第1話 夢の中
目の前に広がるのは大きな草木と花。
私はまだ夢の中でもいるかのように、音や空気、草花の匂いまで味わえるような鮮明な世界が広がっていた。
鳥のさえずりが遠くから聞こえる、そして風の感触までふわふわと気持ちがいい。
目の前にあるコンビニの扉ほどの高さの花の葉が木陰になっていてなんだた不思議な気持ち。
「こんな葉っぱ、見たことない…。都会じゃこんな森に行く機会すらないけど今の森ってこんな色の葉っぱも生えてるの…?ゲームの世界みたいだな…」
私は妙にリアルな夢を楽しみたくなり、自分で動いてると夢の中なのに自由に軽く動けた。
一歩、二歩と進むとそして身もいつもより軽いような気がする。
夢って普通、動きにくなったりするのにこの夢は思った通りに動ける。
軽快に足をすめていく途中、違和感に気付く。
「一歩…?…二歩…?」
一歩…?二歩……?
歩く足の感覚と足の裏に当たる地面の感覚に何かの違和感を感じる。
ふと足元を見るとその違和感に思わず大きな声をあげてしまった。
「な、…なんだこれーーーーーッ?!」
私の足、の方向へ目をやるとそこにはフサフサとしている白色の毛が見える。
…あし…?
これ、人間の足じゃなくて…まるで獣のような…。
鏡でもあればすぐに自分の姿を確認できるはず、そう思いあたりを見渡すがしっかりと草木の生い茂った森の中。
何か自分の姿を確認できるものを…!
声をあげても驚いたことがあってもこの夢は醒めない。
驚いて走り出すも森の中はまだまだ世界が広がっているようでどれだけ走っても夢は醒めない。
見たことのない大きな花、香水のようにいい香りのする実のなる木。
全てが新しくて、今まで忘れていた子供の頃のような好奇心を思い出して大人ではありながらワクワクした気持ちで探索をしていた。
どこかに人がいれば私のことを聞いてみよう、そう思って途方もない場所をただただ歩いていた。
「こんな楽しい夢が続けばいいのに…なあ」
30代目前の大人になった今、こんなに好奇心溢れるような気持ちになった事はない。
私の仕事はただの、仕事に追われまくっていたOLだった。
特に出世することも無く大学を卒業してから対してやりたいこともなく、やりがいも感じることも出来ないまま、なんとなくで仕事を続けている私。
彼氏も居ないし、友達もそんなに多い方ではない。
強いて言えばひとりで楽しめる趣味の方が好んでいて、ゲームをしたり漫画を読むことが唯一の楽しみ。
所謂、オタクなんだと自分でも理解していた。
自分のことなのに、今の自分からするとまるで他人事のようにも思えるのはきっと今のこの夢がとても心地よいからなのだと思う。
私はまだ軽やかな気持ちで森の中を歩き進んでいた。
少し歩いていると木々の無い開けた場所に出た。
そこにしゃがみ込むように座り込んでいたのはひとりの少年だった。