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第7話 パーラの祝祭日 ディナー編

本日2話投稿の2話目です。

外が少し暗くなってきて、そろそろお店の準備の時間になってきたね。祝祭日は夜も忙しいんだよ。勿論お昼も大忙しだったよ。お鍋にはいっつもなにか入ってたし。


鯖味噌の方は家でパンにはさんで食べたいって人もいたから全部無くなっちゃった。イワシは他にも使えるから夜は別の料理にするつもり。


折角の銀鱈だったけどこれはあんまり出なかったね。これはなぁ、やっぱり王道の煮付けでそのまま夜に出しちゃおっかなって、美味しいんだよ?銀鱈。


あ、お店の中はすっかり元通り。煮たり焼いたり揚げたり切ったり。何でも出来るようになってるよ。


夜はお酒と一緒って人も多いからね。ウチは定食屋じゃなくて和食処だから。って言うか小料理屋さん?割烹?


和食処はないけどパーラには酒場とかあるよ。ファンタジー感たっぷりお冒険や酒場。私も何回か行ったことあるからね。


それとお酒はね。パーラでは16歳から。だから若い人もちらほら見かけるね。


私はまだ飲んでない。やっぱり日本の感覚が残ってるからもう少ししてからかなって。没落したから夜会みたいなのに行かなくても大丈夫だし。


1回だけ行ったかな?だけど泡沫貴族は誰も気にしないからね。すぐ帰れるという。多分誰も気づいてないと思うんだ。入り口から出なかったせいかもだけど。


特貸の準備が迫ってた時期だったからね。ソルにお願いしてすぐに転移させてもらっただけなんだけど、誰に何も言われてないから大丈夫だと思う。


お料理屋さんはね、忙しいんだよ。取り敢えずは夜の営業、がんらないとねっ。




夜の営業が始まってすぐは大体数人のお客さんが入って来るんだ、それでご飯ものを食べてくことが多いかな。でも祝祭日だとお仕事終わりって人は少ないから最初からお酒のおつまみのオーダーが多くなる、今日もそうなるかな、


「昼に続いてきちまったぜ、勿論夜だからな。酒を飲むぜ。昼は中途半端だったから待ち遠しくてな。まずはビールくれ、あの冷え冷えの生ビールな」


「はい、ビールなのです。それとお通しなのです。鍛冶屋さんは、あった方が良かったですよね」


「そうそう、ビールだけでもいいんだが、ちょっとあると嬉しいからな。今日はこれは豆腐か?それにあんかけか」


ウチはお通しは欲しい人だけ出すんだよ。鍛冶屋さんは夜に来たなら必ず飲むしお通しも頼んでくれるから用意しといたんだよね。


生ビールは人気あるよね。最初の一杯は特に頼む人が多いかも。なんでだろ?でも大体の料理に合うからコッチとしてはありがたいけどさ。


今日のお通しはお豆腐のあんかけ、あんはカニと枝豆だね。カニの白と赤の色合いに豆腐の白、だから緑の枝豆はいろどりでもきれいだよね


「おお、トロっとしたあんはあっさりとしてるな。カニの上品な味がしっかりわかるぜ。豆腐との相性もばっちりだな。

 そんで枝豆、これがいいアクセントだな。濃厚な豆の味が口いっぱいに広がるぜ。そこにビールを流し込むと。

 くぅーー、たまらん! 仕事があったわけじゃないがそれでも最高だな。ただでさえビールと枝豆は最強だってのによ。


 こういう食べ方でもバッチリ合うな。こりゃうめぇ。今日はもう一杯ビール飲むか。それにもう少し豆も欲しいな。

 よし、ソルちゃん、今日は枝豆と、唐揚げもくれ。魚は昼に喰ったからなぁ。ナスの漬物と、そうだモツ煮。これをくれ。

 隣の鯖味噌見てて少し味噌味も食いたいと思ってたんだ。味噌味のやつで頼む。取り敢えずそれで頼むよ」


モツ煮は色んな味付けがあるけどね。味噌味もあるよ。人気メニューだからいつでも用意してある。

 


「お、早いの鍛冶屋。祝祭日だからといって飲んだくれおってからに。おっ、今日のお通しは豆腐か、嬉しいね。儂の好物じゃないか。鍛冶屋のことはどうでもいいわい。儂もに酒をおくれ。儂は最初から日本酒でええよ。冷やで欲しいな」


魔道具屋のおじいちゃんだ。いつも早めに来てくれてのんびりゆっくりとお酒を飲んでくんだけど。祝祭日の今日も来てくれたみたい。


「わしは今日は魚だな、刺身を適当に。それと、昼は煮魚だったらしいな? 来れなかったからそれを貰おうか」


「おう爺さん、昼のイワシの梅煮は美味かったぞ! 俺のおすすめだ!」


「お主のおススメはキイとらんわ。儂は今日、夜にゆっくり飲み食いしようと思って昼は軽めに梅茶漬けにしたから梅煮はちょっとな。煮物で他のおススメをくれ、ん?銀鱈がおススメ? よし、それで頼む。少し甘めでな」


「かしこりました。お昼が軽めだったらちょうどいいかもしれないですね。お昼はあんまり出なかったですけど銀鱈も脂がたっぷりとのってて美味しいですよ?」


「ほほ、それは楽しみじゃな。しかし……鍛冶屋の話を聞いてたらイワシも食いたくなったな。なにか出来るかな?」


「それでしたら、つみれ汁などは如何でしょう? 煮魚を甘めにする分、ことらは赤味噌仕立てで。お野菜も色々と食べられますし」


「よし、それでいただこう。それでは儂はいつも通り端っこでチビチビやらせてもらうよ」



魔道具屋さんは定位置と化しているカウンターの横へ。さ、オーダーも頂いたし作っていこうかな。


昼間あんまり出なかった銀鱈も自然にオーダー受けれたし良かったよね。昼間は入れなかった人や来れなかった人は頼んでくれるかな?


それで銀鱈の煮付けなんだけど。煮汁の味のバランスが違うことと下準備が違うくらいで大体イワシの梅煮と同じなんだよね。


魔道具屋さんは甘めが好きだから砂糖増やして。それで下準備は熱湯をくぐらせて霜降りする。すぐに取り出してやっぱり水気はしっかりとふき取ってくよ。


そしたら鍋に移して煮汁入れて落と蓋して煮るだけ。こっちは問題ないね。


後はイワシのつみれ汁。


イワシの内臓を処理して良く洗って。それで骨ごと細かく叩いていく。そしたらすり鉢に入れて、っと。


つなぎの小麦粉とおろししょうが、味噌を少量加えて滑らかになるまですっていく。


具材はどうしよっかな。白菜、ネギ、大根にしよっか。それぞれ食べやすい大きさにカットしたら、昆布だしで煮ていくよ。


ネギは後で入れるとして、途中でさっきのイワシをすった物をお団子にして投入。アクを取って全部に火が通ったら。


最期にお味噌を入れてもう少しだけ弱火で加熱。お味噌を入れたら煮立たせない。コレがポイントかな?


そしたら出来上がりだね。お椀によそってお好みで七味を掛けて貰えるように用意して、提供だよっ。


「今日の刺身はマグロと鯛か。普通だけど相変わらず美味い。ワサビもおろしたてで香りが良くていいのう。歳とると辛味より香りよの。

 そして次は銀鱈を食べるか。これは濃い目の煮汁から甘い香りが漂っていて見てるだけでも酒が飲めそうじゃが、やはり食べんとな。

 

 うむ、儂好みの甘めの味付けが銀鱈の乗りに乗った脂と相まってこれはたまらん。身は柔らかくそれでいて崩れることはなく。

 煮汁の甘さが不思議と酒に合うのう。全く生臭くなく旨味だけを感じることが出来るのは嬉しい。添えられた針ショウガは臭み消しよりも風味を増す効果じゃな。

 ほほっ、白髪ねぎもまた美味いな。そのままでも旨すぎるほど旨いが味もしっかりしとる。酒で洗い流されるがわずかに余韻が残る。それは最初はいい。

 だがそのうちにやや飽きが来る。そこでネギやショウガで舌をリフレッシュさせるのじゃな。いや飯にも合うんじゃろうがこれは日本酒に最高に合うぞっ!


 そしてイワシのつみれ汁。ほうっ。温かい。温度もそうだがそれ以上にこれは、あったかい料理じゃな。落ち着くわい。

 煮魚も温かったがつみれ汁のあったかさは別物じゃ。白菜、ネギ、大根。すべて優しい。銀鱈が魚にしては強い味だがこれは違うな。

 イワシ自体は脂もあって癖もあるんじゃがこれは生臭みも癖もなくただ素直で素朴にイワシの旨味を感じることが出来るのう。つみれに僅かに入っている味噌が味噌仕立ての汁との調和を取ってバランスも最高じゃ。


 酒を一口。……これは驚きじゃ。素直で素朴で優しい味と思っておったが。酒の味に負けないどころかイワシの味がしっかりと残る。酒とイワシが口の中で共演しとる。最後に鼻を抜ける香気が気持ちよく次の一口にいざなってくれおる。」


よしっ、喜んで貰えてるみたいだね。良かった良かった、と。オーダーは他にもいろいろあるから厨房回さないとっ。


「おーい、こっちもその煮魚くれ、それと焼き鳥」


「こっちは冷ややっことつみれ汁だ、見てたら喰いたくなっちまうんだよ」


夜は色んな種類の料理を作るからね。忙しいけど、お客さんもお酒飲みながらだから待っててくれるし順番に。取り敢えず早く出せそうな料理は早めに、っと。料理の味だけじゃなくてお店だと考えることも多いからね。要領も大事っと。


って感じでいつもよりちょっと忙しいけどパーラでの通常営業はこんな感じなんだ。気が付いたら20人。お店の席数は全部埋まってるね。今日も和みは大盛況。宴会も出来ちゃうよ?


まだまだ夜は長いからね、パーラの人の胃袋を、満たしちゃうんだよっ!

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