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4話 貴方に見てきてもらいたいものがあるの

空に飛び立ったドラゴンは静かにヒッカを見つめていた。

「…。」

「グルル…」

「…!」

ヒッカは思わず構えをとった。

「ガァァァァ!!」

だが意外なことにドラゴンは咆哮をあげた後、どこかに飛び去ってしまった。

「ふぃー。腰が抜けたー!」

そう言ってへたり込むのガルダスだ。

「ふう。確かに、ちょっと疲れたね。」

笑顔で返すヒッカも心持ち疲労が窺える。

「お前ら大したもんじゃねぇか!」

ヴェルンが二人に近づき、どっかと腰を落とした。疲労困憊している人間がここにもいた。「正直コイツは参ったね。流石に終わりだと思ったが、それをお前らときたら…。笑っちまうよ。ユニオン魔法の試験だったら二人とも優だな!」

「へへっ。俺らのコンビもなかなかじゃないですか?」

「俺たちも必死でしたからね。」

互いに健闘の言葉で讃えあう。

「ともかく!一旦、修練塔に戻るか!」

「うす!」

「ですね。」

他の教師や生徒達と修練塔に戻っていく。やがて、王宮騎士団が到着した。


「大丈夫でありますか!?」

「これはこれは。こちらとしては修練塔が派手にやられましたけど、ごらんのとおり全員無事です。」

「そうですか。それは何よりで。」

「ところであんなドラゴン見たことないんですが。一体あいつは何なんです?あれだけの巨体なのに動きも早く、特大の炎魔法を受けても鱗が赤くなるだけで効果的だったようには見えない。」

「それについては王宮魔導士のシェリー=ロイル女史からの書簡がある。これを。」

王宮騎士団の騎士が筒をヴェルンに手渡した。

「そしてここにヒッカ=ロイル殿はおられるか?」

「はい。ここです。」

「おお。これは貴殿宛にと預かっている書簡だ。では確かに渡しましたぞ。」

そう言ってヒッカ宛にも筒を渡した。

「母さんが?何の用だろ??」


「何!?」

ヒッカが筒を開けようとした時。に書簡を読んだヴェルンが大声をあげた。思わず手を止め声の方向を見るヒッカ。

「校長!すぐに全員を集めてください!!」

その語気の強さから、ただならぬ事態を察したヒッカ。


教師と生徒が集められ、書簡の内容が公表された。その内容は、にわかには信じ難いものだった。北の大地では作物が生育不良になっていること。それだけではまれにある事象だが、魔獣が頻繁に現れ、さらに魔物の出現も僅かながら確認されているとのこと。そして巨大な影の存在。この内、巨大な影とは飛行生物と思われるとの見解であった。が、今しがたその巨大生物であるドラゴンと対峙した教師や生徒達は、その脅威を肌で感じていた。


一般的に魔獣とは、野生生物が何らかの理由で狂暴化したものを指す。魔物の出現にしても同様であり、魔物とは大きく分けて、魔獣がさらに強力に成長したパターンと、生物では無いものが周囲に害をなす存在になるパターン大別される。どちらも危険度は魔獣の比ではない。今回のゴーレムの出現はこちらに当たる。

そして書簡の最後に、当面の間学園は時間を短くして開園することが指示されていた。普段の行動についても、可能な限り単独行動や早朝夜間の行動を慎むようにとも記載されていた。王宮騎士団が見回りを強化するとも書かれていたが、自衛のためということでもあろう。皆は黙って書簡の内容を聞いていた。


「とんでもないことになってきたな。」

ガルダスが顔をしかめながら声をかけてきた。

「そうだな。あのゴーレムもやばかったけど、あのドラゴンなんてどうすれば良いんだ…。」

「ま、その時はその時でしょ。」

「結論そうとは言え、もっと魔法を磨かなきゃなぁ。」

「だな。そう言えば、お袋さんから手紙来てたんじゃねぇの?」

「ああ。そう言えば見てなかった。」

ヒッカは母からの手紙を広げた。


「貴方に見てきてもらいたいものがあるの。王宮から北西に向かった先にあるヒルビルド山に行ってきてくれない?そこにある滝がどうなっているのかを教えてほしくて。山頂付近の山小屋に観測隊の人たちがいるから、案内を頼むと良いわ。最近、魔物の活動が少しずつ活発になってきてるように見えるの。もしかしたらマナのバランスが異変を起こしてるのかも知れなくて、ね?もしかしたら私やお父さんが家に帰れない日が続くかもしれないから、確認結果は王宮の第一研究室宛に送ってね。貴方なら大丈夫だと思うけど危ないと思ったら引き返してきてね。

追伸、私たちが帰ってくるまではご飯は適当に済ませててね。ごめんね。」


(…っと。ざっくり言うと探索に行けってことか。)

「ん?どうした?ヒッカ??」

「ああ、ちょっと遠足に行ってこいってさ。」

「何だそれ?」

間の抜けた声を出すガルダス。

「明日、ヒルビルド山まで行ってくるよ。」

「ずいぶん遠いな。大丈夫か?」

「多分ね。この後しっかり休んでいくさ。流石に今日はもう魔力も体力も厳しいかな。」

「確かに。俺も同じく魔力切れだ。」



学園を出たヒッカは簡単に明日の準備のために街に向かった。幸いにも必要な品は揃えられそうだ。

「これでよし。」

数日間の食糧も用立てたヒッカは家路についた。いつの間にか辺りが薄暗くなっていた。「兄さんおかえり!」

弟のローグが声をかけた。ローグは土属性を使う土術師だ。特に自己強化を得意とする重戦士タイプなこともあり、ヒッカとは別の学園に通っている。

「ただいま。母さんから手紙は来た?しばらく帰ってこれないかもってさ。父さんも。ついでに俺は明日朝一でお使いだから留守番よろしくな。」

「うん。僕の手紙にもそう書いてた!」

「そうか。」

二人で準備して食卓に着く。二人だけの食卓は久しぶりだった。



ヒッカは一通り明日の準備を終えてベッドに入った。

(明日は大変かもな…。)

そう思いながら母の手紙を読み返した。ヒッカは母の記した二枚目の手紙の内容が気になって仕方がなかった。

(一体これはどういうことなんだ?)

ヒッカは手のひらに風魔法を発動させた。優しく風が舞う。

(…ちょっと今日は疲れたな。明日も早いし、寝るか。)

ヒッカは薄れゆく意識の中で、手紙の内容を反芻しながらも、いつの間にか眠りに落ちていた。


ここまでお目通しいただきありがとうございます!

ちょっとでもいいなと思ったら、評価ポチっといただけると嬉しいです。


よろしくお願いいたします!

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