第十七話 2年間
異世界転生して2年が経った。
「大剣に振り回されてる感が減ってきましたね!
その調子ですよフリィアさん!」
「はい!」
フリィアちゃんに先生をつけた。
先生はエルメット・ラクセラルドさん。
上級剣士で地剣流の人知族。
屋敷じゃグラバさんを除いて一番強い人だ。
「はぁっ!!」
この人を誘拐事件後に先生に選んで正解だった。
俺は知識面で活躍はできるが、
結局実技はやってなんぼだ。
「っ!?」
エルメットさんは上級剣士で超強い。
だけど最近、フリィアちゃんの攻撃が強くなってきて、エルメットさんは攻撃を避けるようになった。
「赫剣流らしくなってきましたね……
もう準上級になれそうじゃないですか〜」
「えへへ、そ、そうですか?
まだなれないですよ〜」
フリィアちゃんは大剣使いだから、
大剣とかのためにある流派、赫剣流を選んだ。
力強い攻撃ができるようになったが、
実戦じゃ当てなきゃ意味がない。
まだまだ動きは遅いし、
二年かけてもまだフリィアちゃんは中級だ。
「星々よ。問いかけに答えし星々よ!
その溢れ出す煌めきを我が身に授け、
災難を押し流したまえ! 星水衝!」
一方、リルメスもちゃんと成長してる。
誘拐事件後、リルメスは一回首都に帰ることになったんだが、お得意のわがままで結局屋敷に残った。
どうやらフリィアのことが気に入ってるみたいだ。
あの頃は離れる心配で頭を悩ませてたが、
ここにきてわがままに救われた。
「さすがですリルメスお嬢様。
中庭でのお稽古ではそろそろ規模が見合いませんね」
グラバさんの言う通りリルメスの魔法は、
二年で威力が段々と上がってきて、
そろそろ中庭じゃ狭くなってきた。
現に今放った星水衝は上級水魔法だ。
水が煌めきを帯びながら衝撃波の波紋を作り出す魔法、ゲームで言う強力な範囲攻撃って感じだ。
今はあの上級魔法しか使えてないが、
この歳で一つ使える時点でかなりすごい。
「あったりまえよ!! あたしは天才だから!!」
「ですが、お屋敷の壁にヒビがまた増えましたね……」
二人は九歳になってどんどん強くなってる。
一般常識だとかも色々教えてるし、
いきなりサバイバルが始まってもどうにかなる。
そのせいか、最近は全く赤文字も出なくなって襲撃もほぼ起きてない。結構安定してきたから俺も楽だ。
2年も経つと柑鮮の人気も落ち着いて、
最近はたまに作っては売る程度になってきた。
毎月のお給料は変わらず白金貨6枚。
4枚は武具店のムキムキおじじに払って、
2枚はフリィアちゃんの婆ちゃんに渡してる。
意外に金を使う機会はない。
なにせ生活費は屋敷が全負担だからな。
最近というかここ2年間。
1日のスケジュールが変わった。
まず基本的にずっと稽古ばっかりだ。
二人が可哀想だと感じそうだが、二人はなによりも稽古が大好きだから楽しそうにしてる。
剣士は剣を振るうほど強くなって、
魔法使いは魔力の底を叩くほど強くなる。
単純に言ってるだけでもっと奥は深いが、
二人はこの二つを確実に毎日こなしている。
大人の戦士だってここまで真面目にやるやつは少数、
それに子供の頃の成長度は将来的な強さに繋がる。
今、ああして鍛錬してる二人は、
大人になってから鍛えた戦士より何十倍も強くなる。
こんなこと知れたのも全知脳のおかげだ。
* * *
戦争まであと3年。
3年後にこの国は戦争状態に入る。
「フリィこれ食べて!」
「お嬢様好き嫌いはおやめくださいませ!」
「だって美味しくないんだもん!!」
こうやって平穏に過ごせる時間も限られてる。
……戦争が起きるとわかっていれば、
二人を連れてこの大陸を離れれば良い。
と、常々思うんだが……不可能だ。
まずリルメスはこのリアバダ領の領主一家の一員。
フリィアちゃんは連れ出せてもリルメスは無理だ。
それに大陸間の移動はかなり金がかかる。大剣の金を払いながらも金を貯めるのは現実的じゃない。
「フリィアちゃんも受け取っちゃダメですよ?」
「わ、わかりましたケルエタさん……ごめんね」
「もーなによ〜!!」
俺がするべきなのは戦争が起きることを、
この領じゃなく、グロワール王領に伝えること。
「グラバ様、リアバダ様からのお手紙です」
「今回はエルメットさんが渡しにくるんですね」
「たまには良いかと思いまして」
……あと3年でそこまでいけるか?
この領の領主リアバダと仲良くなって、
グロワール王国の王とも仲良くなる。
現実的じゃないな……あの眼球が戦争で確実に死ぬ運命って言ってた理由がよくわかる。
リルメスが王族の娘ならワンチャンあったかもな。
「グラバさん手紙って領主様からです?」
「話してませんでしたか? そうですよ。
月に一度、リルメスお嬢様の様子を手紙にして、
″首都レクセト″にお送りしているのです」
俺は手紙の存在を知ってはいたが、
そういう感じの手紙だったのか。
首都レクセト。リアバダ領の中心地。
ちなみにまだ一度も行ったことがない。
「リルメスちゃんは寂しくないの……?
お父さんとかお母さんとか……」
「最初は寂しかったけど……今は寂しくないわ!
だってフリィもいるし、むしろ心地良いわね!」
さて、手紙が来るとなればその内容は気になる。
「何書かれてるんです?」
「せっかくだし読み上げましょうか」
お、いいねさすがグラバさん。
手紙の読み上げとても助かる。
【手紙の内容】
『グラバ、リルメスの近況はこちらも知れた。
元気に毎日楽しく過ごしているようで、
息子と余はとても安心しているぞ』
こんな口調でグラバさんは読み上げてないが、
手紙の文章的に領主らしい人っぽいな。
『さて、本題だが今回は少し頼みがある。
およそ三ヶ月前だったか……?
そちらにグロワール王領の近衛兵である、
″テグトト・ユオラデール″が向かったはずだ』
【全知脳発動】
……英級の魔法使いか。
グラバさんの一個下くらいの実力……
『しかしまだ帰ってきてないのである。
時期としてはすでに帰ってきておかしくない……
ちなみに任務先は不帰の大森林。
まあ案の定だ……本格的な捜索はこちらが行うが、
グラバの方で少し手がかりなどを探しておいてくれ。
なにせ……王族がうるさくてなぁ……』
グラバさんはそこから先の内容を読むのをやめた。
多分あの感じからして愚痴が始まったんだろう。
「という感じでございます。
いつもは近況報告ですが頼み事をされましたね」
「不帰の大森林!! 気になるわ!!
あたしたちでその人を見つけてあげましょ!!」
「捜索自体は私たちは行いませんよ。
リルメスお嬢様も変に興味を持たないでください」
英級の人が行方不明か……
改めてあの森やっぱやばいんだな。
「なによ〜あたしとフリィなら見つけられるけど?」
「はははっそうですか」
「もう適当に反応するのやめなさいよっ!!」
まあ……この件は関わらないほうがいい。
どう考えたって赤文字が増える気がする。
せっかく今は緑文字ばっかで楽なんだ。
仕事っつっても……最近は遊びだな。
べつに怠惰になったわけじゃない。
ただ……なんだか人生ってのを楽しんでる。
仕事を終わらせれば俺は三度目の転生で、
人として生まれ変わるんだ。
だから……楽しめてるのは意外だな。
「リルメスちゃんご飯まだ食べ終わらないの……?」
「え? フリィもう食べ終わったの!?」
「うん……わたし食べるの早いから……」
「……じゃ、じゃああたしもすぐ食べ切るわ!
フリィが暇しちゃかわいそうだからね!」
今思い返すとここで気づくべきだった。
転生した頃の刺激ばかりの日常生活はもうない。
毎日が平凡に過ぎる頃ほど……警戒はしてる。
俺は前回みたいなヘマをしないように、
死のリストもちゃんと確認してた。
なのに……なのにだ──
おそらく戦争前最後の″大ピンチ″が訪れる。
全ての原因はこの日の手紙の内容だった。
読んでいただきありがとうございます!!
本日、日間異世界転生の方でランクインしてました!
本当にありがとうございます!
これからも毎日18:15投稿続けていきます!




