第6話 パーラの祝祭日 ランチ編
今日はパーラの祝祭日。日本で言うと月曜日が祝日、って感じかな?
あ、曜日は一緒だよ。そんで1カ月は4週間ぴったり。1年は12ヶ月びったり。ゲームだとこっちの方が楽なんだろうね。
ゲーム世界準拠のパーラではそれに合わせた自転?公転??分かんないけど生きていければ問題ないよね?
美味しい料理を食べて楽しく仕事して。それでその仕事で沢山の人を笑顔にしてるんだから細かいことはいいんだよ。
そう、それで1カ月のうちで月曜日が休みになる週が一回だけあるの。定期イベントだね。
祝日はクリスマスやお正月、バレンタインデーなんかかな?特殊イベントがあるからね。多分。
だって私このゲーム?良く知らないんだよ。だから当然破滅フラグなんて回避出来なかったよね。
まあ今は良かったと思ってるくらいだからそれはいいんだ。和みのお仕事も生活も本当に楽しいからね。
パーラの人は食事が大好き。だからお店も繁盛しているんだよ?それで今日。祝祭日である今日はそんな忙しい和みの毎日のなかでも特に忙しいんだ。
外食と家での食事の比率は時代や国とかで違うけど、パーラは割と家食寄りかな。ただこの日は違う。
なんか祝祭日は外食するんだ!っていう文化があってどこの飲食店も大忙し。勿論、和みもね。
その代わり日曜日はほとんど外食をしないという不思議。日曜日は自宅イベントの日なのかな?
ま、飲食店にとっては大体のお店がお休みに出来るからそういう日も必要だよね。ウチはそこに特貸を入れることがあるから大変なんだけどね。
「クロエさーん、準備は大丈夫なんです? 今日は祝祭日なのですよ? そんな余裕ぶってて大丈夫なんです?」
「大丈夫だよソル、ちゃんと仕込みは終わってるから。私は要領だっていいんだよ? 料理だけだけど。昨日の特貸と被っちゃったから品数絞って対応だよ。どうせ祝祭日でどこも何かに特化するだろうし。」
「おー、ちゃんと考えているです。そしたら今日は変形の日です?」
「そうだね、ソルお願い。今日はコンロ特化モードでやっちゃうよっ!」
「了解なのです! これはいつもテンションが上がる奴なのです」
ソルにお願いした変形は厨房のモード変更。何言ってんの?ってなるよね。私も最初はそうだったよ。
和みの厨房は凄すぎるんだよねぇ。
ソルが魔力を込めると壁や床も一緒に厨房がガタンゴトンと音を立てながら文字通り変形していく。
いかにもお料理屋さん、って感じだった厨房は沢山のコンロが並んでまるで……何屋さんだこれ?敢えて言えばカレー屋さん?
小さなコンロが大量に、そこに並べられた雪平鍋。大きなコンロは低い位置にあって寸胴鍋が鎮座してるね。
夜にはまた戻すけど、昼はこのモードで乗り切ろう。細かいことはいいんだよ。
さあ、今日は煮魚特化の小鍋乱舞で行くよ!看板出して暖簾出してOPENにして。
掃除も完璧、仕込みもオーケー、開店の時間だよっ!
「お、やってるねぇ。クロエちゃん、今日は何がおススメかな?」
「いらっしゃいませ鍛冶屋さん、今日はね、三種類しかないんだよね。全部煮魚。それでもいい?」
「煮魚! いいじゃねぇか! 祝祭日だってんであんまり手の込んだもん出したがらねぇ店が多いからなぁ。で、三種類って言ってたがどれがいいんだ?」
「お好みですけどね。鍛冶屋さんどうせ少し飲むんでしょ? 昼だから軽めのお酒にしてね。そしたら、イワシの梅煮かな?」
「じゃあそいつで。それと分かってるねぇ、エールもおくれ」
「はーい、それじゃソル、エールよろしくー」
さ、調理の開始だよ。パーラの人はお魚も食べるしご飯も食べるからね。煮魚オンリーでも全然大丈夫なんだ。
鍛冶屋さんも言ってたけど主催日は簡単な料理や一気に大量に作れる料理がメニューに並ぶことが多いからね。ウチは隙間を埋めにいくんだよ、和食処だしね。
それに煮魚ってイメージほど手の込んだものでもないんだよね。コツを抑えとけば割と簡単なんだよ?
最初のオーダーはイワシの梅煮、これも思ったより簡単なんだよ。
イワシの処理は手開きでもいいし、ちゃんと処理できればなんでもオーケー、日本ならお店でやって貰えるかも?
それで下茹でしといたイワシ、下茹でにはお酢も入れるよ。骨も食べられるくらい柔らかくなるけど荷崩れしやすくなるから注意だね。
お鍋に酒、しょうゆ、みりん、砂糖の煮物の基本にショウガと梅を入れて。水を加えて煮立たせて。
そしたらイワシを投入して落とし蓋して10分~20分弱火で煮込む。これだけ。
ポイントは処理ごとに魚の水気をしっかりと取ること。これだけ。洗ったら水気を取る。下茹で終わったら水気をとる。キッチンペーパーとかでいいよ。
これで臭みが出なくなるから。これやるだけでお家でも簡単に美味しい煮魚作れると思うよ。
味付けは人それぞれだね。甘いのが好きな人もいるし逆もいる。醤油とみりんを同じにして砂糖とお酒、水で調整が基本かな?
難しく考えないで基本から大きく外れなければ食べられるし段々美味しくなると思うよ?水気はしっかりとってね、本当に大事なことだから。
「クロエさーん、鯖味噌入りましたです~!」
「了解、そっちも作るね。ソルはホールお願いね!」
次は鯖味噌。こっちも味は好みになるね。でも基本からの調整でいけちゃうよ。
下準備してた鯖味噌を雪平鍋に入れて温める。ある程度煮詰まってきたら完成。目安は煮汁の濃度だね。少しドロッとしたら完成。
うん、分かってる。下準備が大事だよね。でもコレはちゃんと理由があるんだよ?
下準備は切り身の鯖を洗って水気をしっかりとる。何度も言うけどここ大事。
そんで基本の煮汁とショウガを入れて煮ていって、好きな人はネギとかもいれていいんじゃないかな。
鯖に火が通ったらお味噌を加えるんだけど、お玉に煮汁を取ってからそこでお味噌を溶かして加えればダマになりにくいよ。
そこで火を止めて冷ましていく。料理は冷める工程で味が染みてくからね。時間は各自で調整。私は1時間くらい。
鯖味噌は作り方としても一回冷ます工程があるからランチには提供しやすいんだよ。お店の味方だね。美味しいし。
他の煮魚も冷ませば味はしみるけど、甘辛の煮付けだと濃くなり過ぎちゃうかも?やり方は色々あると思うけどね。
「クロエさーん、鯖味噌と梅煮のオーダー溜まっちゃってますー。大丈夫です?」
「そろそろ最初のが出るよー、それと順次鍋に懸けてあるから大丈夫。あとは少し待つだけだよ。客さんたちももう少しだけまっててね?」
はい、最初のイワシの梅煮、完成だよっ!鍛冶屋さん、どうぞ召し上がれ?
「おー、きたきた。あ、ソルちゃんエール追加ね。どうせすぐなくなっちまう。飲みすぎるなって?次で終わりだから、な?さてそれじゃ早速このイワシの梅煮を喰うかな。梅の香りが酒にも合いそうだし。どれ。
おー、旨い! 甘辛くてイワシもほろほろと口の中でほどけて。骨が気にならねぇ、そのまんま食えるぜ。
イワシも身がしまってる上に脂が乗ってて旨い。味はしっかりついてるのにイワシってのは小さいわりに主張が出来るいいやつだな。
それに梅の風味と酸味。これがイワシの主張と甘い煮汁を引き締めてさっぱりと食える。酒にも合う。飯にも合う!
梅も食っちまうか。こ、こりゃあ美味い! 酸っぱすぎると感じる時もある梅だが甘い煮汁とイワシの旨味も吸ってこれはいい!
おい。飯も酒も無くなっちまったぞ?ソルちゃん早くおかわり持ってきてくれよ! え?見ればわかる?あー、そうだな忙しいよな。
それにしてもこのイワシの梅煮は最高じゃねぇか。イワシが旨い。梅も美味い、酒も飯も進む。これレギュラー入りかもしれねぇな」
おっけ、イイ感じだね。パーラの人は見た目がほら、金髪碧眼的な?そういう人が多いから梅煮と白米ってあれなんだよね。
私はもう慣れたけど。それに鍛冶屋さんは黒髪だから違和感はない、のかな?まあいいや。
イワシを美味しくするための梅なんだけど、そのものも美味しいんだよね。
「うお、この味噌煮うめーぞ! 鯖の身がしっとりとしていて。白身の魚とは思えないほどジューシーで。蕩けそうな脂の旨味が味噌と相まって、もう。
味噌とみりんの甘い煮汁に全く負けない鯖の美味しさが、ご飯を無性に欲しくさせちまうっ。ソルちゃん、ご飯おかわり! え?ちょっと待て。あ、はい」
二人の食レポに引かれてオーダーが偏ってきちゃったなぁ。アレと同じの!って皆言ってるし。
これ銀鱈は夜のおススメに回そう。お酒にも合うしね。
店内は満席。満員御礼ささもってこーい! お客さん、おかわりの注文はもうちょっとだけ待っててね。
オーダー取っちゃえば余裕も出てくるからね。ランチ仕様の厨房は全自動ご飯よそい器と味噌汁よそい器もあるし。
あ、ソルがテレキネシスで運び出した。私の目の前には20を超える雪平鍋が火にかかってるからね。ソルの活躍に期待しよう。
お客さんが座っちゃえばテレキネシスは便利だよね。私も使いたい。内なる力よ目覚めよ~、って無理か。
いいんだ、魔法の才能が無くても。和みなら厨房も食材も十分な環境が整ってるし、ランチの忙しさだって乗り切っちゃうんだからね。
祝祭日だけあってお客さんが絶えないし、夜もまだまだ営業はあるけど、いつもとおんなじ、頑張るだけだね。
祝祭日のランチはいっつもだけど、大盛況っ!なんだよっ?
本日から1日1話投稿の予定でしたが話の流れの関係で今日だけ2話投稿します。




