第3話 とんかつの決め手は?
ソース。とだけ言った場合はその範囲は広い。何かにかける調味料とか液状のものはぜーんぶ含まれる。
広義で言えばトマトソース、バジルソース、ベシャメルソース、デミグラスソース。他にも色々。
でも日本でソースと言えば、あのソースになることが多いと思う。
ウスターソース、中濃ソース。お好み焼きソース、とんかつソースなどなど。
だいたいは黒くてしょっぱい、あのソースだ。種類はスーパーの棚でひとコーナーを占めるくらいにあったりする。
「お母さん、ソース取ってー」と言ってトマトソース差し出される家は少ないと思う。面白いお母さんだと思うけどね。
そして日本におけるソースとは、主に揚げ物の味付けに用いられることが多いと思う。あとは粉もの?
そして恐らくは今回の肝となる部分でもあると思っているんだよ。
チャンさんに調査してもらったところ
「あの世界には豚肉もパンもありましたよ。小麦粉も玉子も。パン粉だって作れるでしょうね。もっとも多少お高いですが。
クロエさんが払うとなると躊躇するくらいには高いです。賢者さんにとっては余裕ですが。お金ってあると便利ですよね?
ただ調味料は少なかったですねぇ。醤油や味噌は勿論、ソースも無かったですね。揚げ物は塩か魚醤で食べることが多いみたいでしたよ」
軽くディスられながら教えてもらった情報では日本でいうところのソースはない。味噌や醤油も。
魚醬はあるんだね。しょっつるとかナンプラーみたいな。でもアレは癖が強いんだよなぁ。日本人にはあんまり受けないんだよね。
賢者さんはとんかつを作ったことがあるのかもしれない。でも、塩やトマトソースとかデミグラスソースとかで食べてるんだと思うんだ。
それはそれで美味しいし、なんなら塩でとんかつとか高級店感あるじゃん?デミグラスソースなら洋食屋さん感。
だから、とんかつ屋さんのとんかつ定食を希望したんだと思う。あのソースを付けて、揚げ物を食べたいんだと思う。
コレが魚のフライとかならね。タルタルソース派もいるし良かったのかもしれないけど。この辺は論争が起こるかもしれないから止めておくけど。
それと味噌汁、この場合は豚汁かな?もご所望だろうなぁ。
パーラは醤油も味噌もあるし、品質が高いものが欲しければカレー勇者さんのところから取り寄せる。
あそこは海産魔物も豊富だから何かとお世話になってるんだよ。その分、香辛料が少ないからカレーを希望したんだろうね。
豚汁は……アレがないんだよなぁ。でも豚汁なら代用は十分に効く。だからそこはやっぱり大きな問題じゃない。
結局は、ソースを作る。というところに戻って来るんだよね。
そしてとんかつソースの作り方なんだけど。日本にいた時のレシピを思い出してみると……
ウスターソース、ケチャップ、醤油、砂糖。とか
ウスターソース、ケチャップ、マヨネーズ、砂糖。とか
ソースを作るのにソースが必要になる不思議。これが結構多かったりするんだよ。
と言うことで初挑戦です。ウスターソース作り。
まず沢山の種類の野菜や果物を刻みまして。全部一気に鍋に投入!
そんでもって香辛料や塩やら入れて、火を通していきまして。ある程度しんなりしてきたら水を投入。投入した水にすっと色が入る。
おおっ?割といい感じじゃないこれ?
そんでこっからはピューレにするんだっけ?濾すんだっけ?まぁいいや全部試そう。
兎にも角にも料理は試行錯誤が大事!ネットは偉大だったよねぇ。試行錯誤を大幅ショートカット出来るわけだし。
そしてこのソースを発明した人も偉大だと思い知ったよ。攪拌も火加減も便利魔道具無しで作ってたと思うから。組み合わせだって全部自分で試したんだろうし。
でも!作り出したことが人がいるってことはいつか完成するって保障されてるんだよね。出来ることが分かってるなら、いくらでも頑張れるってもんですよ。
「頑張りすぎるのも良くないわ。ソースくらい魔法で作ってもいいのよ?」
突然話しかけてきたのは女将さん。さっきまでいなかったのにね。最初はびっくりしてたけど慣れちゃう不思議。
「お気遣いありがとうございます女将さん。でも、コレは自分で作った方がいいかなって。試行錯誤の間に色んなバリエーションが出来るかもしれないし。今後の料理の幅を広げるためにも、今回はここが頑張りどころだと思うんです」
「ふふっ、まあいいわ。クロエの信念もあるでしょうし。それじゃ、他に必要そうなものを置いておくから、がんばりなさい。いつも言っているけど、ほどほどにね」
それだけ言って目の前からいなくなる女将さんは、嵐のような人だよね。落ち着いた雰囲気の美人さんだし言葉もゆっくりなんだけど。
その行動はまさしく人外。チャンさん同様に底が知れない人だけど、それでも私の憧れの人で、目標だ。魔法は絶対叶わないけど、料理のことだけはいつか追いつきたい、けど。将来のことはまた今度。
今は目の前のソース作りだよね。
「ちょっと味見なのです。うん? こっちは甘い。こっちはしょっぱい。なんか全部それぞれ、まったく違う味なのです?」
「そうだねソル。ソースって広義の場合はそれこそ何千何万とあるんだよ。ウスターソースだって、果物増やしたり野菜増やしたり。塩や香辛料を多めにしたり砂糖やはちみつを多めにしたり。いくらでも調整が効くと思うんだよね。料理によってそれぞれ合うソースがあるんだから、この機会に色々試そうと思ってさ。例えば、これ」
味見用に作ってた焼き魚をほぐして2つの小皿に取って。すでに多くの種類が出来ている試作ソースから2種類を掛けてソルに渡す。味見してみ?
「これは、ちょっと甘いです。お魚には合わないかもしれないですよ。あ、こっちは美味しい。シャバシャバでしょっぱめの味がお魚に合いますです」
「ウスターソースって地球では日本じゃなくて外国で作られたんだけどさ。元祖的なソースはお酒のカクテルにだって使われてるんだよ。今回目指してる揚げ物用のソースじゃ多分合わないと思うけど。それくらい幅の広いものだって、自分で作って思い知ったよ。それにここから熟成の問題もあるし、また暫く寝れないね」
試すことは無限にあるからね。ソルが帰った後も私は色々と試した。
果物では、リンゴ、バナナ、モモ、パイン、マンゴー、デーツなんかも。レモンやミカンの柑橘も試したしその他諸々も。
野菜も、人参、玉ねぎ、ねぎ、エシャロット、セロリ、トマトその他諸々。
他には肉系の出汁や魚介なんかも試した。オイスターソース的なアレだね。
お酒類も色々。当然、香辛料も。とにかく組み合わせは無限とも思える数だし、煮だし時間に濾し方に熟成期間。
あらゆる組み合わせを試しながらもその日は近づいてくる。特貸の、その時が――
本日5話投稿の3話目となります。
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