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花道闊歩 -異世界ガイドとして死ぬ運命の少女たちを幸せな老衰エンドへ導きます-  作者: ガリガリワン
第一部 第二章 天才お嬢様編

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第十五話 最強執事の拳

 

 さて、グラバさんが率いる十人以上の屋敷の戦士たちと共に、俺は二人を攫った兇徒(きょうと)の拠点に着いた。


 見張りの戦士はまだこっちには気が付いていない。


「では……一気に潰します」


 グラバさんの掛け声と共に、

 一人の戦士が魔法の杖を構えた。


蒼鳥(アグナラ)よ、その群青(ぐんじょう)極めし一部を、

 我へと授けたまえ……! 水蒼刺(アグルマード)!」


 一人の魔法使いが中途詠唱(ちゅうとえいしょう)で魔法を放った。


 魔法は杖とかの先端を中心に魔法陣を展開する。

 そこに詠唱をしてから杖を突き出すと、

 先端の向く方向に向かって魔法が放出されるんだ。


 今、放たれた魔法は属性魔法の水に属する中級魔法。

 水を槍の先端のように変形させて、

 高速で発射して相手を突き刺すシンプルな魔法。


「グォエッ!?」

「お、おいどうしたァ!」


 その魔法は、拠点付近にいる見張りの兇徒(きょうと)の頭を……

 容赦なく撃ち抜いた。わかっていたが、いざ見ると結構くる。ここは異世界で倫理観はかなり違う。


 死ぬこと自体珍しくないし、相手は兇徒(きょうと)

 殺される覚悟で生きてる奴らだ。


 でも……俺は日本人、死ぬ瞬間なんて……

 慣れてるわけないし普通にビビる。


「そ、そのグラバさん……やっぱり皆殺──」

「言わずともでしょう? 相手は兇徒(きょうと)……

 その命を絶たねば示しがつきません」


 この前来たモグラ……じゃなくて土獣族(どじゅうぞく)

 あいつも捕まえられた後、あっさり殺されてた。


 厳しい世界だ……つくづくここは異世界なんだな。



「グラバさん見張り全滅です」


 数分もしたら全員魔法で頭を撃ち抜かれて死んだ。

 屋敷の戦士たちは中級から準上級、対して相手は大体が寄せ集めの下級から中級レベル。


「では、突入しましょう」


 今は真夜中、見張りの奴が洞窟の中に情報を伝えられなかったから、中の兇徒(きょうと)は全員寝てる。


 案の定洞窟の中に入ったらめちゃくちゃ静かで、

 グラバさんは辺りを見渡しながら道を進む。


「……グラバさん。私は二人を探してきます」

「ケルエタ様、戦士を二名つけますのでお気をつけて。(わたくし)は親玉であろう者を狩ってきます」


 明確な殺意、凄い圧だ。

 人物に対しても全知脳(ぜんちのう)は発動するが、

 詳しい過去まで何かに書いてる人は少ない。


 今度、グラバさんの過去とかも聞いてみたいな。


 まあそれより、

 今の話通り俺とグラバさんは道を分かれた。



 * *【グラバ視点】* *



「″エルメット″さんたちは牢屋の解放をお願いします」

「グラバさんはどうするんです?」

「リーダー、言わば親玉を″殺します″」


 エルメットさんは屋敷の護衛の中で(わたくし)を除けば一番の実力者、上級剣士ですので負けはないでしょう。


 (わたくし)は道を進み、奥に見える扉の前へと立つ。


「……?」


 (わたくし)が扉に手をかけた瞬間、剣が飛び出してきた。


 扉を貫いて(わたくし)の顔を貫こうとする行為、

 こちら側の気配を読めるほどの兇徒(きょうと)……


「ッチ、外しちまった」

「多分手練れが来たな」


 (わたくし)は剣を避け少し離れると、

 扉を蹴破って二人の男が出てきた。


 一人は獣族(じゅうぞく)、巨体だった。

 もう一人も獣族(じゅうぞく)で小柄……


 見るからにパワータイプとスピードタイプ。


「どうも、何用かはそちらがわかっていますよね」

「あぁ、俺たちを殺しに来たんだろ?」

「でも残念、あんた運が悪すぎるな」


 妙に自信が大きいですね。


「俺たちは準上級(じゅんじょうきゅう)兇徒(きょうと)……しかも二対一だ」

「おっさん泣いて謝ったら許してやってもいいぞォ!」


 (わたくし)はその言葉を聞いて魔法の杖を取り出した。


「そうですか。ではかかってきてください」

「魔法使い……はっ、じゃあ詰みだよお前」

「死ぬか死ぬ。二択が一択になっちまったなァ〜」


 緑色の肌を持つ小柄な獣族(じゅうぞく)が先手を打ってきた。

 魔法使いというのは基本剣士との戦闘は不利、

 しかもこの状況では一対二……



 緑色の肌を持つ獣族(じゅうぞく)は、

 短剣にて(わたくし)を切りつけにきました。


「ッチ……」

「なにやってんだ″エドマ″」

「うるせェ〜″ラクト″、ミスっただけだ」


 なるほど、巨体を持つ獣族(じゅうぞく)はラクト。

 この小柄な獣族(じゅうぞく)はエドマというのですね。


 確かに動きは速い、準上級でも上位でしょう。



「次で仕留めてやるよ。おっさんッ!!」


 素早い動きに合わせた連撃(れんげき)……

 大抵(たいてい)はこの攻撃で倒せたのでしょうが、

 私は生憎(あいにく)大抵(たいてい)の戦士より強いのです。


「っえ?」


 身体強化魔法。

 練度によって身体は岩のように硬くなり、

 それは生半可な攻撃を弾く。


 身体強化魔法は特殊であり魔法陣が存在せず、

 詠唱などもない唯一の魔法。


 (ゆえ)に予測は全くできなかったのでしょう。


 (わたくし)は杖を持たない手で剣を拳で弾きました。

 顔は困惑一色(こんわくいっしょく)、非常に驚いている様子。



「死にゆく貴方へ告げましょう。

 (わたくし)の等級は準俊級(じゅんしゅんきゅう)……魔法使い兼、拳戦者(けんせんしゃ)です」


 (わたくし)は拳に身体強化魔法を乗せ、

 渾身の一撃にて勢いをつけたまま、

 こちらへと来るエドマという兇徒(きょうと)の顔面を殴った。


「嘘ッ、ヴォ″ッ″ォ″!!」


 上から殴ったせいで地面にめり込んでしまいました。

 もう一人のラクトという者は戦意を喪失……


「あっまま、まって! まってくれ!!

 ぜんぶやめる! やめるから!!」


風山(ウィルンメド)


 中級風魔法、単音詠唱(たんおんえいしょう)にて(わたくし)は斬撃を放ち、

 ラクトという者の首を切断。容赦はなしです。



「さて……ケルエタ様は上手くいきましたかね?」



 * *【ケルエタ視点】* *



「……二人とも起きてます?」


 俺が牢屋を覗くとフリィアとリルメスがいた。

 怪我はなさそうだし服が少し汚れてるだけだ。


 ……ていうか余裕で見つけられたな。

 なんか……洞窟内にほとんど人いなくて、

 あいつら全員ここがバレてないと思ってたらしい。


 だから全員少し離れた部屋で寝てて、

 二人を探すこと自体めっちゃ楽だった。


「んん……」

「ケルエタ……? ケルエタ!!

 来てくれたのね!! グラバは!?」


「グラバさんはちゃんといますよ。敵の親玉をコテンパンにしに行きましたので、救出は私に任されました」


 育ちの差か……フリィアちゃんは熟睡(じゅくすい)してるが、

 リルメスは全然寝ないで起きっぱだった。


 一応護衛として戦士が二人ついてきてるが、

 いらなかったかもな……


「リルメスお嬢様……そのお願いなんですけど、

 フリィアちゃん起こしてくれません?」

「わかったわ! フリィ!! 起きて!!」


 デッケェ声、フリィアちゃんは嫌そうな顔をして目を開けた。


「なぁに……もう朝ですか?」

「もう! 助けが来たのよ!!」

「え、あ、ケルエタさん……!」


 フリィアちゃんは嬉しそうに俺の名前を呼んだ。

 元気そうで良かった。二人とも無事だ。


「さて……攫われて色々疲れてると思いますが、

 貴方たちは実は……戦士なんです」


「そ、そうだったんですか!?」

「あたしって戦士なの!?」


 オーバーリアクションだな……


「は、はい。でもまだフリィアちゃんは無級、

 リルメスお嬢様は準中級です」


 ちなみに死のリストをさっき確認してたが、

 赤文字は消えてた。その代わり黄色文字が出てる。


「実力ではすでに中級付近、

 ここで一気に二人とも中級になってもらいます」


【戦闘に敗北し斬殺(ざんさつ)

 フリィア・サタニルド。

 リルメス・レクセト・ボルワール】


中級(ちゅうきゅう)兇徒(きょうと)……その者を倒せば晴れて中級。

 大丈夫です。二人なら絶対勝てます」


 しくじれば死ぬ。でも、俺に不安はない。

 だって二人はこの一ヶ月以上、一度だって怠けたりした時はなかったんだ。


「ケルエタさん……わたしの大剣……」

「フリィアちゃん、大剣は持ってきましたよ。

 リルメスお嬢様はいつもの魔法の杖でいきましょう」


 戦士の人がフリィアちゃんの大剣を、

 リルメスの小さな魔法の杖を手渡した。


 それと同時、さすがにうるさかったのか、

 別部屋にいた兇徒(きょうと)が一人出てくる。


「あ、な、なんで脱走してんだよ!」


 こいつが中級じゃなきゃ戦士の二人に頑張ってもらう。中級だったらフリィアちゃんとリルメスの出番だ。



「ケルエタ! これは昇級試験ってことね!!」

「えぇそうです」

「まだ大剣は振ったことないけど……がんばります!」

「頑張ってください二人とも」


 この二人なら──


「勝つわよ! フリィ!」

「う、うん!!」


 負けないさ。

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