている。

 

 その身に刻まれし怒り狂う雷撃(らいげき)顕現(けんげん)せよ。

 狂うのならば狂わせてくれたまえ、

 我はそう願っている。(なんじ)もそう願っている。

 その瞳を見せてみせろ悪魔よ】


 ここまで詠唱は済んでおる。

 しかしこっからはシルフの声ももう頼りにならん。


 こやつももう気がついているはずじゃ。


「っ……そう言う作戦なんだっ!」

「テグっ……ヤバいよ!」


 じゃが……もう手遅れじゃぞ準俊級(じゅんしゅんきゅう)


「皆は言う、悪魔は狂っていると、

 しかしその悪魔はいつだって天へと向かい、

 電撃を宿し続け悪魔はその度に自我を失っていく」


斬水群(スイアグアス)!」


 背後から迫る大量の水の斬撃、

 我は後ろへと振り返ってそれを直視した。


「ッ……ッゥグウ……ならば救ってみせよう。

 我が熱を与えし悪魔よ」


「なんで直撃して……!」


 我は水の斬撃にほとんど直撃した。

 身体強化魔法がなければバラバラだったじゃろうな。


 しかし、傷は深過ぎた。

 

 それでも、詠唱はやめん。


 全身の皮膚にダラダラと熱い感覚が広がってくる。


 それでも、我はやめんぞ。


「我の熱にてその閉ざされし欲を放て」


 完全詠唱にて放たれる魔法は一つの欠けもない、

 完璧で最高の状態、それは中途詠唱の一歩先をゆく。


 この勝負、我の勝ちじゃな。


魔雷(ロラングア)……!!」

「っ星水(アグタ)ッ……!!」



 100%の我の全てを賭けた一撃。

 それをゴスエトは真正面から直撃しおった。


 回転しながら雷の光線がゴスエトを呑み込んで、

 数秒後、腹を貫かれて火傷を多く負ったゴスエトが、

 我の光線が消えた後に姿を現した。


「……顔は火傷しなかったよ」

「そうか、よかったのう」


「ッチ……さすがに治んないか。

 泥臭……僕の負けだよ」


 幽霊(ユラスデ)族、さすがにこれは再生できんか。

 ゴスエトは負けを認めて地面に倒れおった。



「……テグ! 今すぐその肩治さなきゃ……」

「まぁ待て待てぇ……勝ったんじゃ喜ばしいわ」

「怪我のこと気にしなって!!」



 勝てたんじゃ。


 本当に……? いや勝ったんじゃぞ。

 しかし、強かった。今回は本当にヤバかったのう。


「グラバ殿ももうすぐ戻ってくる……

 シルフ、我ちょっと戦線離脱しても良いか」

「ウチに聞いてどうすんのさ!

 早く治療受けいくよ!」


 そうやって歩き始めようとした時、

 悪寒が走ったんじゃ。


「……ゴスエトくぅん……しんじゃったか」


「……シルフ」

「わかってる……わかってるって」


 音がしなかった気配もなにも……


「あ、ごめんなさい。音出せばよかった。

 初めましてグロワールの人、

 私は″ウルルド・ユバルトラーマ″」



 一難去っては大災難。


 俊級(しゅんきゅう)魔法使いのお出ましじゃぁ……

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