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花道闊歩 -異世界ガイドとして死ぬ運命の少女たちを幸せな老衰エンドへ導きます-  作者: ガリガリワン
第一部 第五章 戦争編

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第三十七話 矜持 後編


「エルメット、お前また剣を触ったな!」

「ごめんなさいお父さん!」


 俺は小さい頃、剣に好奇心が()かれ続けてた。


「いいかエルメット。剣はな、剣士の魂だ。

 お前のか弱い手でこの俺の剣を触る資格はない!」


 俺の父親は剣士というものに誇りを持ってた。


 いつもは優しい父でも剣だけはかなりうるさかった。


「……ただエルメットよ。

 そこまで剣を使いたいならやってみるか?」

「え……いいのお父さん!?」

「ただし、辞めることは許さん。

 泣き言が聞こえたら追い出すからな!」


 今じゃあれだけ厳しかった父さんが、

 優しい存在にしか見えない。


 剣を持つことはつまり、

 戦場にいずれ出ることを意味する。


 戦死は誇らしいが父さんの心の奥底じゃ、

 俺が剣士になることは怖かっただろうな。


 それでも父さんは俺に剣を持たせてくれた。


 父さんはもういない。ただ、俺はできるだけ長く、

 剣士をやりながら生きていたいんだ。


 父さん。俺、今強い敵と戦ってるよ。


 だけど、まだそっちには行かない。

 見てて、俺は絶対に勝つから。



 * * *



 こいつの剣の振り方は複雑だ。

 二つ剣を持ってるだけあって変幻自在、

 型に沿って動いてるんだろうが予測できない。


 足捌き、剣筋、気持ち。全てこいつはできてる。


 あの表情がなおさら感じさせてくるぜ……

 俺には絶対に勝てるって自信をなッ!


「ずぅっと思いよったんや……

 なんでおい(おれ)より強か剣士は強かとか」


 こいつの動きはどんどん加速し続けてる。


 クッソマジ速え、ギリギリ防げてるが、

 このままいったらデカいのもらうな……


「そいつらはみんな言いよった。

 弱か奴は剣に全てば賭けられとらんってな」


 あぁ、そうだよ。弱い奴の剣はその通りだ。


「今のわい(お前)まさしゅう(まさしく)それや!!」


 エンヌの剣を俺が防いだ瞬間、

 俺の腹に思い切りエンヌの足が突き刺さった。


 蹴りの威力に速度が乗ってすげえ痛い……


 でも、安心したよ。

 お前……俺が手抜いてるってわかってないな!


そがんわい(そんなお前)が、なして(どうして)おい(おれ)に勝てるばい()


「っふ……ぐ、はは、目が腐ってるのか?

 俺は剣に全部を捧げてきた……こいよ。

 お前の剣の全部と俺の全部、比べようぜ」


 俺はあえて挑発した。

 そしたらあっちも乗り気だ。


「真っ向勝負ってわけか。よかたい(いいぜ)



 日差しが差し込む城内の廊下。

 外からは色んな音が聞こえてたが……

 俺の耳はたちまちそんな音は拾わなくなった。


「エンヌ……!」

「……? ちょっとタンマ。

 ユレケオ先輩、邪魔せんでくれん……?

 まぁ…… ちょうどよかか、あん先に貴族がおる。

 ちゃちゃっと殺してしもうてくれんばい?」


 こんな時に……いや、まあ強いけど弱いな……

 あのレベルならフリィアちゃんたちには勝てない。


 見逃しても余裕で大丈夫な敵、ラッキー。


「っ……あぁわーったよォ。

 それよりあいつは倒せんのか?」

「ユレケオ先輩、アホやなかやろ(じゃないでしょ)? 負くる(負ける)わけ」

「はっ、あぁ悪かったなァ」


 そう言ってユレケオって奴は去ってった。



「ごめんな。再開しようか」

「あぁ今回だけ許してやるよ」

「ははっ何様とね」


 ……邪魔は入ったが再び一騎打ち(一本勝負)

 ここで勝負が決まる。


 溜めに溜めたんだ。

 俺は勝つ。この天才を倒してやる。



 息を呑めば全身の筋肉がほぐれた。

 なんだか緊張しないんだ……(みょう)に落ち着く。



 ……まだ。


 ……まだまだ。


 まだ……。



 ……今ッ!!


 俺とエンヌの動き始めは揃ってた。

 エンヌの飛び出しに合わせて俺が床を踏み込み、

 上から下へと振り下ろすように構えた剣。


 それを完璧なタイミングで振り下ろす。


 ただ、俺はあえてそこで動作をやめた。

 二度の踏み込み、これで相手のペースは乱れる。


「なっ……!」


 若干斜めに前へと跳んだ際、

 エンヌは俺に向かって剣を投げつけてた。


「ドアホ! バレバレばい(なんだよ)!!」


 バレてた。

 俺は騙してると思ってたが、

 実は俺が騙されてたんだ。


 この一本勝負に持ち込んで想定外を突く作戦、

 それを見事にやり返されたんだ。


「……」

「ずぅっと顔に出とったで! てことで終いや!!」


 エンヌの勝ち誇った表情が、

 俺の死を確実にさせるように首へと剣が近づく。


 ……。


 ……ふっ。



「騙されたなバァーーッカァ!!」

「!?」


 魔力放出は身体から行うと制御ができない、

 それに加えて自身に反動でダメージまでくる。


 だから魔剣化(まけんか)が強いんだ!


 俺は風を纏わせた剣から一気に魔力を放出し、

 反動ダメージを無くして一気に横へと移動する。


 剣を媒体にした風による位置の変更、

 なぁ天才、これも想定内だったのかよッ!



「なんやとォッ……〜ッ!!」


 その余裕が崩れたな……!!

 俺は風を思い切り剣から放出したせいで、

 剣が手から離れて飛んでったが……問題ない。


 俺は再び接近して、エンヌの両肩をがっしり掴んだ。


「俺はな……父さんのような剣士じゃないんだ。

 誇りだとか……そういうのは考えてない!」


 必死に闇属性で剣を操って斬ろうとしてるが、

 もう間に合うわけないだろ。この勝負、俺の勝ちだ。



「俺の剣ってのはな……この身体だァアッ!!」

「ゴバァッアァッ!」


 頭突き。

 特大の頭突きをこいつの鼻にぶち込んだ。


「剣だけじゃないんだよ……

 俺たちはなぁッ!!」


 もう一発。


「ゴッヴェッ!」

「剣士以前に戦士なんだ!

 勝利は全身使って勝ち取るものだろ!!」


 もう一発……!


「カッァ!」


 鈍い音が響いてエンヌの血と涙が辺りに飛び散る。

 俺の(おでこ)だって痛えさ。でもやめない……お前が、

 お前がくたばるまでやめねぇぞ……!!


「ッハァッ……まっ、ゴベェアア!!」


 しっかし頑丈すぎんだろ……!

 全力で身体強化魔法も使ってるのに、

 こいつの顔、まだ全然ぐちゃぐちゃになってない。


「待てないな。俺はせっかちだから……!」


 多分四発、まだだ。

 徹底的に潰す……ここで俺がやるんだ。


「こんイカれ野郎っ! ブッボォアア!」

「っ……おいおい、随分とパンチが弱いなぁ」


 必死の抵抗、それは俺の腹へのパンチ。

 だが、弱すぎて全然痛くなかった。


「だぁあああッ!! 離せやクソ野郎ォッ!!

 こがん(こんな)ところで終わるわけにはいかんとや!!」

「離さねえよ天才! 俺でお前は行き止まりだッ!

 ここでお前を終わらせるのが俺なんだよ!!」


 俺とこいつに今、プライドや誇りなんてない。


 ただ、どっちが先に折れるかの勝負。


 城内の廊下に響く俺たちの叫び声。

 自身のために発せられる応援歌……


 ははっ、なんだこれ、初めてだ。

 こんなの初めてだ!


 俺は今……人生で一番面白い戦いを味わってる!!



「ッカァッ!?」


 と思ってたら……いきなり俺の口が何かに貫かれた。


「エンヌ、逃げるで」


 加勢……! グラバさんが……?

 いや違う……あえて迂回して入ってきたのか……


 叫んでたから歯だとか舌は怪我なし……

 ただ口を貫かれただけだ。まだ戦える。


 でもまあ、クソ、加勢に来た奴は弓使いか、

 矢を放たれたせいで離れるしかなくなった。


 俺は後ろへと跳んで距離を取る。


あまるなや(ふざけんなや)…… 何ば言いよっと(何言ってんだよ)!」


 エンヌの横に立つ弓使いの女の子。

 逃げるとか言ってたな……俺から追撃しても、

 この状況じゃさすがに勝てない……


「ウルルドさんからの命令、黙ってはよ逃げるで」

「ッ…… わかった。逃げればよかとじゃろ(逃げればいいんだろ)


 ウルルド……あのウルルドだよな?

 俊級(しゅんきゅう)の魔法使い……じゃあ町にある結界も。


「そこのあんた。ウチのエンヌボコすなんてやるやん」


 弓使いの女の子がどれくらいの強さかはわからない。

 種族はおそらく悪魔(ロワ)族……なんだが少し変だ。

 多分何かとのハーフなんだろうな。


 それより……あの目、俺が追ってきたら、

 容赦なくお前を殺せるぞって目だ。


 ……変に命を捨てるより、治療(ちりょう)して戦う方が良い。


「まあな、俺からすれば余裕よ」

「なんやとッ!! 待っとけや次会ったら殺す……!」


「ごめんだね。もう若者にはついていけね〜っす」


 エンヌは不機嫌そうだった。

 鼻血の止まらない鼻を押さえて、

 弓使いの女と一緒に城内から出て行ったんだ。


 あいつらがどうなったかはわからない。


 ただ……これは勝ちというより引き分けか?


 再戦はしたくないな。次は俺が負けちまう。


「……頭いてぇ」


 ケルエタさんたちは大丈夫か……?


 さっき見逃した奴なら多分、

 フリィアちゃんたちを倒せる奴じゃない。


 それでも……心配だな。


 行くか、それに……

 リルメスお嬢様に治癒してもらいたいし。

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