第四話 腹の中の舞
『腹の中の舞を見よ』
俺は小さい頃、よくおとぎ話をばあちゃんに読んでもらってた。何回も同じ本を読ませたもんだ。
思えば、俺は意外に色々ハマってはいる。
推し活はしなかったが、ゲームもアニメも普通に好きだったし、ゲームはかなりやり込むタイプだった。
ただ、誰かに越えられた瞬間、やめてしまった。
俺はプライドが高いんだろう。
……こんな方法、側から見たら哀れな攻撃方法だ。
でも、今の俺はもう居酒屋店員坂田じゃない。
生まれ変わって、もう一度人として人生をやり直すために働く、″異世界ガイド・坂田″なんだ。
泥臭くやってやる。これはフリィアちゃんのためでもあり、俺のためでもある行為だ。
「グピュルララララァッ!!?」
俺は無敵だ。だから触食族の口の中から体内に入って暴れまくった。
胃ってのは多少の衝撃じゃ悶えない。
しかもこいつは丸呑みするタイプの種族だ。
おとぎ話の中じゃ胃の中で暴れてたが──
俺はこいつの″喉″で暴れてる。
全知脳……これがなかったら多分これはできなかった。胃の中で暴れてもダメージは与えられなかった。
これしかない。このままこいつの喉を、
ぐちゃぐちゃにかき回してやるッ!
「……っ、妖精さん? ありがとう……!」
フリィアちゃんは俺が暴れてる隙に逃げたっぽい。
つまり、ミッションコンプリートだ。
俺が数分暴れた後、
触食族のこいつはぶっ倒れた。
「グピュアァア……ッ」
喉をあんなに刺激されたんだ。
しばらくは動けないだろうな。
俺は体内から出てきて日差しを身に浴びる。
疲れた。ヘロヘロになったが気は抜けない。
死のリスト的には……おっ
全部薄い緑文字だ。でも安心はできない。
また今日も一仕事……やりがいが凄まじいな〜。
だが……これからどうするか。
今回ばかりは奇跡的に策を思いついたが、
俺はなにもこんなことを何回もできる気がしない。
はぁ〜……二週間なっげぇ〜。
あと何回フリィアちゃん死にかけるんだよ。
不安すぎて吐きそうだぞ。吐く口もないけど。
* * *
さて、無事に俺とフリィアちゃんは家に帰ってきた。
フリィアちゃんは慣れたのか泣きもせず、さっきのことを一緒に住んでるばあちゃんにも言わない。
とりあえず、俺は死のリストの確認だ。
……こっから先ほとんどうっすい緑だな。
転倒死とか焼死、色々あるけど全部緑文字だ。
ん……?
ページを60くらい進ませた時。
ドデカく真っ黒な文字が見えた。
【十二歳、戦争に巻き込まれ死亡】
……まさか。
『大体十代の時には確実に死ぬ』
あの眼球が言ってたのはこれか……?
【刺殺されて死亡】【鎌に切り裂かれ死亡】
【出血多量により死亡】……
この後の1ページ分全部真っ赤じゃん……
戦争に巻き込まれて死ぬってのは、この赤い文字全部をまとめて言ってるってことなのか?
そりゃ……黒文字にもなる。
多分、濃い赤の上が黒で、黒は確実に死ぬんだろう。
それを変えるのが俺の役目……
フリィアちゃんは今七歳。
そんでもう一人の女の子も多分年齢は近い。
どっちの死のリストも十二歳で真っ黒文字が出てくる。てことは……そこがターニングポイントか。
……それよりもう一人の女の子ってどこにいるんだ。
まさか別の大陸じゃないよな……?
いやそれはない。だって同時期の戦争だ。
起こるならこの大陸内だろ。
……とりあえず二週間だ。
二週間経てば俺はフリィアちゃんと話せる。
怖がられたりしたら最悪だ……
ていうか名前も決めなきゃな。
全知脳ってスキルは知識を勝手に入れてくれるのは助かるんだが、なにせ整理整頓はこっちでしなきゃいけない。だから、頭を整理する時間は取らなきゃな。
生憎、時間ばかりはたっぷりある。
緑文字は基本気にする程度で、
黄色文字は警戒。赤文字はすごく警戒。
黒文字は勝負時だ。
緑文字でも今日みたいなことはあるかもしれない。
でも、そこまで気を使ってちゃ俺が保たない。
とりあえず……今はまとめよう。
* * *
まずだ。俺が今いる場所を把握しよう。
【全知脳発動】
……うん。手に入れたぞこの大陸の知識。
ここは【緑峰大陸】っていう場所で、
中央にデカい山脈があって右の海沿いは断崖絶壁。
中央の山脈は【天星山脈】って名前だ。
どうやら世界一過酷な山脈で山頂は前人未到の地。
この大陸の名前通り、山脈と森が特徴らしいな。
フリィアちゃんがよく行ってる森はわけわからんくらいの大森林。アマゾンみたいな感じだな。
入ってきた知識じゃ奥地に行って帰ってきたやつは、
誰一人いないとされてる超危険区域だ。
俺が転生して初めて訪れた場所もあの森の中、
でも、あそこ自体かなり浅めの森だろう。
あと、この大陸の特徴として、
山脈で北部と南部が分かれてる。
大陸自体涼しい気候で北部は秋夏秋冬って感じだ。
そんで、北部は雨が多くて南部は雨が少ない。
真ん中の山脈が完全に境界線みたいになってる。
まあ、俺みたいな地理平凡男じゃ、
これ以上深く知っても意味がない。
こう言うのは知ってる程度の知識でいいな。
本題の俺のいる場所だが、ここは【緑峰大陸北部】
【グロワール王国】の【リアバダ領】だ。
まず【グロワール王国】ってのは、
【緑峰大陸】の北部を統治する王国で、
四人の領主に領を与えて統治を固めてる。
んで、ここは【リアバダ領】って言うんだが、
俺は薄々勘づいてきている。
もう一人の女の子の死因を見たんだが、
【十二歳、戦争に敗北後公開斬首】なんて書かれてる。
それ以外も【誘拐の後死亡】【″兇徒″に惨殺される】
″兇徒″(きょうと)……なんだそれ。
【全知脳発動】
あ、さすが全知脳。
盗賊とかそういう奴らね。言っちゃえば犯罪者か。
まあまあ、それはまたまとめるとして、
もう一人は死因がほとんど″他殺″なんだ。
一般人が生きていく中で他殺されるのは、
大体恨みだったりとかなんだが……
まだ子供がそんな恨みを買うとは思わない。
ってのを踏まえると俺はもう一人の女の子は──
″リアバダ領の領主の身内″だと思う。
暗殺やら誘拐やらが多すぎるんだ。
だから、多分、絶対……! 領主の娘だ。
『二人の女の子を″幸せ″にするんだよ』
俺の役目は二人の女の子を幸せにすること。
……となると、フリィアちゃんにはその領主の娘と、
親しい友達、いわば親友になってもらう。
っふー……無理だろこれ。
超貧乏人と超金持ちが友達に……?
そんなマンガじゃないんだから……
ああでも、ここもマンガみたいなものか。
あ〜っ……色々考えなければ。
フリィアちゃんとコンタクトが取れるようになったら、友達になるように仕向けなきゃいけない。
考えよう。ひたすらに考えよう。
そしたら、色々わかってくるはずだ。
とりあえず、今はこのフリィアちゃんに干渉できない中で、絶対に死なないでもらおう。
じゃなきゃ、本末転倒だしな。




