第十二話 初対面
異世界転生十七日目。
昨日はすごかった。濃い一日だった。
フリィアちゃんの大剣を買って、
グラバさんへ交渉からの襲撃阻止の瞬間……
カッコよかった。顔面偏差値が高いイケオジが、
たった一発で襲撃犯をKOだ。正直震えた。
あの襲撃犯は獣族の土獣族。
言っちゃえばモグラだ。モグラが人型になった種族。
獣族は人型の奴が高い知能を持ってて、
四足歩行の奴とか言語を喋らない奴らは野生動物、
この世界じゃそいつらを【暴野】って呼ぶ。
以前も知識として得たがちゃんと整理するべきだ。
昨日のグラバさんはめちゃくちゃ強かった。
全知脳はほんと便利で人物であろうと記録があれば知ることができる。
【グラバ・シャクベルト 男性 人長族 四十三歳】
まあ、そっから色々つらつら書かれてたんだが、
まとめるとこの人はめちゃくちゃ強い人。
ちなみに人長族ってのは耳が長いだけの人知族。
領主のリアバダとは古くからの付き合いで互いに信頼度も高い。だから無茶振りされてるんだろうな。
そしてこの人は執事長……
リアバダに仕える人の中で一番信頼されてるんだ。
加えてこの人の等級は上級……なんだが──
実は準俊級レベル、あえて隠してるらしい。
さらに驚きなのが、魔法使いであって″拳戦者″だ。
魔法も使えるし拳で戦えるってことだ。
「ケルエタさん! お稽古してもいいですか!」
現在時刻は午後4時。業務終了時間。
フリィアちゃんは嬉しそうに俺にそう言ってきた。
「えぇ、お稽古オッケーですよ」
フリィアちゃんは楽しそうだ。
昨日は俺が部屋に帰った時、
大剣に抱きついて床で寝ていたからな。
はっきり言って愛着が湧いてる。
普通に可愛いし頑張り屋で応援したい。
剣を振れるようになるには身体作りをして、
ちゃんと負荷に耐えられるようにならないとダメだ。
だから俺は稽古って言っても体力作りだけをさせる。
下手に怪我したら最悪だからな。
でも、俺的には一番驚いたことがある。
「フリィアちゃん休憩します?」
「まだ……ちょっと走ります!!」
フリィアちゃんは体力作りを楽しんでる。
それに加えて体力があの身体に反して多すぎる。
異世界ってのもあるだろうが、七歳の女の子が楽しそうに休まずにずっと走っていたらちょっと怖い。
「ケルエタ様」
フリィアちゃんが走り回るのは屋敷の中庭だ。
ちなみに事前に許可は取ってある。
俺は走り回るフリィアちゃんを見てたら、
後ろからグラバさんが話しかけてきた。
「魔法の特訓をお願いしてもよろしいでしょうか?」
「もちろんです。あの子の指導もしながらですけど、
大丈夫ですかね?」
俺がそう聞けばグラバさんは頷いた。
それと同時、リルメスお嬢様がやってきた。
「で、その、えーっと……光る球!
あなたがあたしに魔法を教えるの?」
ひでぇ呼び方だ。
しかしよく魔法を教わりにきたな。
絶対拒絶されると思ってた。
やっぱり、あの襲撃が与えた恐怖感はデカいか?
「お嬢様……」
「ケルエタですよ……」
「べつにどうでもいいじゃない!」
ま、名前はいずれ覚えてくれればいい。
「ねぇグラバ、あの走ってるのはフリィア?」
「そうでございます。彼女は剣士志望なのですよ」
えぇ、フリィアちゃんの名前は覚えてんのかよ。
……ショックだがまあいい。
フリィアちゃんに絡みに行くのか?
貧乏家庭出身だし……リルメスに喧嘩売られるか?
「ちょっとー! フリィア! こっちきなさい!」
「っはぁ……はぁ、は、はい!」
フリィアちゃんは走ってこっちにやってきた。
汗をかいてるフリィアちゃんを見て、
リルメスお嬢様はこう言った──
「これ、汗を拭いてからまず話しましょ!」
あれ? ハンカチあげたぞ。
いい子じゃん……え、貴族でしょ?
「いいんですか……汚れちゃいますよ」
「洗えばいいだけでしょ! 早く使いなさい!」
はー、なるほど? そう言う感じなんだ。
俺は咄嗟にグラバさんを見たら少しドヤ顔だった。
「あ、ありがとうリルメスお嬢様!」
フリィアちゃんは汗をハンカチで拭いた。
「あたしリルメス、一緒に頑張りましょ!」
「わたしはフリィア……! うん、頑張るよ!」
……なるほど。グラバさんが頷いたのはこう言うことか、リルメスお嬢様は意外に人好きなんだな。
* * *
さて、同時に二人、しかも互いに違う戦闘スタイルを教えることになったわけだが、これは好都合。
剣士は基本的に魔法使いより強い。
以前得た等級制度の仕組み。
あれを深掘りしたらこの世界の戦闘について知れた。
「さ、授業です。二人には剣士と魔法使い。
どちらの知識も頭に入れてもらいます」
中庭で行われる俺の授業。
人に何か教えるのには自信がある。
大学もFランじゃないし……? 有名でもないケド。
「えー! あたし剣士とかどうでもいいわ!」
「わたしも……魔法はややこしくて苦手……」
七歳だ。こう言ったわがままはある。
だが、俺には策がある。
今の二人は剣と魔法、片方にしか興味がない。
なら、その片方の興味をそそらせる知識を、
上手いように入れてしまえばいいんだ。
「まあまあ、とりあえず質問です。
剣士と魔法使いどっちが強いです?」
「魔法使い!!」「剣士……だったらいいな」
「なんと剣士の方が強いです!!」
「なによ!!」「やった!」
そう、この世界、剣士の方が基本強い。
ってよりもこれはタイマンの話。
ぶっちゃけどっちが強いかは状況次第だが、
もし、魔法使いと剣士が同じ等級だった場合。
勝つのは剣士だ。
魔法使いと剣士が上級だとしたら、
剣士を魔法使いとして考えると等級は英級。
「魔法使いは近接戦がとにかく苦手、
避けるべき状況は近接戦です。
逆に言えば、剣士は魔法使いに距離を取られたら、
一方的に攻撃されてしまうことになるんです」
剣士と魔法使い、互いが必ず意識するべきなのは──
「距離感、相手の攻撃範囲を常に意識すること」
剣士は魔法使いの魔法の軌道を読み、
魔法使いは如何に剣士を近づけさせないか。
これが基本的に剣と魔法の戦いにおいての基本。
「……なに言ってるかわかんないわよ!!」
「むずかしい……」
あー、そうだ七歳じゃん。
「えーっとじゃあ! 剣士は相手を触れる距離!
魔法使いは剣士から触られない距離って感じです!」
「最初からそう言いなさいよ!」
「意外に簡単だった……」
よかった。わかってくれた。
「……まあ、今の話が通じないバケモノもいます。
世界には天級を冠する戦士がいますけど、
その人たちは基本的に有利不利なんてないです」
天井はちゃんと伝えておこう。
理不尽な強さの奴だって多くいるんだ。
「ふん。あたしは天才だからいつかなっちゃうわね」
「リルメスお嬢様って天才なんだ……!」
「そうよ! あたし魔法だって使えるもの!」
無理だ。なれるわけがない。
俺は全知脳である程度知識を得てる。
現存する天級はたった三名。
【星焉大陸】と呼ばれる世界一栄えてる大陸の、
世界の左側と右側を片方ずつ支配する帝国。
【デエス帝国】と【メテオール帝国】に一人ずつ。
もう一人はどっかをプラプラしてるらしい。
全員が長く生きていて武勇伝はもちろん怪物。
【デエス帝国】の建国者で魔法の生みの親、
生みの親らしくあらゆる魔法を扱う怪物。
アンジュ・デエス・レーヌ。
【メテオール帝国】付近には魔王なんて存在がいた。
そいつを単独で撃破したメテオール帝国の建国者。
デモン・メテオール・ロワ。
残りの一人は情報がなかった。
知識が入ってこないってことは記録がないんだ。
でも天級……マジでやばい奴なのは確定してる。
「ふふ、まあなれるならなってくださいよ」
なれないだろうがこう言っておこう。
変に気を落とす行為は意味がない。
「フリィアちゃんとリルメスお嬢様。
これから私が剣士の戦い方と魔法使いの戦い方、
どちらも徹底的に教えていきます。
意味がないなんて思うかもですが、
意味はありますよ」
これは昔見た漫画に書いてあったことだ。
「戦いは相手を知ることが勝利への近道です。
互いの弱点を学び合いましょう」
* * *
俺は少し浮かれていた。
現状うまくいきすぎてる。
思い返せばこの頃の俺はしくじった。
知識ばかりに意識がいって死のリストの管理を怠った。赤文字……それはほぼ死ぬ、死の運命。
俺は三週間後。
初めて二人同時の″赤文字″に直面する。
第十二話読んでいただきありがとうございます!
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