第十九話 迷宮入り
* *【フリィア視点】* *
不帰の大森林……暗いし怖いけど、
リルメスちゃんは意外に平気そう……
でも、わたしの手を握る力は段々強くなってる。
「リルメスちゃん……霧濃くない?
全然周り見えないよ……」
「だ、大丈夫よ。だって火魔法で……」
リルメスちゃんはそう言って火魔法を詠唱したけど、
魔法の杖の先に出た火球はすぐに消えちゃった。
「え、えぇ……? なんでよ……」
「確か、ケルエタさんが言ってたよ。
ここの霧は魔力濃度ってのが高いから、
火魔法とか雷魔法は出しにくいんだって……」
「……じゃ、じゃあどうしよう。
あたし明かりとか出せないわよ……!」
「ど、どうしよう……くっついて歩こうよ。
その離れたら怖いし……」
困った……明かりがないせいで全然周りが見えない。
今は夜中だし霧も濃いから怖くなってきた……
「ホギャァホギャァホギャア!!」
「きゃぁあああっ!?」
「うわああぁあっ!!」
な、なに? なになになに!!
「と、鳥? 鳥なの?
あんな鳴き声するかしら……?」
「わ、わかんない……こわいよ。
やっぱ帰らない? 今なら……」
「バ、バカ、今帰ったら怒られるだけよ。
絶対救い出して帰るしかないわよ……!」
「え、えぇでも、前見えないしこわいよぉ」
うぅ……もうリルメスちゃんもやる気だし、
わたしも覚悟決めなきゃいけないのかな……
不帰の大森林の奥って土が湿ってるし、
なんか息もし辛いし雰囲気もこわい……それに──
「ねぇフリィ……今……ここどこ?」
「わかんないよぅ……わたしが聞きたいよ」
迷っちゃった……帰れなくなっちゃった!!
「どうしよ……リルメスちゃん!」
「ととと、とりあえず進むわよ!!」
もうとにかくこわすぎて、
わたしはリルメスちゃんにくっついてる。
「くっつきすぎ……!
それにフリィは剣士でしょ!」
「だってこわいんだもん……」
それでもリルメスちゃんは前を進んでくれた。
えへへ……やっぱ頼りになるなぁ……
いや……わたしは頼ってちゃダメ!
剣士なんだからちゃんと守らなきゃ……!
「フリィ、ちょ、ちょっとどうしたの?」
「わたしが前歩くよ……け、剣士だから!!」
「……じゃ、じゃあ任せたわ!!」
よよよよ、よし……よし! よし!!
できるよわたし……わたしならできる!!
「任せてわたしが前は守──」
そう言って前にわたしが出た瞬間……
足元が青白く光って魔法陣が浮かび上がった。
なんの魔法なんだろ……これいきなり爆発とかじゃないよね?
「フリィ!!」
青白い光に包まれた瞬間。
わたしとリルメスちゃんは薄暗い部屋の中に移動してた。なにこれ……どこ? 石壁の部屋っぽいけど……
「えぁ……ど、どこ?」
「……″転移魔法陣″……厳禁魔法の一種よ!」
転移魔法……? なんか聞いたことあるかも。
「転移魔法陣ってなに……?」
「厳禁魔法はだーれも使えない魔法!
言っちゃえば超珍しい魔法なの!
あたしたちはその転移魔法の魔法陣を踏んで、
こうやって転移しちゃったってわけ」
すごい……リルメスちゃんって頭良い!
「詳しいね……わたし全然知らなかった」
「ま、まあこれくらい当たり前よ!
……それより、ここはあれね……″迷宮″ね」
迷宮。世界の至る所にあるって聞いたし、
どこにあるかわかんないらしいけど……
まさか迷宮に入っちゃうなんて……
「迷宮ってどうやって出れるの……?」
「主がいるんだけどそいつを倒したら出れるわ。
でも……迷宮の攻略方法なんて知らないわよ!」
迷宮は攻略法もあんまりないらしいし、
わたしとリルメスちゃんも教えられてない。
「進む……?」
「進むしかないわよ……」
迷宮の中はじっとりしてて、壁中苔だらけ。
そこら中からうめき声が聞こえるし、
さっきの森の中より不気味でこわい……
「フリィ、なんか足音聞こえない?」
「……リルメスちゃん。わたしの後ろに来て」
リルメスちゃんは暴野を知らない。
わたしは結構見たことあるけど……
わたしが前に出た瞬間、ちょっと遠くの壁が崩れて、緑色の肌のおっきな暴野が出てきた。
「ヴァアアアアアア!!!」
「ひっ、な、なによあれ!」
「わかんないけど多分暴野だよ」
「こ、こわくないの? あんな大きいの……」
「うん。後ろで見てていいよ。わたしがやるから」
暴野だとか兇徒はこわくない。
だって、わたしと同じで生きてるから。
「く、くるわよフリィ!!」
「大丈夫、まかせて」
* *【リルメス視点】* *
フリィはずっと大剣を持ってる。
いつ見ても大剣を持ってて……満足そうな顔。
見るたびにその大剣がそばにあって、
あたしはフリィより剣が好きな人はいないと思う。
……こんなにこわいバケモノを前にしても、
あたしは動けないのに……フリィは動けるの。
「フ、フリィ!」
すごい音……バキッって音がしたあと、
その緑の肌色の大きな暴野が持ってる……
なにかしら……丸太みたいなのを斬ってたわ。
「ィイイッ!?」
「っく!」
フリィは大剣で丸太ごと斬り上げたら、
そのまま流れるように剣を回転させて──
一気にそこから振り下ろして、
暴野を真っ二つにしちゃったわ……
「はぁ……はぁ……えへへっ。うまくいった」
「な、え、すごいわ……すごいわフリィ!!」
……フリィって! フリィって!!
「フリィってカッコいいのね!!」
「えっ……えっ……?」
「そんなカッコいいなんて知らなかったわ!!
隠してたのね……すごいわ!!」
フリィの動きってこんな早かったの?
フリィってこんなに大剣を軽く振れてた?
フリィってこんなに早く動けたの?
「なーんだ。こんなに強いなら大丈夫ね!
安心して任せられるわ!」
「うへへ……そんな頼られると〜
でも嬉しいなぁ……えへへ」
この前、ケルエタから言われたけど、フリィって魔法は全然ダメだけど剣の才能はすごいって言ってたわ。あたしは魔法の天才でフリィは剣の天才。
こんなの負けるわけないわね!!
「で、でも多分今のは下級だよ。
もっと強いのも出てくるし……
リルメスちゃんも一緒に戦ってほしいな」
「あったりまえよ! あたし今すっごい自信あるわ!
フリィと一緒に戦えば敵なしよ! 行くわよ!」
* *【ケルエタ視点】* *
ピコン。
【*死のリストが更新されました】
「ん……」
ピコン。
【*死のリストが更新されました】
「……ん、あぁ?」
ピコン。
【*死のリストが更新されました】
「……? ……!? ……はぁ!?」
ピコン。
【*死のリストが更新されました】
「なんだこれ、なんだこれなんだこれ!!」
うるせぇよ! 死のリストの通知音!
それよりなんでだ!? フリィアちゃんは!?
「いない……おいおいおい嘘だろマジで!!」
死のリストは? めっちゃ変わってるじゃねぇか!
おい待て黄色文字大量に加えて後半赤文字だぞ……
リルメスも対象内だし……でも誘拐とかじゃないな。
だって、誘拐だったらここまで更新されない。
それに死のリストの内容は暴野の由来だ。
待てよ……なんだ。なにが原因だったんだ。
わかんない……わかんない……
あぁどうしようどうしよう……!!
「護衛だっていたはずだろ……
クッソ……マジで急にくるよなぁ!!」
とりあえずグラバさんを頼ろう……!
俺一人じゃどうにもできないし、若干パニックだ。
落ち着きたい……いやでも焦るだろ。
あぁ、なにが悪かったんだ……!!
「ふー、ふー……落ち着け。
考えろケルエタ……考えろ」
俺は焦りながらもだったがとりあえず部屋を出た。
グラバさんに報告して二人を探すしかない。
もうこんなの若干賭けだ……
頼む……無事でいてくれよ二人とも……!!




