第二十一話 見たことある存在の色違い
* *【ケルエタ視点 (回想)】* *
テグトト・ユオラデール。
あの手紙を見た時この知識を得た。
しかし、子どもの好奇心をナメすぎたな……
まぁ、一応知識の整理をしておこう。
彼が名を上げ始めたのは30年ほど前だ。
種族としては鉱髭族、いわゆるドワーフだ。
そんなテグトトさんは七十四歳だが……
鉱髭族だから意外に若い扱いだ。
英級を冠する雷魔法使い、
どれぐらい強いかの予想はつく。
そもそも、英級以上の戦士はバケモノ扱い、
やること成すことが桁違いなんだ。
そんなテグトトさんを俺は色々調べてみた。
全知脳は何かに記されている時点で、
発動から知識を得るまでが可能だ。
テグトトさんはグロワール王領の近衛兵、
それなのか、かなり多くの記載があった。
まずこの人、魔法大学を成績優秀で卒業してる。
魔法大学、これはすでに知識としては得てるが、
あまり触れることはなかったし整理しとこう。
まず、魔法大学はこの世界に四つだけ。
【ガシリア大陸】っていう緑峰大陸の北東に位置する大陸と、緑峰大陸の真上にある【星焉大陸】に二個ずつある。なんせかなりデカい国があるからな。
魔法大学は入るのは簡単だが卒業が難しい。
日本とは違って海外の大学みたいな感じだ。
しかも、四つしか魔法大学はないから、
めちゃくちゃ卒業は難しいらしい。
そんな大学をこの人はストレート卒業。
言わば留年無しで成績優秀のまま卒業してる。
この時点で結構ヤバい人だ。
それで卒業後はグロワール王国にスカウトされ、
近衛兵として働き始めて英級兇徒を捕縛。
そこでこの人は英級になったってわけか。
……鉱髭族ってのは全知脳が正しければ、
魔法には優れず、力に優れるって知識に入ってる。
実際、歴史上鉱髭族の魔法使いで、
俊級になれた奴はたったの三人だ。
しっかしグロワール王領も酷なことするなぁ。
不帰の大森林なんて言う場所に、こんな優秀な人を行かせるなんて……結果はわかってたはずだろうに。
* *【フリィア視点】* *
「テグトト……?」
わたしたちのところに来たのはテグトトさんだった。
わたしとリルメスちゃんが探してる人……
「なんでこんなとこに……?
もしかしてあたしたちって深い層にいるの?
……それよりどうやって5ヶ月も生きてたのよ!」
リルメスちゃんが疑ってた。
5ヶ月もどうやって生きてきたのかって。
「待て待て、説明させとくれお嬢ちゃんたち……
いや、しかし5ヶ月か……だいぶ時間を食ったのう」
テグトトさんは顎から伸びてる長い髭を触りながら、
わたしたちには近寄らないで事情を話してくれた。
「5ヶ月間我は暴野を焼いては食ってた。
水分は水魔法じゃな。そして出られなかった理由、
この迷宮のう……どうやら我の魔力じゃ出れんのだ。
下の階層に行くためにも層の主を倒さなきゃならん。
しっかしここの主が見つからんのだ」
魔力じゃ出られない……?
属性とかの問題なのかな。
「はっきり言って詰み……
気は狂いはせんが死ぬ気は出てきておったわい。
……でもまあ、お嬢ちゃんたちの魔力でも、
あの扉が開けられないなら、本当に詰みじゃな」
迷宮からずっと出られなかったのって、
そう言う理由だったんだ……
「……ね、ねぇ、あなた黒い騎士知ってる?」
リルメスちゃんは話を聞き終わったら、
さっきの黒い騎士のことを聞き始めた。
「もちろん知っておるぞ、お主ら出遭ったな?
青めなお嬢ちゃんは怪我をしたのじゃな……
無理もない、奴は上級で死族の暴野だ」
死族……? 初めて聞くかも……
「なによそれ、初めて聞く種族だわ」
「まぁ有名の中でも無名じゃ。
どっちなんじゃって話じゃがな、ホッホッホッ」
テグトトさんは笑ったあと、
顎から伸びる長い髭をまた触りながら話し始めた。
……ちょっとふわふわしてそう。
「あやつにはお嬢ちゃんたちじゃまず勝てん。
じゃが……言ってしまえばあやつより強い暴野は、
おそらくこの階層にはおらん。
もちろん主を除いた場合じゃがな」
良かった……あれより強いのがうじゃうじゃいたら、
絶対生きて帰れないよ……死んじゃうもん。
「しかし……お嬢ちゃんたち、失礼じゃが歳は?」
わたしとリルメスちゃんはそう言われたから、
ついでに名前まで紹介することにした。
「九歳で、その名前はフリィア・サタニルドです」
「あたしも九歳、リルメス・レクセト・ボルワールよ」
「ホォッ〜? ボルワール家……なんとまぁ……
まさかお嬢様だったとはのう……驚きじゃ」
「変に緊張しないでよ。もうグラバとケルエタだけでいいの、あんな口調の硬いのは二人で十分よ!」
テグトトさんは髭を触るのをやめて、
わたしたちに一つ質問してきた。
その質問は……ちょっとわたしたちにとっては、
なんだか気まずいというか、困る質問だった……
「領主の一族であるリルメスお嬢様と、
そのお友達? の、フリィアお嬢ちゃん。
お主ら聞くが……なぜここにおる?」
「「!!」」
「えと……その……なんでですかね」
「ま、迷って入っちゃっただけよ!!」
……わたしたちのことは全部わかるみたいな、
そんな感じの目で見られちゃった。
「ホォオッホォッホォッ〜!
若気の至りじゃなぁ〜っ。家出か?
それとも冒険とかか? 我もよくしたのう〜」
「違うわよ! あなたを助けに来たの!」
「……なんと、この我を?」
「そうよ!」
リルメスちゃんが言い返すようにテグトトさんにそう言ったら、テグトトさんは困った顔になっちゃった。
「我のせいでお嬢ちゃんたちを……
のう……これはただ聞きたいのじゃが、
なぜ貴族でありながら他者を心配するのじゃ?」
テグトトさんがそう言ったらリルメスちゃんは、
胸に手を当てて言ったの。
「あたしが魔法の天才だからよ!!」
「……付け足すと、助けることは人として、
素晴らしいことだと習ってるからです」
「ちょっとフリィ! グラバのそれ言わないでよ!」
ちょっと足りないから付け足したけど……
それを聞いてテグトトさんはわたしたちに背中を向けて、振り返らずに話し始めたの。
「生涯最大の恩……恩を返すためにはまず生きて帰す。
お主らをこの身が朽ちても守りきってやるわい」
テグトトさんのその言葉に、わたしとリルメスちゃんは顔を合わせて頷いて、テグトトさんの後ろに立った。
「なら返してもらおうかしら!」
「一緒に帰りましょうテグトトさん……!」
「不帰の大森林から帰ってやるわい!」
「んなぁ〜″テグ″〜偵察係はもういやだぜ〜」
「え?」
「えぁ?」
「おぉ″シルフ″戻ったか」
真っ赤な光の球?
な、なにこれ……ケルエタさんの家族かな?
「ケルエタ……?」
「違うよリルメスちゃん……色が」
「そ、そうよね」
わたしたちがそう話してたら、
そのシルフって呼ばれてる妖精族様は、
こっちに近づいてきて何回か光が点滅してた。
「テグ、女の子を誘拐はさすがに笑えないぞ〜」
「せんわ!! その二人は迷子のお嬢ちゃんたちじゃ」
シルフさんからはテグトトさんを、
テグって呼んでる……仲良いのかな。
「は〜大体九歳だろ? ウチはシルフ。
一応女だから乙女の気はわかるから〜よろしく」
すごい……なんで九歳ってバレたんだろ?
「シルフ……ねぇシルフ! ケルエタって知らない?
同じ妖精族の黄緑色の光の球!」
「さぁな、全く知らね〜。
ウチはそういうのとは関わりがないんでね。
それより……なんで少女が二人でここに……?」
シルフさんはテグトトさんに近付くけど、
テグトトさんは気まずそうに顔をしかめて、
それをシルフさんが見て察しちゃった。
「あっ、ま、そう。まぁあるあるか。
……テグ、とりあえず偵察内容伝えるけど、
やっぱり主の部屋に入るには特殊な魔力が必要。その魔力がなにかはわからないけどね〜」
特殊な魔力ってなんだろう……
リルメスちゃんとかならできないかな?
「むう、とりあえず向かおう。
着いて試してダメだった時に考えれば良い」
「テグっていっつもそうだよな〜」
そんな感じでシルフさんが加わって、
わたしたちは四人で迷宮を進み始めた。
ケルエタさん。心配してるかな……
帰ったら……謝らなきゃ……
でも……あの黒い騎士が普通の敵なら、
主ってどれくらい強いんだろう……
読んでいただきありがとうございます。
明日もこの時間投稿です!




