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79話 だめだ離れろ!そいつは寄生型の召喚獣だ!

「精霊召喚…。」

「すごいっス!」

ヒッカたちの賞賛の声にジェイクは少し誇らしげな笑みを返した。

「ヘレナは…お前と同じ風魔法を得意としていた。その切り札が精霊召喚だった。」

ヒッカは頷いた。


「あれ?風属性は炎属性に弱いんじゃないんだっけ?」

ライクが問いかける。

「そうだ。」

「それじゃ…何で風属性の精霊を呼び出したんですか?」

ライクたちの問いかけはもっともだ。

風属性は炎属性に対しては劣位属性となる。炎属性相手には魔法効果が低減することが多く、場合によっては炎属性の効果を強めてしまう。

「それは…。」

ジェイクは再び言葉を紡いだ。




ーージェイクの回想ーー

「精霊だと!?」

「ええ。」

ヘレナの前に、まるで人間の少女の様な姿の精霊が佇んでいる。その背に大きな羽を生まれ持っていることから、この世界の人間とは違うことが分かる。


「そんなもん!」

男は再び召喚獣を腕に纏わせ、変形した剣を振るった。

“♪”

シルフィードはするりと剣をかわした。イタズラっぽく笑うシルフィードは男の周りをクルクル飛び回っている。

「何だ!そんなもの!」

男は火球をシルフィードに投げつける。

“…!“

さすがのシルフィードも驚きの表情を見せ、慌てて離れる。

「がぁー!やってられるか!!」

業を煮やした男はヘレナを睨みつけた。召喚獣をコントロールしている召喚士を倒し、召喚獣と共倒れにさせようと言う魂胆なのだろう。

だが…。



「シルフィード!お願い!」

それを見越していたかの様にヘレナはシルフィードに声をかける。

“…!”

シルフィードは風魔法で男に攻撃した。男は右手に炎を湛え、風魔法を真っ正面から打ち払った。

「驚かせやがって。精霊だか何だかしらねぇが、この程度の魔法なんて俺には効かねぇな!」

“…。“

シルフィードの顔から笑顔は消えていた。それを見た男はますます調子に乗った。


「オラ!降りてこいよ!俺が焼き鳥にしてやるぜ!」

“…。“

シルフィードは風属性の魔力をそれぞれ両手に集束させている。

「へっ!やれるもんならやってみやがれ!」

シルフィードが再び風魔法を放つ。男は余裕の笑みを浮かべている。

「オラ!」

事実、シルフィードの風魔法を再び打ち消した。そしてもう一つの風魔法が男に迫る。だが、男が風魔法を打ち消そうとした時、風魔法は急転回し、男の地面を抉った。

「うお、お!」

足元が崩れて男は転んでしまった。

「クソが!ふざけやがって!!」

男が逆上する。

「クソがクソがクソ…」

男は背後から感じた違和感に振り向いた。



「はぁああああ…はっ!」

ジェイクは炎属性魔法【フレイムプライド】を発動した。全身を炎の闘気で纏う、それはジェイクの切り札だった。



「…この。くたばりぞこないがぁー!」

「おおお!」

ジェイクが両手で鋭く剣を振り下ろす。重々しい金属音が響く。

「…。」

ジェイクは攻撃の手を緩めなかった。

「シルフィード!今よ!」

そこにシルフィードが風魔法を新たに発動させる。だがそれは、男に向けてのものではなく、ジェイクに向けられたものだった。



「くらえ!」

ジェイクの振るう剣に合わせて、シルフィードの風魔法がユニオンする。

ボン!とジェイクの炎が一段階強力なものとなり、男に牙を剥く。

「ぐぐぐ。」

男は焦りを感じていた。ジェイクは熱い炎を纏いながらも、まるで氷のような冷静さで男を追い詰める。

「クソがぁー!」

「何!?」

男の雄叫びともに、男の纏う魔力が高まった。召喚獣から伸びる触手が一段と太く大きくなり、男の底力を増幅させる。

「オマエ…。オレノテキ。」

「ぐっ!」

男は召喚獣の力と己の魔力で、まさに悪魔の如き姿を象った。男の纏う魔力は、ジェイクの纏う炎の闘気をも貫き威圧感を与えた。



(こんな魔法…、そんなに長くは持つまい。耐え凌げば勝機はある。問題は…。)

ジェイクはヘレナの方に目を向けた。ヘレナは少し疲れの見える表情だった。

(このままではまずいな。短期決戦で決めないとやられる!)



男が発動している魔法は、恐らく寄生されている召喚獣によって強制的に全魔力を放出しているものだと推測される。いわば蝋燭の炎が最後に燃えさかる時のように。つまり、このまま何もしなくても、放っておけば遅かれ早かれ男の魔力切れで勝てると言うことだ。

ただ、ジェイクもそれは同じ条件だった。【フレイムプライド】は強大な敵を撃ち倒すための切り札であり、持ちうる全ての魔力を使う。それに今はヘレナの召喚したシルフィードからもサポートを受けている。ヘレナの表情から、シルフィードを使役できる時間も多くは残っていないようだ。


(…。)

ジェイクは今一度剣を握りしめた。答えは決まっていた。今はこの悪魔を撃ち倒すのは自分たちしかいない。仮に逃亡しても無事に逃げ切れるかは分からない。よしんば逃げることに成功しても、周辺の町に被害が及ぶことは明白だ。



(みんな…。)

それに何より、悪魔に背を向けることはジェイクの聖騎士としての誇りが許さなかった。ジェイクを慕ってくれていた団員たちは相次いで命を落としてしまった。その彼らの想いに報いるためにも、ジェイクは強くあらねばならなかった。



(みんな…今一度、俺に力を貸してくれ…!)

ジェイクの魔力が限界を超え、凄まじき炎の闘気となった。

「うおおおお!」


(そうよね。諦めるなんて貴方らしくないわ。)

「私たちも負けてられないね!頼んだわよ!シルフィード!」

“!!”


三位一体となったジェイクは剣聖の如き猛攻を仕掛けた。

「俺は負けられない!はあぁぁぁ!」

「ソンナモノ!」

凄まじき剣戟の応酬と魔力の衝突。空気すら焦げるほどに熱量が高まったその攻防は、やがて終わりを迎える。



「うおおおぉー!」

ジェイクの剣がついに男が体勢を崩すことに成功する。

(終わらせる…!)

ジェイクが剣を振り下ろす。が、勝機を見出したことで集中力が瞬時途切れる。途端に全身を纏う凄まじき炎の闘気が一時的に消滅する。ジェイクの体力も魔力も既に限界だった。すぐさま炎の闘気を纏い直そうとするも、男がその好機を逃すはずが無かった。


「ソコダ!」

「っつう!」

バッキィンとジェイクの剣は弾き飛ばされてしまった。宙を舞うその剣は、ジェイクから数メートル先にまで吹き飛ばされた。ジェイクは瞬間、男の圧倒的な力に恐怖した。



(こんな…。ここでやられてしまうのか?切り札も通じないどころか、一矢報いることもできずに…。そうだ、ヘレナは?)

目線をヘレナに動かす。ヘレナも表情が苦悶に満ちている。限界は近そうだ。

(ここで終わるのか?俺は?こんなところで…。)

「…シネ。」

男が剣を振り下ろそうと剣を掲げた。だがその剣はジェイクに振り下ろされることはなかった。



「!?」

男は背後から心臓を貫かれていた。

「お前…。」

「うらぁー!」

「ギース!」

男の背後に回っていたのはギースだった。男に寄生した召喚獣がギースに触手を伸ばす。

「だめだ離れろ!そいつは寄生型の召喚獣だ!」

「…。」

だがギースは怯むことはなかった。それどころか、なおも一歩踏み込んで剣を捻った。

「ア、アア…。」

男も限界だったのだろう。ついに魔力が消え、元の人間に戻ったかと思うとそのまま地に倒れ伏した。

ーー


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