表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
花道闊歩 -異世界ガイドとして死ぬ運命の少女たちを幸せな老衰エンドへ導きます-  作者: ガリガリワン
第一部 第四章 首都レクセト編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/38

第二十六話 背中を押す存在


 ……フリィアちゃんとリルメスは救出成功。

 二人の今回の行動は大問題だったが……

 テグトトさんを見つけたのは大手柄だ。


 俺たちは森の外に転移したが、

 場所としてはそう屋敷から離れてなかった。


 帰り方は徒歩だ。

 それと正直、雰囲気はめちゃくちゃ重たい。


 フリィアちゃんは下を向いて歩いてて、

 リルメスは顔をグラバさんの背中に向けず歩き、

 グラバさんは振り返ることもなく先頭を歩いてる。



「テグ……なんか面白いこと言えよ〜」

「シルフ、ちょっと黙っとれ……」


 俺は驚いたよ。俺以外の妖精(サルェタ)族を見るのは初めてだ。

 このシルフさんはテグトトさんに長い間憑いてる。

 失礼承知で色々と全知脳(ぜんちのう)で調べたが──


 まったくシルフさんについての情報はなかった。

 記録とかにもない……結構謎な存在だ。


 まあ、テグトトさんは前の通りだな。


「……あの〜お二人はこの後、どうするんです?」


 俺は気になって聞いてみた。

 テグトトさんとシルフさんはどう行動するんだ?

 この二人はグロワール王領の人らだからな……


「我らは一度王領に帰り、生存報告を行う。

 その後はそうじゃな……恩返しも含めて、

 リアバダ領の首都レクセトに向かおうかの。

 命の恩人がいる領で我はこの力を尽くしたいのじゃ」


 かなり立派な言葉が返ってきた。

 まあそうか、この人らにとって二人は命の恩人。

 そう言う行動になるのもすごく理解できる。


「ウチはテグについてくな〜。

 今までがそうだったようにね」


 そんな感じで二人のこれからは知れた。

 もしかしたらまた会えるかもな……



 それからしばらくして俺たちは屋敷に帰ってきた。


 もうすっかり日は昇ってて昼頃。

 屋敷の前でテグトトさんとシルフさんとはお別れだ。


「お嬢ちゃんたち、また会おう。

 この恩は返さねばいけんからのう」

「元気でな〜」


 フリィアちゃんとリルメスに元気はなかった。

 疲れてるのもあるだろうが、やっぱりさっきのことだろう。あれを聞いて元気でいられるわけがない。


「……ではグラバ殿にケルエタ殿、我はこれで」


 テグトトさんはそうお辞儀して、

 シルフさんと共に俺たちから離れていった。



「……さて、ご飯でも食べましょうか」


 ……気まずい。フリィアちゃんは頷くだけで、

 リルメスに関しては無視だ。グラバさんも無言。


 なんだこれ……ギスギスしすぎだろ……



 * * *



 二人を救出してから五日。

 段々と屋敷も首都に帰るために荷物をまとめ始めてて、俺とフリィアちゃんも荷物をまとめてる。


 首都に行くわけじゃない。

 フリィアのおばあちゃん家に戻るだけだ。


「……ケルエタさん」


 自室にてフリィアちゃんは俺に話しかけてきた。


「どうしました?」


 ここ最近の表情は暗いまま、

 フリィアちゃんはリルメスと一緒にいたいんだろう。


「ケルエタさんでも……どうにかできませんか」

「……どうにかしてあげたいですよ。

 でも……どうしようもできない……」


 苦しい……なんでこんなに辛いんだ。


「その……リルメスお嬢様とはちゃんと話してます?

 もう当分会えなくなりますし、悔いは残さな──」

「悔いなんて残っちゃいますよ……

 ケルエタさんは……残さず別れられるんですか?」


 フリィアちゃんの言葉が効いた。

 悔いをなくして別れるなんて無理だ。


 ……俺だって悔いがないわけじゃない。

 だってこのままじゃリルメスを助けられないんだ。


 フリィアちゃんだけなら問題ないが、

 俺はリルメスの運命も救わなきゃいけない。


 このままいけば離れ離れになって戦争が起きて、

 リルメスを救うことができずにゲームオーバーだ。


「私も悔いがないわけじゃないです。

 できるだけのことはしてみますが……

 フリィアちゃんもあまり期待しないでくださいよ」


 フリィアちゃんは俺がそう言ったら頷いて、

 荷物をまとめる作業に戻った。


 リルメスが屋敷を離れるまでの九日間、

 俺はどうにかして未来を変えなきゃいけない。


 できるできないじゃない……やるしかない。



 だが……。



 ……現実ってのはそうポンポン上手くいかない。

 俺はチートを持った最強勇者でもない。

 金を有り余るほど持つ貴族でもない。


 どれだけ俺が意気込もうと未来は変わらない。

 金も力もない俺には知識しかない。


 ただ時に知識は無力だ。まさに今とかな。


 結局八日間ほど説得だとか、

 それ以外のことを色々考えてみたが、

 全て無駄足、未来が変わることはなかった。


 明日、リルメスは屋敷を離れ、

 首都レクセトへと帰ってしまう。


 フリィアちゃんと俺はすでに住まいを変え、

 おばあちゃんと共に暮らしてはいるが……


「フリィア……暗い顔してどうしたんだい?」

「……ううん。おばあちゃん大丈夫」

「そうかい……」


 フリィアちゃんは完全に落ち込んでる。

 号泣して喚き散らさないのは正直びっくりだ。


 この歳での別れなんて耐えられるはずもない。

 俺が九歳の時はここまで立派じゃなかった。


「フリィア……ボルワール家のお嬢様とは仲良くなれたのかい?」

「うん……仲良くなれたよ……すごく」


 フリィアのおばあちゃんは相変わらずだ。

 過干渉もせず程よい距離感でいてくれる。


 この人……毎月白金貨を2枚送っていたのに、

 家どころか家具すら新調してない。


 食事こそ今は豪華だが、

 これはフリィアが家に帰ってきたからだろう。


 おばあちゃんの生業は服の修復、

 正直、白金貨が2枚も無償で手に入るなら、

 家具の新調くらい余裕で出来るはずだ。


「フリィア……そのお嬢様とは離れたくないかい?」

「もちろん……! でも……首都には行けないよ。

 おばあちゃんも心配だし……お金もない」


 たとえ金があったとしても、

 フリィアちゃんはこの村を離れない。


 フリィアの唯一の身内、

 おばあちゃんは何者にも変え難い存在なんだ。


「そうかい……ちょっと待っててねぇ」

「うん……」


 フリィアちゃんは椅子に座り直して、

 おばあちゃんはゆっくり立ち上がって、

 別室の方へと歩いていった。


「……フリィアちゃんは立派ですね」

「え?」


 俺の母さんはシングルマザーで、

 父親は俺が幼稚園生の頃に出ていった。


「私は……母様のために踏み止まれませんでした」


 母さんはいっつも自分を後回しにして、

 仕事に()まれてもいつも笑顔だった。


 夜勤の時は俺をばあちゃんに預けて、

 それ以外の仕事の日でも帰ってきたら笑顔だった。


「母様は私のために尽力してくれました。

 ですが……私は母様を裏切ってしまったのです」


 俺の母さんはどう思ったんだろう。

 ……通り魔に刺されて死んだなんて──


 そんなことを聞いてどう思ったんだろう。


「……少し自語りが過ぎましたね。

 フリィアちゃんは立派です……私なんかよりも」


 俺は母さんの全てを受けて、全てを裏切った。

 母さんは俺の背中をいつも押してくれて、

 上京することにだって否定しなかった。


 大学に入って一人暮らしして、

 仕送りは毎回豪華ですごく助かった。


 なのに……なのに俺は何にもしてあげられなかった。

 ああやって死ぬならば……母さんの側にいて、

 俺は着実に恩返しするべきだったんだ。


「……ケルエタさんも立派ですよ」

「……え?」


「ケルエタさんはわたしのことを助けてくれて、

 剣士になるために力を貸してくれた……


 わたし……嬉しかったんです、大剣を貰った時。

 無理して買ってくれて、わたしに期待してくれて。


 ……わたしは自分以外の人にそこまでできません……

 でも、ケルエタさんはいつも全力で──


 わたしの″背中を押してくれた″」


 ……母さん。俺は母さんを裏切った。

 死ぬなんてのは最低な親不孝だ。



『母さん。俺売り上げトップだったんだ。

 すごくないか? ホームページに載ってるよ!』

『あぁらまぁ〜すごいわね〜。

 ケンちゃんさすが〜!』


 いつの日かの通話越し、

 俺は母さんにこんなことを言われた。


『ケンちゃん前言ってたことだけど……

 焦らずゆっくり生きなさいね。

 自分が何者かなんて気にしないで、

 そもそもケンちゃんは″私の息子″なんだから」


 ……俺は勝手に自分が何者でもないと思ってた。


 でも、俺は母さんの息子だったんだ。

 世界でただ一人……母さんの息子。


『ケンちゃん。困ったら頼りなさいね』


 ……俺は元気でやってるよ母さん。

 この姿は見せられないけど、

 異世界だけど……頑張ってる。



 今、俺は母さんの立場になってる気がする。

 こんな気持ちだったんだな母さん……



「私で良ければいくらでも押してあげますよ」



 フリィアちゃんにそう言ったら、

 暗い表情だったフリィアちゃんは少し笑った。


 それと同時におばあちゃんが帰ってくる。


 俺はおばあちゃんが何を持ってきたか気になった。

 小袋……? 音がジャラジャラ鳴ってる。


 なんだ……あれ? 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ