第9話 サイドメニュー研究~カレー勇者編~
回転すしは味のテーマパークみたい、って思ったんだけどさ。サイドメニューのこと考えだしたらそれどこじゃないかも?って感じになっちゃった。
揚げ物とかの一品物、麺類、デザート系、なんならカレーとかも。
麺類はそばうどんに留まらずラーメンやパスタもあるし。一品物だって数限りない。
てんぷらや茶わん蒸し、汁物なんかは基本としてだけど、から揚げやフライドポテトに枝豆とか。
もはや居酒屋なんだよなー。っていうか小料理屋のウチより品数が多い。サイドメニューだけで。
それで思ったんだけど、全部は用意出来ないなって。絞っていく作業が必要になるよな―って思うんだよね。
そこで、今回はお魚や海産物を集める必要があるからさ、色んな所へ仕入れに行くついでに現地でアンケートを取ろうかと思うんだ。
例えばカレー勇者さんのとこには良い海産魔物が多いし、とんかつ賢者さんのところはクラーケンが名産品。
そんな感じで食材を集めつつ好きなものを聞いていこうかなって。
という訳で異世界の旅の始まりだよ。
「こんにちはー。いつものカレー粉持ってきたのでまた交易お願いします。今日は海産物中心に欲しいんですよね」
「いらっしゃい若女将さん。カレー粉も切れそうだったから助かるよ。いつもの昆布と海苔の他にってことだよね。そしたら今から取りに行くから一緒に来ます?」
「私あんまり戦ったりはちょっと……遠くで見てるだけならいいんですけど」
「大丈夫大丈夫、海の狩りは浜辺からこう、ズドーン! だから。安全だよ?」
よく考えたらこの人たちは既に異世界で大成功するだけの強さもあるんだよね。
たまにはそういうのも見てみようかな?ちょっと面白いかも?
「じゃあ、お願いします。勇者さんのところだとウニがいましたもんね。あれあんまりいないんですよね」
「ウニなんて形状がアレだから色んな異世界で出てきそうだけど意外といないんだね。動きがないからかな?」
「さあ、それは分かりませんけど。クラーケンはどこにでもいますね。むしろそっちの方が伝説っぽいと思うんですけどね」
「伝説っぽい奴ほど異世界には生息してるからね。クラーケンなんかはイカ系とたこ系に分かれるけど。そうだ、今日はシーフードカレーにしよう!海に行くからね」
という訳で海に来たんだけど、勇者さんの狩り?釣り?はそりゃもう凄かったよ。
「ライトニングブレ―ーード!!」
雷をまとった剣を一振りすると海は割れて電気で痺れた魔物たちが海上に浮かび上がってくるんだもん。
「収納!」
そんで一発で回収しちゃう。あっというまに何日分?っていう漁獲量です。網漁とか目じゃないね。
「獲りすぎてもアレだからこれくらいにしとこっか。後は、ウニだったよね。よし、水流操作!」
いい笑顔で続けて魔法を放つと海が割れて海底が丸見えだよ。これは十戒ですか?
海底にいるウニやアワビなんかをこれまたわざわざ取りに行かず収納しちゃう。あ、倒さなくてもいいんだ。
「ああ、これはシンプルに収納してるんじゃないんだよ。一回引き寄せて目に見えない速さで剣を振る。そうすると昏倒させられるからね。意識を刈ってから収納してるわけ。貝やウニは生きたままの方が料理しやすいでしょ?」
意外と気を使ってくれてるらしかった。確かにお魚は活〆とか、生きたままはあんまり食べないよね。生け造りってあるけどさ。
あれはあんまりおいしくないんだよなー。締めてある程度寝かせた方が美味しいと思うんだよ。それがいい場合もあるだろうけど一般的にはね。
貝やウニは調理の直前に処理することが多いからね。ありがたいです。捕獲方法はもう気にしてないよ。私の周囲は人外ばっかだからね。慣れるんだよ。
「で、回転すしのサイドメニューだっけ? 僕はシャリで食べるカレーも好きだったよ。やっぱりカレーは至高だからね。
あとはパスタも好きだったかな。寿司メインのはずなのにわざわざ置くだけあって美味しいのが多かった気がするな。隠れた名品みたいなね」
カレー勇者さんは麺類が好きだったんだね。あとやっぱりカレー。メニューにあるってことは好きな人もいるってことだもんね。
パスタかー、今度のパーティーメンバーには女性の人もいるみたいだし一品作るかな?ウニクリームパスタにしよっか?
「あとは基本の赤だしと茶わん蒸しはマストだよね。寿司ネタは迷うけどあれは迷わないから。だいたい最初に頼むね」
そう。回転すしだと茶わん蒸しって凄い人気がある印象だよね。寿司ネタは人気が分散する分、人気投票するとめっちゃ上位にくるポテンシャルを持ってる。
本当はウニの茶わん蒸しにする予定だったんだけど。パスタって言う意見も出たから迷うなー。ココは試作かな?
シーフードカレーもいいけどウニパスタもきっと美味しいよ?カレー勇者さん?
ウニのパスタと言っても色々あるよね。クリームパスタが多いと思うけど、和風の味付けだって勿論オーケー。
今回は回転すしのサイドメニューなんだけど、あのあとまた勇者さんから色々聞いてクリームパスタにすることにしたよ。
おそばやうどんは違和感がないけどラーメンとかパスタがある理由について。それは勿論色々あると思うんだけど。
お醤油の味に飽きちゃう人もいるみたいなんだよね。だからここはあえてのクリームパスタ。
今回使う麺は平麺にしたよ。クリームがいい感じに絡むかなって。そんでお塩を入れたお鍋で茹でる。
その間にフライパンにオリーブオイルを引いてニンニクを少し。香りが移ったら今回は取り出しちゃう。
トマトとネギを入れてさっと火を通したらパスタのゆで汁を投入して。火を落として生クリームと白ワインと刻んだウニをいれてよーく混ぜる。
茹で上がったパスタを加えて完成!シンプルだけどウニのおいしさを味わえるよ。
お皿に少し高さが出るように盛り付けたら最後にウニを乗せてバジルを散らす。
「おっ、出来たみたいだね。試食役を任されるとは光栄だよ。ではいただきます。
おおっ、ダイレクトにウニの濃厚な甘さが口いっぱいに広がる! クリームの甘さとは全く別物のウニの甘さが消えてないね。
クリームに和えられたウニの量もすごいからウニをそのまま食べる以上にウニを食べてる感じがしちゃうよ。贅沢なパスタだなぁ。
トマトとウニの相性もいいんだね。ウニとクリームだけだと数口で持ったりしてくる感じがするけどそれをトマトの酸味が引き締める。
ネギとわずかに香るニンニクもいいアクセントだね。ネギはそこまで火を通していないから微妙な辛味もあって。平麺にたっぷりと絡んだウニの濃厚なソースを最後まで飽きずに食べられるよ。これはいいね
それにこの濃厚さはあまりお寿司にはないからね。お寿司を食べているあいだに温かいものが欲しくなった時にはちょうどいいかもしれない」
うん、ウニのクリームパスタだからね。美味しいのは間違いない。お寿司のサイドメニューとしてどうかってとこなんだけど。
お寿司は基本冷たいからね。サイドメニューは温かいものも用意しておきたいよね。クリームパスタだけどウニ感たっぷりにしたから。
丁度良い味変の範疇に収まったと思うんだよ。それで濃厚さは出せたから、お寿司のお醤油の味に飽きたころに食べて貰えるといいかもしれないね。
「いやー、今日もカレーの気分だったけどたまにはパスタもいいね。いやアレからカレーの再現が出来たからってハマっちゃってさ。毎日のようにカレーを食べてたから少し反省しないと。
えっ? カレーも用意してある? じゃあ食べるよ、勿論。反省は明日からでも出来るからね」
うん、さっきシーフードカレーにしようって言ってからこっちも用意したんだよね。特貸の時は何回もおかわりしていたからね。
食べられると思ったんだ。良かった、ではでは特製のイカスミシーフードカレーも食べて貰っちゃおう!
「これは、真っ黒なカレーだね。おうちカレー的な黄色ではなく、本当に黒い。洋食系の黒さとも違うね。
うん! うんうんうん!! 食べた瞬間に鼻を抜けるように香辛料の香りが突き抜ける。それと一緒に鮮烈な海鮮の香りも!
イカスミだ。この黒さはイカスミだね? それに具材はイカ、エビ、白身の魚かな? それぞれにすぎることなくプリっと食感が残っててる、
カレーとして煮込んじゃうと固くなっちゃうけどこれは煮込んだんじゃないね。でもカレールーにもイカスミのお陰で香りも旨味も。
シーフードっ! 望んでいた、シーフード感が! 野菜は玉ねぎとセロリだけだけど、このシーフード感を邪魔することなくそっと控えている感じ。いいね。
そ・れ・に! ご飯だ。いやバターライス。ここに隠れるように入っている貝もたまらない。イカやエビがプリっとした食感だったのに対してコッチはコリっとした食感。イカスミ入りのルーの濃厚さを。食感の多様さで上手く散らしている感じだよ。そして先ほど感じたシーフード感。
ルー、ライス。両面から攻められてしまうとコレはもうどうしようもない。これはシーフードカレーの決定版だよっ!」
おー、流石に好物だよねー。カレーのリアクションが凄いや。それにシーフードのお口になってからかな?気に入って貰えてよかったね。
うーん。カレー。カレーかー。一応サイドメニューでないことはないし、カレー勇者さんへのアンケート結果では勿論ランクインしてたけど。
当日出すかどうかは迷っちゃうなー。ま、まだ時間はあるし。結論は他のメニューの研究してからでもいいよね。
まだまだメニューの研究、頑張らないとだねっ!




