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77話 俺は婚約者と団員、そして親友を失った

「そうして俺たちは村に入った。思っていたより被害が大きく、早急な対応が必要な状況だった。」

「村の人たちはどうだったんですか…?」

「幸いにも非難は完了している様子だった。俺が辿り着いた時は静かなものだった。」

ほっと胸を撫で下ろすフィリー。

「そうは言っても召喚された悪魔が潜んでいると思われる状況だったからな。油断はできなかった。」

「それで…、どうなったんスか?」

「…標的は家畜を飼っている小屋にいた。」



ーージェイクの回想ーー

村についたジェイクたちは斥候メンバーと合流した。

「標的はあの中です。対象は人型でした。人型の召喚獣もしくは、憑依型の召喚獣と思われます。」

「分かった。」

(厄介だな。)

ジェイクは嫌な予感がした。



対象の召喚獣が人型の場合は、相手にそれなりの知性がある場合が多い。それ故に対処に手間取る場合が考えられる。下手にこちらの装備を奪われてしまうと危険度が増し、より対処が困難になる。


対象の召喚獣が憑依型の場合は、まず憑依された人間を救えるかがポイントとなる。憑依された人間を救えるのならば、可能な限り救い出したいところだがここでも問題がある。それは対象の召喚獣の送還についてだ。送還魔法で対象の召喚獣だけを送り還すことができれば良いのだが、話は簡単ではない。召喚獣を引き剥がすことで何らかのダメージが憑依されている人間に残る場合がある。特に人間の血液や魔力を吸い取るタイプや魔力核に寄生するタイプは、引き剥がしても人間側に重大な障害が残ったり、最悪の場合は命を落とすこともありうる。

また、対象の召喚獣が憑依している依代を変え、他の人間に取り憑くこと危険性もある。稀に複数の人間に取り憑く場合もある。ただ、今回は対象の被害が同時多発的ではないことから、単独で行動している可能性が高い。そのため、複数の人間に取り憑くとは考えづらかった。



「ヘレナ、君は下がっていてくれ。」

「分かったわ。」

「ヘンデル、アルド。お前たちは周囲を囲め。対象を逃すなよ。エルガ、お前はヘレナをサポートしてやってくれ。」


それぞれが持ち場へとついた。ジェイクたちは標的が潜むとされる小屋を取り囲み、様子を伺った。小屋の中から微かに音がする。だがそれよりも鼻につく臭いがジェイクの心を乱した。

(何をしている…!?)

ジェイクがさらに近づこうとしたところ、音が鳴り止んだ。

(気付かれたか?)

帯剣していた剣を引き抜く。


「誰だ?そこにいるんだろ?」

低くドスの効いた声だ。人語が聞こえてきたことから、恐らく憑依型の召喚獣だとジェイクは感じた。

「我々はゼムゼート王国の聖騎士団だ。私はウリルター方面第五団団長、ジェイク=アンダーソンだ。最近発生している召喚獣によるものと思われる被害の調査をしている!」

「…。」

ジェイクの呼びかけに、小屋の中から反応は無かった。

(さあ、どうする?)

「…。」

小屋の中から男が出てきた。

(この男…!)


「何だ何だ?おっかねぇな。寄ってたかって弱いものいじめか?俺は飯を食ってるだけなんだぜ?」

その男の手には食べかけと思しき肉が握られていた。だがそれよりも…。

「さっきからジロジロと気味悪いなあ。お?」

ジェイクたちが男に注目するのは無理もない。その男はまるで大きな蜘蛛のような生物にまとわりつかれていた。男の左肩に陣取るその生物から伸びる触手のような器官が男に数本突き刺さっている。


(この召喚獣…いやこの男、一筋縄では行かなそうだな。)

「何見てるんだっ!」

男は急に襲いかかってきた。まるでボールを投げるかのように火球を生成してら投げつけてきた。

「何っ!?」

咄嗟にジェイクは盾で火球をいなした。

(なんて奴だ。)

咄嗟に盾で受けれたものの、その衝撃が左手全般にビリビリと響く。それに何より、恐るべきはその魔法発動までのタイムラグの無さだ。男は魔力を高める様子もなく、いきなり高威力の魔法を発動してきた。発動のそれは、もはや投げつけると評するほどの速さだった。

「気をつけろ!コイツは恐らく憑依型の召喚獣に操られている。攻撃をまともに受けるな!」

「へえ?」

男は不敵に口元を歪めた。

「誰が操られてるって?」

「何っ!?」

「俺は操られてなどいないさ!俺の意思で!好きにやらせてもらってるだけなんだよ!」

再び男が火球を投げ放った。

「くっ!」

ジェイクは再び盾で火球を逸らした。

「ぐわ!」

「!?」

ジェイクが逸らした火球は弧を描き、アルドに直撃していた。

「…まずは一匹。」

「やめろぉー!」

「消えちまいな!」

男はこれでもかと言わんばかりに、火球を続け様に放った。ドン!ドン!とその衝撃に大地に振動が伝わってくるほどだった。

「貴様ぁー!!」

「はははっ。生意気なツラした坊ちゃん見てると虫唾が走るぜ。」

「貴様は…許さん!」

「おうおう。怖いねぇ〜。」

男はわざと怯える演技をし、ジェイクを挑発する。男に真っ向から挑むジェイク。

「ひゃははははっ!」

男は連続で空に火球を打ち出した。

(何をするつもりだ?)

「黙って消えやがれ!!」

男が両手を一気に振り下ろした。


「しまった!ヘレナー!!」

火球の雨が地面に降り注ぐ。あまりのその衝撃にジェイクはただ黙って耐えるしかなかった。

「くそ!」

巻き上がった粉塵の中、男が近づいてくるのが分かる。ジェイクはありったけの魔力を剣に込めた。

ーー


「それで、その男はどうなったんですか?」

ヒッカが尋ねた。

「そいつ自体は倒すことができた。」

「じゃあ…。」

「いや、話はそう簡単では無い。」

「え?」

「その戦いで…。」

ジェイクは振り絞るように言葉を紡いだ。

「俺は婚約者と団員、そして親友を失った。」

ジェイクの言葉に皆は押し黙ったままだった。

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