第2話 毒を宿す裁き人の誕生
このエピソードは途中で終わることなく、最後までしっかり完結しています。
拙い部分もあるかもしれませんが、少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。
ありがとうございます!
世界が叫ぶ。
深紅の空が、慈悲を忘れた街の上で燃える。
壊れた塔から煙が立ち上り、炎が地平線で笑う
悪魔のように踊る。
街は血と狂気の川。
叫び声がこだまする。
女性が髪を掴まれ、倉庫に引きずり込まれる。その声は鎖の音に飲み込まれる。
男が昼間に十回刺される――それぞれの突きは濡れて鋭く、最後の一撃――体は溝に崩れ落ち、子供たちは虚ろな目でそれを見つめる。
別の男は酒と汗の匂いを漂わせ、女性を壁に押し付ける。
他の誰も見ていない中、彼は微笑む。
そして角で――誰かが別の人間を食べている。血が顎からスープのように滴る。
食人者たちが宴を開く。
殺人者たちが自由に徘徊する。
ギャングがすべてのブロックを支配する。
法律も警察も神も正義もない。
ここで唯一のルールは、生き残ること。
それでさえ…任意のように感じられる。
子供が笑う――高く、ひび割れた声で――金属バットで他の子供を叩き、笑いが悲鳴になり、そして沈黙になる。
世界は死んでいる。
混沌だけが息づく。
邸宅
外の穢れに触れられない場所。
大理石の廊下。黄金の光。優雅に揺れるビロードのカーテン。
中庭では――少年が裸足で黒いタイルに立って
いる。太陽の下で光るそのタイル。
紅い瞳は傲慢と悪戯心で輝く。
彼は美しい――人間離れした完璧さ――しかし、どこかかつて別の世界の少年にあった微かな亀裂を瞳に宿す。
カフカ・穂積…ああ、俺だ…
年齢13。
東の蠍、穂積ノザルの息子。傲慢。金持ち。危険。
退屈で仕方がない。
影が俺の前に立つ――執事だ。表情は無。手には黒いエネルギーが漂う毒を宿した刃が光る。
俺は頭を傾け、傲慢と子供っぽい誇りを浮かべる.
「ねえ、お前…なぜ俺に頭を下げない?」
執事は静かに息を吐く。
「穂積様、開始から一時間が経ちました。訓練中のはずです、支配ではなく。」
俺は鼻で笑い、子供のように唇を尖らせる。
「俺の主人を無視するとは、下僕め。」
次の言葉を発する前に――俺は消えた。速度のぼやけ。
立っていた地面が割れる。
執事は完璧な冷静さで横に避ける。俺の一撃は寸でのところで外れる。
俺は着地し、にやり。
「避けたな。可愛い。」
影のように動き、壁を蹴り、昆虫のように這い上がり、蜘蛛のように静かに移動する。
攻撃は矢のように、鋭く、予測不可能、人間離れしている。
すべて、執事の黒い剣によって容易く受け流される。
執事が反撃――素早い斬撃。
俺はひねって、かろうじて避ける。
「下僕め、俺に剣を振るとは、度胸あるな?」
その時――空気が震える。
背中から光と金属の黒い尾が飛び出す――生きている、毒を滴らせ、背中から滑らかに蛇のように肩を越え、捕食者のように唸る。
俺は高く跳ぶ――尾が爆発力で振り下ろされる。
衝撃で石の床が真っ二つに割れる。
執事は優雅に避け、剣を振る――ガシャーン!
俺は跳ぶ――尾が風を裂き、雷のような轟音で中庭のタイルを叩く。地面が割れる。
上のガラス窓越しに、ノザル・穂積が見守る――優雅で冷静、ワインを啜り、息子の混沌に微笑む。
後ろで――泥棒が忍び寄り、短剣を構える。
ノザルは動かない。
尾が閃光で飛び出す――滑らかで機械的、毒黒、ルーン刻印。
一瞬で泥棒の頭蓋を貫く。息をする間もなく。シュー――煙が立ち、肉が溶け、体が黒い液体に変わる。
ノザルは振り返る。跡形もなし。尾を見つめ――先端が無邪気に揺れ、一度はじく。「すべてクリア」
ノザルは静かに笑う。
「よくやった。」
尾が誇らしげに一度はじき、再び体に巻き戻る。
再び中庭を見る。
剣 vs 尾。
影 vs 鋼。
俺は影を通り瞬間移動――人間の目には追えない角度から攻撃。
笑い声が中庭に響く――半分は子供、半分は悪魔。
「さあ、執事!俺が存在しなければ攻撃できないだろ!」
執事の剣がさらに黒く光る。目を細める。
「よく動く、若様――だが、口先が過ぎる。」
俺は消える――執事の影に溶ける。一瞬で背後に現れ、尾が男の胴を巻く。
執事の剣は圧力で粉砕され、手から消える。
俺はにやり。
「言っただろ。下僕め、俺を見下すな。」
執事はため息、声は平坦。
「…はい、恐ろしい。父上に見られる前に解放願います。」
俺は舌打ちし、尾を戻す。
後。
俺はソファに横たわり、ワイングラスでジュースを啜る。
メイドが少し震えながら傍に立つ。
テレビにはいつものニュース。
「本日、女性6名が強姦・殺害…ブッチャーズ地区近くで男性5名が解体…」
俺は怠惰に興味深く見つめる、目は輝いている。
「外は賑やかだな」と呟き、にやり。
「ようやく、楽しめそうだ。」
ブッチャーズ地区
人間の姿をした怪物たちの領域。
食人者。悪魔。人身売買者。
ここでは、人間という言葉は意味を失った。
ギャングのリーダーが火の入った樽のそばに座り、絶対に動物ではないものをかじっている。
血が歯を染める。顔を上げると――巨大で白い月がその上に浮かぶ。
そして――空が裂ける。衝撃音が鳴る。
砂塵が立ち上り、地面が割れる。
衝撃波が通りを覆う。砂塵が廃墟の輪のように渦巻く。
沈黙。
ギャングのリーダーは目を細め、困惑する。
俺は立つ――仮面をつけて。
滑らかな黒曜石の仮面、彫られたギザギザの笑みが深紅に光る。
片目――空洞の黒。
もう片方――燃える紫の星、生命のように脈打つ。
リーダーは鼻で笑う。
「天から落ちてきたのか、坊や。お前は天使でも名乗るつもりか?」
俺は頭を傾ける。
「…天使?いや。」首をポキッと鳴らす。
「天使はこんな降り方はしない。」
リーダーはしかめ面。
「なら、一体お前は何者だ?」
俺は仮面越しに顎を触りながら考える。
「俺は…?うーん…タイプS――いや、馬鹿っぽいな。」
指をパチンと鳴らす。「決めた。」
顔を上げ、低く鋭い声で。
「俺はヴェノムド・ジャッジだ。」
リーダーは笑い出す。
「お前が?裁判官?仮面かぶったガキじゃないか。」
俺の声は冷たく落ちる。
「なら、判決を見せてやろう。」
地面がリーダーの足元で爆発するように割れ、俺は前に飛び出す。
リーダーはかろうじて避ける――だが衝撃波*ドーン!*で壁が二つに裂ける。
俺は空中で再出現し、影を通り消える――再び消え、影が波打ち、ターゲットの背後に再び現れる。
回転キックがこめかみに――衝撃。
リーダーは壁に激突し、血を咳き込む。
俺は殺さない。演出だ。
すべての動きが優雅で、劇的――暴力は芸術。
砂塵。沈黙。
そして笑い。
俺はくすりと笑う。「悪くない。まだ生きてるな。」
指をパチン――彼の影が地面を這い、足首を掴み引きずる。
男は叫び、逃れようとする――だが影は締まる。
仮面越しに輝く目。
空洞の目を通して――男の魂の内側を覗く。
閃光。
血。悲鳴。女性の泣き声。骨が砕ける音。
男の罪が悪夢のフィルムのように映し出される。
低く響く声。
「お前は女性を生きたまま食った…百以上だ。悲鳴を楽しんだだろう。」
頭を傾ける。
「罪が多いな。」
尾が解き放たれ、毒光を放つ。
リーダーはかろうじて避ける――尾がコンクリートを打ち砕き、クレーターを作る。
仮面の下でにやり。
「誇りを持って死ぬべきだったな。」
リーダーが唸る――本来の姿が現れる。目は光り、怪物的、歪み、角が生える。
突進。
尾が一撃――空中で足首を掴み勢いを止める。
そして――
ドカン。
地面に叩きつける。
再び。
また。
さらに。
舗装が割れ、空気が震えるまで。
燃える樽に投げ込み――炎が上に吹き上がり、火の粉が地獄のように降る。
リーダーはもがき、うめく。
ため息。
「哀れだ。」
尾が自動で動く――ビシッ! リーダーの顔を叩く。
一度。二度。三度。叱責のように。
くすりと笑う。
「見ろ、奴でさえお前を哀れと思っている。」
尾が喉に巻きつく――締め上げ、沈黙。
息を吐き、目を光らせ、尾を引っ込める。「愚か者。」
振り返る。
その時――
ニャー
小さく、壊れた声。
下を見る。
小さな負傷した猫――汚れ、震え、半死――が見上げる。
尾が低い金属音で解き、先端が光り始める。打つ前に――パキッ!
手が光の閃きで伸び、尾を空中で掴む。衝撃で灰が飛び、周囲の砂塵が爆発のように舞う。
睨みつける。「待て。」
尾が一度ぴくり、拗ねたようにゆっくり引っ込む。
ゆっくり下ろす。
猫の横に跪き、手がかすかに光る。
毒は流れる――殺すためではなく、変えるために。
光が小さな生き物を包み――消えると、そこに少女が跪く。
小さく、儚く、可愛い。長い髪で顔を覆い、猫耳がピクピク動く。尾が体に巻き付く。
見上げる、目は大きく、輝く。唇が開き――ためらい、言葉を思い出そうとするかのよう。
「わ…あ…あ…あんた…誰…?」
息が途切れ、壊れそうな声。ひとつひとつが存在初の言葉のよう。
ゆっくり立ち、声を深く――伝説の戦士のように、演劇的で誇らしげに。
「私はお前の主人だ」と宣言。風がちょうど良く当たる。仮面越しに顎に触れる。
「そして今から…お前の名前はトマだ。」
劇的に聞こえるのを自覚、だが気に入った。
間。沈黙。
少女はまばたきし、頭を傾け、名前が心に光のように跳ねる。
唇がほんのわずかに笑う。
「ト…ト…マ…」
再び口を開き、声を試す――壊れそうなもののように。
「お…おけ…」
一瞬止まり、唇が震え――俺を見る、そして恥ずかしそうに視線を下げる。
「…マスター。」
俺は真剣に頷く、即興の名前だったことを隠す。
「よし。従え…そして死ぬな。」
そして立ち去るために:
尾を再び滑らせ、体にそっと巻きつけ――きつくないように――軽々と持ち上げる。
少女の驚いた鳴き声が廃墟の通りに響く。小さな手が光る尾にしがみつく。
仮面の下でにやり。
「静かに。劇的な退出だ。」
尾が弾き、我々を夜空へ打ち上げる。
下の砂塵は黄金の渦を描き、影に消える。
数時間後。
ギャングが戻る――笑い、酔って。
そして止まる。
場所は荒れ果て、壁は粉砕、火は消えかけ。
リーダーは――逆さ吊り、喉を潰され、血が滴る。
隣の壁には――血で落書き。
「ヴェノムド・ジャッジ」
雷鳴。
街は恐怖の中で眠る。
その上空で――少年が深紅の月の下で微笑む。
「正義…は毒から始まる。」
最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。
感想をいただけると、今後の執筆の力になります。
物語はまだ始まったばかり――次回もぜひお楽しみに。




