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花道闊歩 -異世界ガイドとして死ぬ運命の少女たちを幸せな老衰エンドへ導きます-  作者: ガリガリワン
第一部 第三章 不帰の大森林編

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第二十五話 愛情


 さて、異世界ガイドとしてかなりのピンチを迎えた今日だが、今になって死のリストが一括更新。


 赤文字だとか黄色文字は全部消えた。


 最初はマジで焦ったが……大丈夫だった。

 というよりは……予想以上に二人が強かった。


 フリィアちゃんとリルメスの二人は、

 連携だとかが特に上手い。


 だから迷宮の暴野(ぼうや)に負けなかったんだ。


 やっぱり、このルートは正解だった。

 鍛えさせてなかったら多分即死してる。


 この階層の(ヌシ)(デダ)族の暴野(ぼうや)

 魔族の中に含まれる(デダ)族、等級はわからない。


 ただ、英級(えいきゅう)魔法使いのテグトトさんがいて、

 かなり苦戦してる様子があったのと、

 死のリストが赤文字を示してたってところから──


 大体、英級(えいきゅう)上澄みか準俊級(じゅんしゅんきゅう)クラス。


 こっからの戦いはグラバさんがやってくれる。

 俺はこの人が強いことを知ってるが、

 本気だとかは見たことがない。


「37体から増えませんね。それが上限ですか」


 準俊級(じゅんしゅんきゅう)の魔法使いは、

 俊級(しゅんきゅう)魔法を扱うことができる。


 もちろん俊級(しゅんきゅう)魔法使いほど、

 扱い慣れてるわけじゃない。


炎道灰界(えんどうかいかい)、火の神はそう言った。

 旭日(きょくじつ)の下、一本の炎道に達する者、

 黎明(れいめい)(あかつき)を身に、一切を灰燼(かいじん)と化せ。

 炎天炎(イデアフルメトラ)……」


 俊級(しゅんきゅう)炎魔法……実際に見るのは初めてだ。


 グラバさんの杖から橙色の火球が、

 天井付近に放たれて火球は静止した。


 そして……その火球は爆発。


 爆発によって大量の火の光線が放たれて、

 そこら中に降り注がれてた。あの一本の光線の威力は、おそらく上級炎魔法と大差ない……


 そんな威力の魔法が部屋の大半を埋め尽くして、

 37体もいた奴らは1体を残して消滅した。


 召喚されてた召喚体も、もう残ってない。


「……すご」


 赤い光の玉からそんな声が聞こえた。

 俺もそう思う。たった一つの魔法でここまで……


「一体の性能はあまりにも弱い、

 分身から作り上げられた個体は特に……

 ですから今の攻撃で生き残った貴方、

 貴方が本体ですね?」


 グラバさんが魔法の杖を向けるのは、

 あの魔法の中で生き残った個体。


風山(ウィルンメド)


 グラバさんは単音詠唱(たんおんえいしょう)で魔法陣を省略した。


 魔法発動に必要なのは詠唱と魔法陣、

 そのうち完全に省略ができるのは魔法陣のみ。


 難易度は高くできたとしても、

 ある程度の威力を保つ必要がある。


 魔法陣を省略して詠唱も単音……

 省略しすぎて威力なんてほとんどないのに、

 下級風魔法、風山(ウィルンメド)(ヌシ)の触手を切断した。


 グラバさんは魔法の杖を腰に差して、

 両拳(りょうこぶし)に力を込めてゆっくり前に歩き始めた。


 魔法じゃなく、徒手(としゅ)による撲殺(ぼくさつ)……

 多分、グラバさんなりの八つ当たりだろうな……



 基本的に拳戦者(けんせんしゃ)は戦士として弱い。

 なぜなら完全に身体強化魔法頼りだからだ。


 唯一の取り柄は近接戦での優位度。


 剣ほどの動作もなく、拳は瞬発力で優れていて、

 相手が対処する前に攻撃を入れることができる。


 プロボクサーのパンチはめちゃくちゃ速い。

 剣道有段者が真剣を持ち、プロボクサーの間合いからタイマンしたら勝つのはプロボクサーだ。


 でも、剣道有段者が鎧を着ていたら、

 その拳は鎧を貫くことはできない。


 低等級は倒せても高等級の存在は、

 基本的に身体が硬く魔法で強化されている。


 あの(ヌシ)が硬いかはわからない。

 ただ、あの触手に関しては少し硬いはずだ。


 だから、グラバさんがこうやって突撃するのは、

 あまりというか……絶対に得策じゃない。


 でも……これはそう言う問題じゃないんだ。


 グラバさんは怒っている。


 やり場のない怒り。

 リルメスとフリィアちゃんを物理的に、

 離れ離れにしなくちゃいけないことへの怒り。


 あの人だってしたくないはずだ。

 だけど、いずれしなきゃいけない。


 リルメスの今回の行動が一番の問題じゃない。

 もう来年で二人は十歳になる。


 リルメスは領主一家の貴族だ。

 こんな田舎で何年も滞在するわけにもいかない。


 それに、魔法使いとして素質がある以上、

 魔法学校に入れて大学に行かせたいはずだ。


「……」


 グラバさんはそんなことを言われたのだろうか。

 リルメスを首都に連れて帰ってこいと……


「グラバって……すごい強いわね」

「あんなに強かったんだ……」


 ……きっかけができてしまった。

 表面上じゃ今回のことを言及して、

 強制的に首都へとリルメスを帰すんだろう。


 俺的にもすごく困る……けれども、

 どうやったってそれを防ぐことはできない。


 俺が何をしたって……フリィアちゃんがリルメスについて行くことは不可能なんだ。


 首都で生活する金なんてない。



「あっ」


 グラバさんにふと目をやったら、

 (ヌシ)の触手を拳で次々と破壊して、

 胸ぐらを掴んで片手で顔面にラッシュを決めてた。


 片手の殴りだってのに俺の全力両拳パンチより速い。

 まあ、そりゃそうか。この世界と元いた世界の身体能力の差なんて大きすぎる。


 俺が転生して人だったら、ああなれてたかな?



「……討伐完了」


 グラバさんは(ヌシ)を倒した。

 呆気なかった。というよりは相性問題だろう。


 (ヌシ)は分類じゃ魔法使いとかだ。

 グラバさんは魔法使いであって拳戦者(けんせんしゃ)

 どうしようもできなかったんだろう。


「グ、グラバ……」


 リルメスが怯えた様子でグラバに近づいた。

 叱られる。怒鳴られる。そんな不安があるんだろう。


「お嬢様……二週間後、首都レクセトに帰りますよ」

「……ぇ……え?」

「とりあえず、屋敷に帰りましょうか」


 グラバさんは困惑して固まったリルメスを置いて、

 (ヌシ)が死亡した瞬間に輝き始めた床を調べる。


「リルメスちゃん……首都に帰っちゃうの?」

「え……い、いやよ帰らないわよ!」


 フリィアちゃんがリルメスに近づいてそう言ったら、

 リルメスはグラバさんの方に走って言い返した。


「絶対にいやよ!! フリィアと離れたくないわ!」

「お嬢様……今回の件で(わたくし)は確信しました」


 グラバさんはリルメスに振り返った。

 そんなグラバさんにリルメスは怯えない。


「リルメスお嬢様のわがままは問題ないですが、

 好奇心による危険行為などがあるのであれば、

 首都という安全な場所で過ごしてもらいます」


「な、なんで!! 今回はあたしがやったけど……

 もうしない!! しないから!!」


 リルメスは駄々をこねてる。

 俺は思わず目を逸らしたくなった。


 でも、みんな逸らせないんだ。

 みんなが二人を見ていた。


「ねぇグラバ! もうしないから!!

 だから帰るのなんていやよ!!」


 グラバさんはリルメスに腕を掴まれてる。


「リルメスお嬢様……貴女は何者ですか?

 答えて差し上げましょう。貴族なのです。

 領主様の血を継ぐ貴族なのですよ。

 そろそろ自覚なさってください」


 グラバさんはいつもと違って冷たい。

 あれでも優しい方だがわざと冷たく接してる。


「……なによ……グラバのバカ!!

 絶対帰らないわ!! なにが貴族よ……

 あたしは貴族になんて生まれたくなかった!!」


「お嬢様ッ!!」

「っひ……」


 グラバさんが怒鳴った。


「……生まれた場所を拒絶することを、

 (わたくし)は否定などはしません。

 ですが……周りが注いでくれている愛情に、

 そうやって反抗するのはお許しできません」


 リルメスはわけがわからない様子だった。

 不思議と目からは涙がこぼれ落ち始めてる。



「リルメスお嬢様、お父様やお祖父様は……

 貴女を魔法使いにしたいという願いだけじゃない。

 大きな怪我なく、大きな病気に(かか)ることもなく、

 健やかに生きてほしいのが願いなのです。


 しかし、リルメスお嬢様はそれを裏切ってしまう。

 好奇心ゆえの行動は命に関わるものが多い。


 リルメスお嬢様、貴女は愛されているのです。

 まだ九歳なのですから自身の力に見合った行動、

 それを意識してください……」



 正論だ。リルメスは愛されてる。

 だから、グラバさんは怒ったんだ。


 貴族になんて生まれたくなかった。

 これは愛情に対する冒涜発言……


 ……ただ、リルメスはまだ九歳。

 こんなことを理解しろと言われても、

 それは難しい話だろう……いや、そうか。


 これが教育ってやつなんだ。


 グラバさんはリルメスに実感させたのか……


「でも……フリィは……フリィはどうするのよ。

 あたしはフリィを置いていきたくなんてない!!」


 グラバさんはリルメスから顔を逸らした。


 涙を流しながらそう言うリルメスを、

 グラバさんは直視できなかったんだ。


 フリィアちゃんのことは、

 グラバさんだって痛いほどわかってるだろう。


 ……。


 とりあえずだ……とりあえず迷宮から脱出しよう。

 輝いてる床は転移魔法陣だろう。

 横にある階段は下の階層への道……


 俺たちはもちろん転移魔法陣の上に乗った。


 転移した場所は森の外だった。

第一部 第三章 不帰の大森林編 -完-


次章

第一部 第四章 首都レクセト編


* * *


ここまでお読みいただきありがとうございます!

ブクマや評価の方、リアクションなど非常に励みになります!感想などもお気軽にどうぞ!


第一部も次章から後半へと突入。

明日も変わらず18:15に投稿です!

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