第二十四話 希望の光
* *【リルメス視点】* *
「リルメスちゃん!」
「星々よ。──星水衝!」
星水衝は上級水魔法……
集団戦向きってグラバが言ってたし、
この魔法をフリィに当てずに使わなきゃ……!
「……!」
フリィに向かってく触手、
あたしがいくつ破壊しても、
何度も何度もフリィの足に絡みつく。
あれをどうにかしないといけないのに……!
「!」
「……」
フリィと目が合った。
不安そうでもなくて、泣きそうでもなくて……
真っ直ぐあたしを見て信じてくれてた。
……。
あたしが戦士になりたい理由……
今なら決められる気がするわ。
どうしても……あたしがいないといけないの。
あたしじゃなきゃダメなの!
フリィの隣に立ち続けるのはあたしよ!!
「風幻操!」
「うわっ!」
「フリィ! そのままあいつに飛びかかりなさい!」
単音詠唱でやってやったわよ……!
フリィを浮かせて触手から離してあげたわ!
もう、フリィを止められる奴はいないの、
だから……だから──
「やっちゃいなさいフリィ!」
フリィは空中で大剣に乗るようにして、
主一直線に飛んでったわ!!
「テグ、身体強化をフリィア嬢にかけるよ!」
「シルフ頼んだぁ! やったれェお嬢ちゃん!!」
地面に大剣を突き刺して主の前にフリィが立ったわ。触手がまたフリィに襲いかかったけど……
「っ!」
フリィはギリギリで触手を避けて、
大剣を地面から引き抜いて主を斬りつけたわ!
身体強化魔法がかかったらあんな力持ちになるの!?
すごいわフリィ!
「……っはぁ、はぁ」
「か、勝ったのよね?」
主が水みたいに溶けちゃったら、
たくさんいた召喚体も同じように消えたわ。
「リルメスちゃん……勝ったよっ!」
「〜〜!! やったわ!! あたしたちの勝ちよ!」
勝ったわ! 勝ったわよ!
英級クラスの敵を倒したわよ!
「テグ……思わない?」
「何がじゃ?」
「……主は確かに強かった。
でもさ……通常の敵で上級の暴野がいたから、
こいつは普通に考えたら英級だし、
魔力量だって間違いなかった」
「シルフ、何が言いたい?」
二人が話してたけど、あたしはフリィに抱きついてたからあんまり聞こえなかったわ。
「……変だよ。英級の暴野が負けるはずない。
確かに規模感はすごかった……でも弱すぎる。
脆すぎるというか……あまりに手数が少ないの。
過去の英級の奴らより何倍も──」
いきなりだったわ。
部屋の明かりの色が真っ青になったの。
「な、なに!?」
「まだ敵くるの……?」
あたしとフリィはびっくりしたけど、
テグトトとシルフはちょっと笑ってたわ。
「あ〜……テグトト全部わかった」
「我も全て理解したわい……ホッホッホッ」
二人とも見上げてたから、
あたしたちも上を見たわ。
「なに、あれ」
「さっきの黒い奴が……」
主一体があの強さだったわ。
でも……今度は上から何十体も降りてきてたのよ。
一体から二体って感じで増えてて、
黒い渦からももう一体出てきたわ……
「固有魔法は二つだった……
召喚魔法由来ではない召喚。
そして、分身体の構築……
初めて聞いたよ。分身なんてさ」
そ、そんなのあり? ズルいじゃない!!
一体でも残ってたら……増えちゃうんでしょ?
「テグ、どう?」
「一体でもかなりの召喚量じゃった。
じゃがそれを成せる者が今……ああして、
大量に降りてきている……そうじゃなぁ」
こんなのどうすれば良いのよ……
何十体も……無理よっ
「シルフ、詰みかもじゃ」
「……ま、そうだよね〜」
フリィが怪我してやっと勝てて……
みんなでやっと……やっと勝てたのに。
こんなの……ズルよ!
* *【ケルエタ視点】* *
「グラバさんこっちです」
「不帰の大森林……」
俺とグラバさんは森に入った。
ここは入ったら二度と帰れない森だ。
色んな可能性を考えた中で、
最も可能性があるのがここだ。
この前の手紙でリルメスちゃんは気になってた。
ここがどういう場所か……俺も濁してたしな。
危険な森……なんてレベルじゃない。
人が簡単に死ぬようなところなんだ。
それに内部の情報はほとんどなかった。
だけど、ただ一つ助かることがある。
この森、湿度が高すぎるせいで地面が濡れてて、
足跡がくっきり残ってたんだ。
これを辿って行けば二人に会える。
「グラバさん……すみません……止められなくて」
「なぜ謝るのです……不可能ですよ。
どれだけ対策しても穴があるのが当たり前です」
グラバさんはため息をついて前を向いた。
「今私たちができることは、
二人を必ず見つけること……
それ以上もそれ以下もありません」
……俺は絶望してる。
さっき話してる時、グラバさんは「首都に帰るべきだ」と。独り言を発してた。うん……だろうな。
ここにリルメスがいる必要はない。
本来、首都に帰って過ごすべきなんだ。
本人のわがままが強かったせいで残ってるが、
今回の件でグラバさんも我慢の限界だろう。
つまり……助け出せても離れ離れになるんだ。
そうなってくると二人を生かすのは不可能。
どうにかしてそれはやめてもらわなきゃいけない。
じゃないと……俺が守ってあげられないんだ。
「……あ」
「転移魔法陣……!?」
グラバさんが歩いてる中、硬い地面にグラバさんの足が乗ったと思ったら、転移魔法陣だった。
まあ……案の定転移した。
でも足跡的にも二人は転移したかもしれない。
足跡は間違いなく、直進してるだけだった。
死のリストもまだ、たまに更新されてる。
だから生きてる……生きてるけどここって……
「迷宮……なるほど」
迷宮。世界にたくさんある謎現象の一つ。
急に出現するし、中は暴野だらけ……
でも、金貨とかが多くて宝石とか豪華な物もある。
稼ぐには良いところだが……
なにせちゃんと危険度は高い。
「二人は無事なのでしょうか……」
「まだ生きてます……ただいつまで……」
迷宮の攻略は一流のギルドが請け負う。
基本的に階層が分かれてて、
全知脳の出した記録上じゃ最大二十七層。
ここがどれくらいの深さかは知らん。
そして今、何階層だとかもな。
「……揺れている」
「なにがですか?」
「小石が揺れています……それに魔力を感じる」
グラバさんが言うことつまり、
何かが魔力を使って戦ってるサインだ。
「……急ぎましょう」
「えぇ、そうですね」
二人は確かに強くなった。
それでも世間一般的な戦士並みだ。
この世界の一般的というのは雑魚という意味。
平均より上でやっと生きていけるんだ。
グラバさんは走る中、何度か暴野にあった。
大体下級から中級、全部ワンパンだった。
見もせず、流れるように殴って吹き飛ばして、
一瞬で命を何個も奪っていってた。
やっぱりこの人の強さは桁違いだ……
途中真っ黒な騎士が出てきた。
グラバさん的には推定上級。
俺もそう思う。
だけどこの人、その上級をたった1分程度で倒した。
……それもそうか、準俊級は上級を軽く倒せる。
そんなレベルの強さなんだ。改めて納得する。
そんな一方的な殺戮をしながら走り続ける中で、
グラバさんは一つの大きな扉を見つけた。
鍵がかかっていて開ける方法が見つからない。
「……ケルエタ様後ろへ」
「え、あぁはい」
そんな感じで俺がグラバさんの後ろに行ったら、
グラバさんは魔力を拳に込めて扉を殴った。
普通こういうのってギミック解くんだよな?
この人、拳に魔力をめちゃくちゃ乗せて、
ゴリ押しで扉ぶっ壊して進んだぞ……
「グラバさん……意外に物理ですね」
「今は時間がないので……」
そう言って俺とグラバさんは扉の奥の通路、
それを通ってまた前進し始めた。
「近い……すごい量の魔力ですね……
肌を突き刺すような魔力を感じます」
その魔力を感じるのなんなんだ……
俺全く感じないんだけど。
ま、まぁいいや。
グラバさん的には近いらしい。
* *【フリィア視点】* *
「リルメスちゃん……あたしから離れないで」
「フリィもあたしから離れないでよ……」
さっきのあいつを倒すのにあんな苦労したのに……
「うっ……ぐ」
「フリィ……?」
痛い……ズキズキする。
お腹をさっき殴られたから……
「大丈夫……どうにかなるよ」
「……フリィ」
……帰りたい。こんなところで死にたくない。
でも……こんな量勝てるわけないよ。
わたしがそう思ってると、
後ろからすごい量の魔力がきた……
誰……? 空間魔法で守られてるはずなのに、
それでも少し耳が塞がっちゃいそう……
「グラバっ!!」
「なんじゃと……!?」
「え、マジ?」
みんな振り返って驚いた。
グラバさんと……ケルエタさんがいたの。
「ケルエタさんっ……」
「フリィアちゃんとリルメスちゃん。
お説教は後でしますからこっちへ、
あとは″グラバ″さんがやってくれますから」
グラバさんが強いって知ってるけど……
いくらなんでもあの数を一人じゃ無理だよ。
「テグトトさん。お久しぶりです。
加勢はいいので、お二人をお守りください」
「相変わらずじゃな……承知した」
グラバさんはそう言って、
ネクタイを結び直して前に出たの。




