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私は暴力に満ちた無法の世界に転生し、誰が生き、誰が死ぬかを決める蠍になった。  作者: Ryo Nova


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第4話 香煉女

このエピソードは途中で終わることなく、最後までしっかり完結しています。

拙い部分もあるかもしれませんが、少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。

ありがとうございます!

男が四人の死んだ女の上に跪いている。


体は引き裂かれ、喉は切り裂かれている。



彼は荒い息を吐き、血に酔っている。



頭上で明滅する街灯がブーンと鳴る。



男は口元を拭い、誰ともなくニヤリと笑う。



「まだ温かい…」



再びナイフを掲げるが――音が止む。



灯りが再び明滅する。



空気の微かな振動——カフカの戦いの余韻。



男が顔を上げる。



沈黙。



すると——足元の水たまりが波紋を立てる。



赤い月の映りが歪む。



血の滴が震え——

上へと落ちていく。



男の笑みが消える。


「…何だこりゃ—」



カメラが煙霧を貫き上昇する—崩れかけた屋根、壊れたネオン看板、錆びた広告板を通り過ぎ—空の震えを追う。


上へ。


上へ。


街の混沌が消え去るまで——世界は静寂に包まれる。



カメラは血に染まった肉屋街の路地から上昇する——

真夜中の霧の中、かすかに光る街灯や弱々しく唸るネオンサインを通り過ぎながら。



この街は決して眠らない、ただ朽ちていくだけだ。


そして——一筋の鐘の音が響く。



かすかに。虚ろに。



屋根を伝い響き渡り、地区を見下ろす丘に沈む――月明かりに半ば照らされた古い高校が立つ場所だ。

錆びた看板にその名が光る:



屍街学園 — 死の街の学園。



内部――教室では蛍光灯の唸りがかすかに響く。



真夜中だが、授業は続く。


誰も疑問を抱かない。無法の世界では、教育さえも亡霊に憑かれている。



灰色のコートを着た教師が黒板に漢字を書く。チョークが鋭く、疲れた音を立てる。



数人の生徒がノートを取っているふりをしている。



大半はただ窓の外、街の遠くで燃える炎を見つめている。



一人の少女、ミオが窓際に座っている——華奢で、青白く、制服の袖はほつれている。彼女は時計をちらりと見る。



「…先生、もう真夜中を過ぎています。なぜまだ――」



「黙れ」と教師は呟く。「外の世界は汚物だ。この壁の内側には、まだ秩序がある」



彼女は微笑もうとする。その言葉は規則というより祈りのように響いた。


すると――空気の中に何かが変化した。


すると――スニッ。



美緒が首をかしげる。割れた窓からかすかな香りが漂ってくる。



柔らかく。甘く。


まるでバラのように。



最初は温かく――懐かしい。記憶の中の香水のようだ。



数人の生徒が呟く――「あの匂い…?」


甘い。


バラの香りは濃くなり――空気にピンクの霧のようにかすかに揺らめく。



そして第二の波が襲う。


より濃く。より重く。



教師が話の最中に言葉を詰まらせる。マーカーが床にガチャンと落ちる。



生徒たちは鼻をひくひくさせる。


誰かが囁く。「あれ…香水?」



別の生徒が気まずそうに笑う。「廊下でバラの香水を撒いてる人?」


ミオの笑顔が消える。鼓動が速まる。



甘さの奥に…別の何かが潜んでいるからだ。


血の匂い。


そして焦げた脂肪の匂い。


ミオの目が大きく見開かれる。


「…香水じゃない」



机を握りしめる。「この匂い…おかしい」



教師が振り返る。「ミオ、座れ。お前は—」


言葉を止め、咳き込む。



鼻から暗赤色の線が垂れる。鼻血が流れ出す。次に目から。



ドスン。彼は痙攣しながら倒れ、その下に赤い血の池が広がる。



生徒たちが息を呑む――口を押さえた生徒の指の間から血が滲む。別の生徒が机に倒れ込む



悲鳴が爆発する。机が倒れる。



次々と生徒が咳き込み、吐き気を催す。皮膚の下で静脈が黒ずんでいく。



電気がちらつく。



別の教師がドアを破って飛び込んできた。「みんな、外へ!今すぐだ!」


言葉を途切れさせ、血を吐きながら倒れる。



香水が濃くなり、今や目に見えるほどになった。


かすかなピンクの霧が、絹の煙のように空気を渦巻いている。



生徒たちはよろめきながら進む――だが息を吸うたびに焼かれる。喉を掻きむしる者。吐瀉する者。



美緒は震えながら隅へ後ずさり、目を大きく見開く。


「いや、いやいやいや…」


教室の扉の方を見る。扉が開く。


一人の女が足を踏み入れる。


裸足で。


月光に濡れて。



その肌は蝋のように白く。



黒墨のような髪が肩に垂れる。



ベルトには小さな小瓶が揺れ、かすかに光る——一つ一つが指の骨で形作られている。中身の液体はピンクがかった赤にきらめく。



香りが瞬時に強まる——薔薇と肉と死が絡み合う香り。



彼女は歩くのではなく、滑るように進む。



机から滴る血のリズムに合わせ、一歩一歩。


ミオは血を吐きながら、這って逃げようとする。


「お、お願い…助けて…」



「シーッ…助けてるわ。永遠に生きられる。あなたの香りが消えることなど絶対にない」



彼女の声は、空気を凍らせるほど静かだった。


「なんて哀れなこと…

若ければ若いほど、早く死ぬのね」



倒れた教師の傍らに跪き、頬の血を拭う。



「だが年老いた者ほど…その香りは長く残る」



「恐怖は老いた者の中でゆっくりと煮える」


その口調はほとんど…優しい。



瓶のフックを外す。



教師が最後の息を吐く瞬間、その口元に差し出す。


かすかな赤い霧が瓶の中へ渦巻く。



蓋を閉める。かすかに微笑む。


「完璧」



かすかな滴る音以外は静寂に包まれた部屋。

数十の死体。


薔薇の香りが今や輝きを放つほど濃密だ。



彼女はわずかに首を傾げる――目を半開きにし、遠くの何かを聞いているかのように。



粉砕された窓越しに、かすかな轟音。


雷か? 違う。衝撃波だ。



地平線上に紫の閃光が走る――カフカの戦い。



彼女の唇が、知ったような微かな笑みを浮かべる。



「なんて騒がしいこと。


まだ誰かが、混沌には観客が必要だと信じているらしい」


彼女は立ち上がる。霧が絹のリボンのように足首を絡めながら。


窓辺の死んだ少女――ミオ――をもう一度見つめる。目はまだ開いたまま、恐怖に凍りついている。



「無垢の匂いがする」と彼女は囁く。



「珍しい。覚えておくわ」



ミオの髪を顔からそっと払う。


そして去る。



カメラは彼女の裸足を追う――血の中を静かに踏みしめ、霧が葬送のベールのように後を引く。



廊下へ出るや、ピンクの蒸気が広がる――学校全体を飲み込む。



明かりが一つずつ消える。


ロッカーがガタガタ鳴る。


溶けたペンキのように、ドアの隙間から血が滲み出る。



外から見ると、学校は暗闇に浮かぶ赤く輝く提灯のようだった——美しく、不気味で、死んでいる。



戦いに戻る。



粉塵が空中に漂う——壊れたランプの下で、濃いオレンジ色に光っている。



廃墟の真ん中に立つ私。退屈と高揚が入り混じり、尾からは毒の光が唸る。



向かい側で、悪魔のような化物が低くうずくまる。先ほどの攻撃で血まみれの顔。筋肉が裂け、溶けた鎖のような筋が露わだ。鎌が擦れ合い、煙る闇に火花を散らす。



首を回し、怠惰な笑みを浮かべる。


「うるさいな」



化物が咆哮する――地面が揺れるほどの轟音だ。



私の笑みは深まる。背骨から毒の蒸気が立ち上り、足がわずかに地面から浮く。


沈黙。


そして――閃光。


私は消えた。


稲妻の速さ。



音速の裂け目が街路を分断する。



化物が同時に飛びかかる。双子の鎌が空気を切り裂く。


刃が交わる瞬間――衝撃が微小な爆発のように炸裂する。


ドーン。



破片が飛び散る。



毒液が空中を液状の稲妻のように弧を描く。



尾がぼやけた影となって閃き、化け物の刃に激突する。



死骸の上で花火のように火花が降り注ぐ。



カメラが彼らを旋回する――死のバレエ。



軽やかに回避し、壁を滑るように足が動く。笑い声が響く。


「その振り方は殺し屋じゃなく農夫みたいだぜ!」



消え、上空に現れ、踵で叩きつける。



生物は辛うじて防ぐ――衝撃波が真紅の塵を四方へ吹き飛ばす。



生物は痛みに咆哮し、乱暴に振り回す。


肩に現れる。


「なあ」と私は気楽に言う。「お前の息、臭いな」


尾が首を貫く。


瞬時に麻痺する。



痙攣するまま地面に叩きつけられる体から飛び降りる。


その時――サソリの感覚が疼く。


空気に漂う香り。甘く。花のように。おかしい。



バラ…甘く、腐り、死の匂い。



ゆっくりと顔を上げる。


ピンクがかった霧が路地裏を渦巻く。


野獣どもは恐怖に凝視し、顔を押さえながら目から血を流す。



「こ、これんおんな…」一人が喘ぎ、崩れ落ちる。自らの香水に溶けていく。



彼らは痙攣しながら、次々と倒れていく。



魔物は痙攣しながら、まだ息がある――だが上から、彼女は軽やかにその肩に降り立った。



香蓮女。



蝋のような肌、ガラスのような瞳。吐息ごとにピンクの霧が漂う。



腰の瓶がカランと鳴る——かつて人間だった油が詰まっている。



彼女はかすかに微笑み、墓地を漂う香水のようになだやかな声で言う。



「毒の臭いがする…なのに生き物の息をしている。

血を流し、それでも退屈そうな顔をしているとは、いったいどんな怪物だ?」



「ただ退屈だっただけさ。



この悪臭が何か面白いものへ繋がるかと思ってな」



背後で、麻痺した悪魔が身動ぎする。彼女はそっとその頬に触れる。「私のおもちゃを壊したわね」



彼女は私に向け、暗く輝く瞳を向ける。



「その代償は払ってもらうわ、小さなサソリ」



悪臭が濃くなる――血の香りが空気を染める。



遥か上空で、空が紫色に染まる。



首をポキッと鳴らし、尾がシューッと解ける。「やっとか」と呟き、笑みを浮かべる。



「面白い何かが」



彼女の笑みが広がり、目に狂気が宿る。



ベルトの瓶がガタガタ鳴る――死体から抽出した香りの小瓶だ。



彼女が一本を掲げ、パチンと蓋を開けた瞬間――



世界が赤い霧へと爆発した。



「全ての香りは物語を語る――二度と呼吸することのない者の物語を」

最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。

感想をいただけると、今後の執筆の力になります。

物語はまだ始まったばかり――次回もぜひお楽しみに。

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