第二話 異世界転生と初仕事
目覚めたら俺は薄暗い森の中だった。
……え。こんな感じなの?
神殿とかないし、本当にただの森じゃん。
いや……まあこんな森の中で早速だが、
俺は対象の女の子二人を見つけなきゃいけない。
てか、特徴くらい教えろっての……
あの眼球意外に適当な仕事するタイプだな?
俺は絶対に一緒に働きたくはないな。
「……どうすっ!?」
日本語じゃん!! 俺日本語話してますよ!!
そう言えば……待てよ。全然記憶があるぞ……
なるほど……そういう感じの転生だな?
俺は辺りを見渡した。
本当に木ばっかで言うならば……
そうだな。富士の樹海って感じだ。
俺の視界に腕とか足は見えない。
それに目線の高さ的に浮いてるな。
俺は光の球として転生した。身体を動かす感覚は、
なんと言うか超軽い水の中で泳ぐ感覚。
ちょっと楽しくてしばらく動いていたいが、
こうしてるうちに死なれたら困る。
「うぉおっ!?」
振り返ったら青色のゲームのステータス画面みたいなのが浮かんでた。そこには二人の女の子が死ぬタイミングがびっしり書かれてる。
「多すぎだろ……直近じゃ片方が七歳か……」
そもそも女の子は何歳なんだ?
七歳以下なのは確実だが……
「+ー++……!! +ー++!!」
結構遠くから声が聞こえた。
子供の声だ。多分女の子の声。
でも何語だ? 日本語じゃない。
日本語じゃないならわからな……
いや……違うわかる……俺わかるぞ!!
『スキル二つ目♪
異世界に記されている物の知識全てを得る。全知脳』
【全知脳発動】
「誰かぁっ!! 助けてぇっ……!!」
女の子の声がわかるようになった。
日本語じゃないけど日本語みたいにわかる……
助けを求めてる女の子の声……
俺はふと青い画面が視界に入った。
……七歳、熊族に襲われて死亡。
真っ赤な文字……明らかに他の文字よりやばそうだ。
え? 待ってじゃあ、今の声ってもしかしたら。
「誰……ぅああっ!!」
待って!! 早い早い!!
俺はめちゃくちゃ焦った。
なぜならここで死なせたら仕事失敗。
俺はそうなったらこの姿で転生権もなくなる。
つまり、一生この姿になっちまうわけだ。
「待てよ……っ!!」
俺は走る感覚じゃなくて全力で泳ぐように動いた。
まあ不細工な飛行で、視界が揺れまくって自分の動きがはちゃめちゃなことを理解できる。
だけど……そんなの今はどうでもいい。
『スキル三つ目♪
誰であろうと気絶させる魔法、確絶魔法』
誰だって気絶させられる魔法……!
『でも一年に一度しか使えないよん』
いきなり使うなんてこれからが不安だが、
もう使うしかない! あの女の子か!!
「ひっ……! いやぁっ……」
その女の子はガリガリの細い身体だった。
酷く息が切れてて肩が大きく上下してる。
身体中震えながら地面に座り込んでるし、
表情の感じからして絶望って感じだ。
女の子の前にいるのはめちゃくちゃデカい熊。
全長4mのヤバすぎるバケモノ。
普通ならここで喰い殺されてたのか……
でも、良かったな。俺がいるから死なないぞ。
「うぉおおおおおっ!!」
俺は速度を上げて熊に激突した。
べつに衝突自体に威力はない。俺はめちゃくちゃ軽いっぽいからな。でも真価は他にある。
「ッグォッォォッ!!」
俺が当たったところがクレーターのように凹んで、
熊はよだれを飛び散らせながら白目になって倒れた。
完全に気絶してる。威力がすげえ……
てか、どうやって発動したんだ?
「……っ。……?」
女の子は怯えながら目を開けた。
多分女の子からしたら高速で飛んできた光の球が、
熊をぶっ倒してるっていう状況だ。
まあ……わけわからんだろうな。
しかも俺はスキルを使うと、
身体が見えなくなるから一時的に光が消えた。
声も出せないらしいし、二週間はこれか。
「……え? な、えぁっ?」
なんとか一安心……どうにかなった。
ふう……これが初仕事ですか。
やってみると……意外にやりがいあるなぁ!
少なくとも居酒屋より全然面白い。
女の子は困惑しながらも立ち上がって歩き出した。
多分家に帰るんだろう。青い画面上に次の死因は溺死って書いてある……
まあ、とりあえず女の子についていこう。
* * *
俺は透明になって女の子についていく中、
この世界についての知識を整理し始めた。
まず、この世界には当たり前だが魔法がある。
異世界転生なんて言うんだ。ファンタジーだよな。
生きる者全員が魔力を持ってて、
なんなら全てに魔力が宿ってるらしい。
種族ってのも多くいて一番多いのが、
人知族。言っちゃえば人間だ。
人知族って名前だけあってこの世界の生物の中じゃ、
飛び抜けて頭が良くなりやすいって話だ。
でも結局、人間も頭は良くなりやすいけど、
当人の努力次第だしなぁ……全員賢くはないはずだ。
ちなみに俺がさっきぶっ倒した熊は、
獣族っていう総称の中の一つに該当するっぽい。
獣族と魔族は知力を持つ奴と知力を持たない、
言わば野生動物みたいなのもいるらしい。
ま……細かいことはもっと落ち着いた時にしよう。
この女の子の情報を手に入れるのが最優先だ。
便利なことに、一度見たり聞いたりしたら、
俺は忘れることが絶対ないらしいからな。
できるだけ、たくさん情報は欲しい。
『スキル一つ目♪
一度見て聞いたことは必ず覚える。完全記憶』
一度頭に入れちまえば忘れることはない……
てか、やっぱりあいつの話し方うざいな。
もうあんま思い出さないようにしておこう。
「……うぅ」
それにしても……この女の子──
マジで痩せてる。ガリッガリだ。
これちゃんとご飯食べてないだろ。
そうか……人が死ぬ原因なんてたくさんある。
俺はそれを全部補わなきゃいけない。
って思うと……次の七歳で溺死ってなんだ?
しばらく歩いた。大体5km以上は歩いてる。
森を抜けて平原に出たら村が見えた。
結構規模は大きい。真ん中にめっちゃ大きい家があって、それを囲うように家が大量に生えてる。
女の子は早歩きで村に走り始めて、
村についたらボロつきあげた小屋みたいな……
なんというか可哀想な家に入ってった。
「ただいま……」
「ぁあっおかえりぃ……大丈夫だったかい?」
「うんっ……″サルェタ″さんが助けてくれた」
家の中は案の定って感じで、
置いてある家具から小物までボロボロだった。
家の中には腰の曲がったお婆さんだけがいて、
意外に日本と同じで家の中は土足じゃない。
靴は女の子のとお婆さんのだけで二人暮らしか。
「サルェタ族……あの森にいたんだねぇ。
やっぱり″フリィア″は運がいいねぇ」
【全知脳発動】
サルェタ族。簡単に言うと妖精。
知力はあるらしいけど他種族と交流は少なくて、
種族自体が閉鎖的な集落で過ごして──
……いや、それよりも女の子の名前が出たぞ。
フリィア。なるほど、フリィアね。
「光る妖精さんが熊を倒してくれたの……」
はえー、普通にこの世界でも熊って言うんだ。
「わたし……妖精さんがいなかったら……ぐすっ」
えぇ? 泣き出したぞ。
……ううん、普通か。だってまだ子供だ。
あんなの俺だって泣くかもしれない。
「よぉしよぉし……大丈夫だよぉ。
今日はフリィアの好きなサェーヤにしようかぁ」
サェーヤ……? なんだ知らないぞ。
おい、異世界の知識なら全部知ってるはずじゃ。
「いいの……!? お婆ちゃんのサェーヤ大好き!」
……はっ、なるほど?
オリジナル料理か……!
料理系に関しては初耳とかもあるんだな。
意外になんでもかんでも知ってる状態じゃないのか。
* * *
俺はその日。とりあえず天井付近で二人を見守りながら、夜になって目を閉じたら寝てた。
こんな姿でも寝れるのかと驚きだが、
なんだかんだ異世界転生一日目無事終了。
青い画面の情報じゃフリィアは七歳のうちに、
あと十回以上は死ぬ可能性がある。
全部が100%死ぬやつなのか……
確率で死ぬやつなのかがわからない。
直近じゃ溺死が一番怖い。
……水場に行く時は注意しなきゃな。
とりあえず二週間は乗り越えないといけない。
じゃないとガイドすらできない。
早速、今が踏ん張り時か……
なんだ……忙しいっちゃ忙しいんだが、
楽しい。本気で今、働いてる気がする。
案外悪くないかもな……よし、転職したばかりだ。
こう言うモチベは大事にしよう。
頑張ろう。世界は違うけど……
やっと見つけられた気がする。
幸せにして転生してやる。
二度目の人生を味わうためにな──




