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花道闊歩 -異世界ガイドとして死ぬ運命の少女たちを幸せな老衰エンドへ導きます-  作者: ガリガリワン
第一部 第三章 不帰の大森林編

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第十八話 自由へ道連れ

 

 星断暦(せいだんれき)840年11月12日。


 今は季節じゃほぼ冬みたいな秋。

 緑峰(りょくほう)大陸の冬は結構寒い。

 最近は雪も少し降り始めてる。


「ふぁ〜っ……眠いわケルエタ」

「なんでですか……授業中ですよ」

「眠いものは眠いのよ!」


 大体転生から2年と2ヶ月。

 ここにきてリルメスに″伸び悩み″が発生した。


 ……逆に今までならなかったのが不思議だ。


「上級魔法ってややこしいから嫌い〜」

「そ、そうですけど……一つできてるんですし、

 リルメスお嬢様なら余裕でもう一個できますよ!」

「ずっとできてないんだから適当言わないで!」


 ごもっともだ。

 リルメスの言う通り確かに上級魔法はむずい。


 才能の壁の先とも言われる上級魔法使いは基本、

 中級魔法二割、上級魔法八割で戦う。


「フリィアちゃんも頑張ってるのにいいのですか?」


 意地悪だがこれは必殺技だ。

 リルメスはフリィアちゃんに対して、

 完璧なお姉ちゃん的存在を演じようとしている。


「……フリィはその……関係ないでしょ」

「そうですかねぇ? 追い越されちゃいますよ」


 俺は窓から中庭を見下ろす。


 そこには大剣を(ふる)いエルメットさんに向かっていく、

 剣士らしくなったフリィアちゃんがいた。


 体型はほとんど変わりないが、動きがスムーズ。


 これは俺から見たフリィアちゃんの評価だが、

 中級の枠からはそろそろ抜け出しそうだ。


「フリィアちゃんに越されたらどう(せっ)するんです?」

「……もぉ〜っうぅう! なによぉ〜っ!」


 リルメスは心底悔しそうに言って、

 椅子に座って机の上にある本を広げた。


「やる気出ました?」

「当たり前よ!! 越されるのは嫌!

 だから早く教えなさい!!」


 ……なんというか、ほんとわがままだな。

 まあ、悪い子じゃないし可愛いから、いっか。


「はいはい……それじゃあ寝ないでくださいよ?」

「ふふん。今日はたくさん寝てきたから大丈夫!」


 ……だがまぁ、なんでやる気がなくなったんだ?

 ちゃんと寝てるはずだし……なんでだ?



 * *【リルメス視点】* *



「……」


 今、あたしは悪い子をしてるわ。

 時間は3時、ふっふっふっ……

 今日が″あの計画″の実行日よ!!


「よし……」


 あたしはこの2ヶ月ずっと夜更かししてきたわ。

 こっそり起きてみたの。


 なんてったってグラバが言ってた不帰(ふき)の大森林、

 ずっと気になってたけど……助けを求めてる人がいるなら、助けに行けば褒められるでしょ?


 気になることも知れて……


『リルメスお嬢様はやはり天才ですね』

『リルメスお嬢様は偉いです〜』


 グラバとケルエタもあたしを褒めるわ!


 屋敷の見張りの人たちの動きもわかってる。

 フリィを迎えに行って屋敷を抜け出せば完壁!



 ま、あたしの計画は完璧で誰にも見つからずに、

 フリィのいる部屋にやってこれたわ。


「フリィ……! 起きて……!」

「ん……」


 ……フリィは起こしても全然起きないのよね。

 どこでも寝るし全然起きないから、あたしは一つ、

 フリィに対する必殺技を持ってるわ!


「起きなさいフリィ……!」

「ぶっ、っくあぁ……?」


 フリィはくすぐりに弱いからすぐ起きるわ。


「そ、それやめてリルメスちゃん……」

「だって起きないから……それより、

 今日はついにあの日、支度して行くわよ!」


 フリィはまだ眠そうだけど、

 まあそのうち目なんて覚めるわよね。


「そっか、もうそんな日だったんだ……

 ね、ねぇ、バレないかな」

「バレないわよ。あたしが言うんだから大丈夫!」


 ほんと心配性ね……フリィは弱気なのよ。


「ほら、早く支度しなさい。

 あんまり遅いと置いてっちゃうわよ?」

「ま、まって〜。すぐ準備するね……」


 フリィの準備は結構早かったわ。

 部屋を出るタイミングもバッチリだったし、

 あたしたちは屋敷を抜け出すことに成功したわ!


 こんな夜中に外に出るなんて初めて。

 ……ちょっと怖いけどフリィがいるから、

 なんだかんだ心配ないわ。


 それより……不帰(ふき)の大森林、

 どんなところかはもう知ってるわ。


 ケルエタがよく話してくれたもの。


 まだ入ったばかりのところは普通の森だけど、

 深くに入ると誰も帰ってこれないらしいの。


 その……えーっと……えー……


「フリィ……誰が帰って来てないのかしら」

「え、覚えてないの?」

「う、うるさいわよ……」


英級(えいきゅう)魔法使いのテグトトさんだよ」


 そう、テグトトって人よ!

 その人が帰って来てないからあたしたちが見つけるの! 危険危険って言ってたけど大丈夫よ。


 だってあたしたちは二人いれば最強だから!


「そう言えばフリィってよく大剣持てるわよね」

「うーん……重たいけど、慣れちゃった」


 フリィは剣士志望だけどなんで大剣なのかしら。

 大剣の女性剣士なんて全然聞かないわよ?


「慣れるものなのね……腕とかまだ細いのに、

 どっからそんな力出してるのよ」

「えへへ……秘密」


 ……フリィってあたしのことどう思ってるのかしら。

 あたしにはよく話しかけてくれるけど、

 逆にあたし以外とはあんまり喋らないのよね。


 ……それだけあたしが頼りになるってことね!!


「どうしたのリルメスちゃん。嬉しそうだけど……」

「ん? なんでもないわよ!」



 あたしがこの2ヶ月間、魔法につまづいた理由。

 それは今日のために準備してきた魔法のせいよ。


「フリィ、森に行く方法が何か知ってる?」

「歩いて行くんじゃないの?」

「ぶっぶー、ふふっ、あたしにとっておきがあるの!」


 ケルエタはあたしが魔法につまづいてるなんて思ってるけど、それは難しい魔法を秘密で練習してたから!


「そのとっておきって……?」

「見てなさい!」


 上級魔法の中でもすごく難しい風魔法……

 あたしは水とか氷属性が得意なんだけど、

 これは無理矢理覚えたわ。


凱旋(がいせん)の刻、風雲(ふううん)の如く夢の落日(らくじつ)よ。

 人々が天に()う現実を顕現(けんげん)するのだ。

 ()に従え風の精霊よ! 風幻操(ウフルメア)!」


 鞄から取り出した絨毯(じゅうたん)に向かって、

 あたしは魔法の杖を向けながら詠唱したわ。


「す、すごい! 浮いてるよ!」

「この上に乗って……うん大丈夫よ!」


 この魔法は物を浮かせて操る魔法。

 難しい理由は人を乗せる魔法だからよ。


 ただ物を浮かすより何十倍も難しいんだから!


「うわぁ……乗れてる……魔法ってすごいね」

「あたしがすごすぎるってのもあるわよ」

「すごいよリルメスちゃん!」

「ふふん。さぁ行くわよ! 飛ばしちゃうんだから!」



 * * *



「一瞬で着いちゃったね……」

「ま、まぁ飛ばしたもの……」


 大体4分くらい? 飛ばしすぎたわ。

 何回落ちかけたかわからないし……加減が難しいのよ……落っこちたら死んでたわ……


「足震えるわね……プルプルするわ」

「やっぱり速度出しすぎだったんだよ……」

「だって……なんか飛ばしたくなるでしょ?」


 あたしとフリィは地面に足をつけて、

 森の中に入って行くわ。


 いつでもあたしたちは戦える状態にしてるし、

 いきなり襲われても大丈夫ね!


「フリィってその大剣、いつもピカピカよね」

「大切だからさ……わたしの宝物……」

「ふーん……あたしも魔法の杖持ってるけど、

 そこまで愛着なんてないのよね〜」

「そうなんだ……でもきっといつか見つかるよ」


 ……この魔法の杖もグラバから貰ったけど、

 べつに特別感もないのよね。壊れたら替えるし。


「ま、あたしに似合う杖だったらなんでもいいわ」

「リルメスちゃんの魔法に杖ってカッコいいよね。

 赤い宝石……綺麗だし似合ってるんじゃないかな」

「え? えぇ〜? ふふ、そう?

 なんだか大切にする気が出てきたわ!」



 不帰(ふき)の大森林。

 ケルエタが危険だってずっと言ってたし、

 グラバも行かないでって言ってたけど……


 今のところなんもないわ、

 これならすぐ帰れそうね。


 霧とかがちょっと濃いけど……

 ま、あたし火魔法使えるし大丈夫。

 視界なんて照らせば見えるのよ。



【*死のリストが更新されました】


【フリィア・サタニルド

 リルメス・レクセト・ボルワール

 暴野(ぼうや)に襲われ死亡+99】

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