第二十八話 眩暈
首都レクセト。
リアバダ領の中心部でボルワール家が治める、
五つの領内で三番目に栄えている場所。
やっぱり元いた場所に比べると桁違いに栄えてる。
ちなみにフリィアちゃんの故郷で、
お世話になった村はリルド村って名前だった。
「仲良さそうに寝てますね〜」
「一緒にいさせることができてよかったですよ……」
馬車内にはグラバさんにエルメットさん、
俺とフリィアちゃんにリルメスだ。
今は11月25日。
ガッツリ冬に入って雪が積もってる。
この世界の馬車は車輪に鎖を付けて雪対策してる。
普通なら橇を採用するはずだが……
異世界転生してきてるのは俺だけじゃない。
あの眼球が俺以外にも転生者がいることは言ってた。
【全知脳発動】
久しぶりに発動したな……
【馬車についての知識。
(後書きにて記載)】
はーそうなってんのか……
意外に細かいところも調べると面白いな。
「グラバさん。首都レクセトって学校あるんです?」
俺はふと気になって聞いてみた。
【全知脳発──】
「ないですよ。″魔法の塾″ならありますが……」
ないって先に言われて発動取り消されたな……
【全知脳発動】
あぁ、魔法塾に反応したな?
【魔法塾についての知識。
学校が建てられてない場によく在する施設。
魔法などについて学べる場であり、子供から大人、
年齢関係なく学びに来ている。魔法使いが教師】
「一時期、私も魔法塾の先生でした」
「グラバさんってそんな時期あったんですね……」
「意外そうですねエルメットさん……」
「いやぁ……教え方下手じゃないですか」
エルメットさんはグラバさんに軽く頭を叩かれてた。
まあ、グラバさんはめちゃくちゃ教えるのが下手だ。
お手本役としていてもらっただけで、
いざ説明させるとダメダメになるんだよな……
「……てことは、リルメスお嬢様は魔法塾に?」
「入れますよ。もちろんケルエタ様がいる前で、
堂々と入れると言うのはわけがありまして……」
なんだろうか……聞いてみようじゃないの。
「なにせ魔法塾に入塾歴がないと、
将来的に″魔法大学″に入学できないのです」
そんなのあるんだ。
ちょっと後で調べてみるか。
「リルメスお嬢様は上級魔法を学んでますし、
まず同い年の魔法使いには負けないですよ」
「ふふ、お嬢様は天才ですからね。
ケルエタ様の言う通りでしょう」
そんな感じで話してたら、
エルメットさんが話しかけてきた。
「ケルエタさん。フリィアちゃんは相変わらず俺が?」
「そうですね……エルメットさんに任せますよ」
「……先生っぽくできるかな〜。
フリィアちゃん本当に強いんですよね」
エルメットさんがそんなに言うのか……
強いのは知ってるけど、そんな強いのか?
「ほんとあの動きなら、
すぐにでも準上級になるべき存在ですよ」
「あれ、準上級にはなってないんですか?
迷宮で英級の暴野の分身体を倒したって……」
そんな問いにグラバさんが答えてくれた。
「昇級の認定は本体の討伐が必須なのと、
同等級同士での討伐以外は認定されません。
ですから、二人は未だに中級ですね」
意外にややこしいんだな……
ま、等級は結局ただの指標だし、
あんま気にしなくていいか。
* * *
「ひっさしぶりに帰ってきたわ!」
「お城大っきい……あそこがリルメスちゃんのお家?」
首都レクセトに着いた。
前方の少し先にデカい城がある。
「そうよ! あそこがあたしの家、レクセト城!」
レクセト城は立派なお城だった。
俺が想像するような城でなんだか安心した。
異世界って言っても変わりすぎてるところはない。
見惚れながらも俺たちは城の中に入り、
護衛の兵士たちにお辞儀されながら先に進む。
「グラバさん。やっぱり領主様と今から?」
「えぇ、領主のリアバダ様と、
リルメスお嬢様のお父様に会います」
ついにか……ちょっと緊張するな……
しばらく廊下を歩いたり階段を登ったりして、
ついに領主のいる部屋へと辿り着いた。
扉を開けるとそこは書斎のような部屋で、
リアバダって人が本好きなのが一発でわかった。
「……待っていたぞグラバ」
「お久しぶりでございます。
リアバダ様にリクラト様」
リアバダ・レクセト・ボルワール。
あの人がこの領の領主……結構老けてんな。
「リルメス〜やっと会えてお父さん嬉しいぞ〜!」
リクラト・レクセト・ボルワール。
リルメスのお父さんだ。ありゃ溺愛タイプだな。
「も、いきなり抱きついてこないでよお父様……」
リルメスに近づいて抱きしめるリクラトさん。
2年ぶりの再会だから嬉しいんだろう。
「グラバ、先日テグトトがここに来てな。
聞けばそこの二人に助けられたと……
のう、それは本当か?」
リアバダさんはフリィアちゃんとリルメスを見つめ、
グラバさんにそう聞いていた。
「本当でございます。
テグトト様を見つけましたのはこの二人、
フリィア・サタニルド様とリルメスお嬢様です」
フリィアちゃんの名を聞いて、
リアバダさんは顎に手を当てた。
「そこのフリィアという者よ。
お主はリルメスの″何だ″?」
おそらく試されてる。
フリィアちゃん……ミスるなよ。
「……えと……わたしはリルメスちゃんの……
いや……リルメスちゃんを守る親友です!」
「ちょっとあたしだって守る側なんだから!!」
くぅ〜っ100点な返しが来たな……
「……ふっくく……グラバ、
リルド村には逸材がいたのだな」
リアバダさんはパッと表情が明るくなって、
フリィアちゃんに向けて言った。
「リルメスの親友と聞いておったが、
申し分ない純粋な者だな、素晴らしい。
どうだ? リルメスの護衛にならないか?」
うぉおお! あっちから頼んで来たぞ!?
「い、いいんですか!?」
「リルメス、リクラト、構わんだろう?」
もちろんそう聞かれてリルメスは頷き、
リクラトさんも嬉しそうに頷いてた。
「ならば決まりだ。フリィア・サタニルド、
お主は今日から正式にリルメスの護衛だ」
それを聞いてフリィアちゃんは嬉しそうに返事し、
リルメスはフリィアの方へと駆け寄った。
円満な雰囲気の中、リアバダさんは最後の質問として、俺についてグラバさんに聞き始めた。
「さて、グラバよ。妖精族様はあの者か?」
意外だ。領主ほどの人でも様付けだとは……
「そうでございます」
「ケルエタと申します」
リアバダさんは俺の名を聞いて一つ、
質問を俺にしてきた。
「……お主、″眼球″を知らないか?」
「!?」
え……この人転生者?
「急に聞かれましても……」
俺は咄嗟にそう言って考える時間を作った。
その間、リアバダさんは経緯を話し始めたんだ。
「うむ……余は20年前ほどに預言者に会ってな。
その者が言うには──
『眼球知る厄持ち妖精族に気をつけろ。
その者が現れた時、奴らは動き始める……』
なんて言っていてな……それから余は、
妖精族にはこう質問してるのだ」
誰かから聞いた情報……じゃあ転生者じゃないか。
待てよ……おいその預言者ってなんだ?
【……】
全知脳が発動しない……
何にも記載されていない人物かよ。
「すみません……その眼球という存在については、
私の方では全く情報がありません……」
「よいよい、むしろそれでよいのだ。
眼球の知識があった場合、追放していた」
……マジか。絶対にバレないようにしよう。
って言ってもバレる要素ないけどな。
ていうか、もし俺に顔があった場合、
表情でさっきバレてたな……光の球で良かった。
「その、リアバダ様……その眼球ってなんです?」
俺はその眼球について聞いてみる。
ちなみに俺はあの眼球がなんなのか知らない。
2年前、転生したての時にやってみたんだが、
あの眼球についての知識は得られなかった。
「神族に分類されている伝説上の存在だ。
色んな古文書に記載があってな……
その全てで、豊穣や繁栄の象徴とも言われるほど、
崇拝されていたそうなんだが……」
は? じゃあなんで全知脳は発動しなかった?
「余も初めてだ。眼球を悪く言う存在はな」
「その預言者って何者だったんです?」
「わからない……顔も思い出せん……ただ……
その者からは魔力が感じられなかったな」
そいつ何者だよ……この世界の生命は必ず、
魔力を持って生まれる……だから多分、絶対……
そいつはリアバダさんが感じ取れないほど、
莫大な魔力を持ってる相手だったってことだ。
「……すみません。聞きすぎました」
「あぁべつに減るものでもない。よいよい」
色々謎を与えられて初顔合わせは終了。
……確かにあの眼球が何か全く知らないな。
厄……おいおい。俺がトリガーとかあるか?
いやでも……戦争の運命は確定だろ……?
なんだ……辻褄が合わないぞ……
……。
とりあえず、それは落ち着いてから考えよう。
今は二人を優先しなきゃいけない。
なんせもう……3年後には戦争だぞ?
馬車についての知識
馬車は古くから車輪と橇のみだったが、
300年ほど前に車輪へ鎖を付ける手法が誕生。
それによりグロワール王国などの冬と夏がある国は、
季節ごとに馬車を変える必要がなくなった。
また、深雪地帯では未だに橇が主流。
道が整備されている場でのみ鎖手法が主流である




