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3話 へへっ。俺もやるもんでしょ?

「【サイクロン!】」

ヒッカの放った風魔法の威力は凄まじく、そのまま他のゴーレムも同様に破壊した。土でできたゴーレムに属性優位を取れる風魔法は効果的だと言うことを差し引いても、十数体のゴーレムを一撃の元に破壊したヒッカの魔法に、皆はただただ唖然とした表情を浮かべている。

「すごいぜ!ヒッカ!!」

真っ先に声をかけてきたのはガルダスだ。

「ああ、何とかうまくいったよ。」

そう言いながらヒッカは思わず座り込んでしまった。

「あ、ちょっと動けないかも。」

「なら、肩貸してやるよ。ほら。」

「ああ。ありがとう。」

ガルダスの肩を貸りて立ち上がるヒッカ。



そこに何かの飛翔体が影を落とした。ヒッカがその影に気づいた瞬間、突風で吹き飛ばされた。

「うっ」

思わず空を見上げたヒッカの目に飛び込んできたのは巨大なドラゴンだった。

「ゴギャァアアア!」

耳をつん裂く轟音にも似た鳴き声が辺りに響き渡る。

「なんだ…あれ…。」

小型のドラゴンなら何度か見たことはある。あれは大型のドラゴンなのか?

「ヒッカ!来い!!」

ガルダスに手を引かれ、ヒッカは魔法障壁の中に入った。ドラゴンは魔法障壁に体当たりを仕掛けてきた。ただの一撃で魔法障壁に亀裂が走った。


「手が空いているものは今すぐに魔法障壁に給魔してくれ!!」

ヴェルンが叫ぶ。

「急げ!」

ヴェルンの大声に自失呆然となっていた生徒達が魔法障壁の修復を行った。魔法障壁の亀裂が直っていく。そこにドラゴンが上空から勢いをつけて降下してきた。

「間に合うか?」

魔法障壁の亀裂は修復されたがその直後、ドラゴンがその巨大な体躯をぶつけてきた。ドラゴンの二度目の体当たりで魔法障壁はあっけなく破壊されてしまった。

「【サイクロン!】」

ヒッカは思わず風魔法を放った。幾らかドラゴンの外皮を切り裂いたが、ドラゴンは、たちまちは姿を翻し、天高く登った。

「何をする気なんだ?」

ドラゴンが首をもたげ、超高音と共に衝撃波を放ってきた。ヒッカは咄嗟にかわしたが、放たれた衝撃波は修練塔の壁に穴を空けた。

「あんな上空にいるのに…何て威力なんだ。」

ヒッカは呟きながら、ドラゴンが第二射を放ってくることを直感で感じた。


(この方向はどこにも逃げ場がない。逃げても他のみんなが巻き込まれる。)

ヒッカは再び風魔法を放った。それと同時にドラゴンも衝撃波を放った。大地が荒れ狂うほどの衝撃ではあったが、ヒッカの魔法は見事ドラゴンの衝撃波を拡散することに成功した。が…、さすがにヒッカも疲れが見えてきた。呼吸が落ち着かない。

(どうする?さすがに撃ち合いは分が悪い。だからと言って、あの距離までサイクロンをぶつけるのは厳しい。いっそのこと、距離を詰めて至近距離で…。)

その時、ドラゴンは再び衝撃波発射態勢に入ったように見えた。

(こうなったら、やるしか…!)


「【エアライド!】」

ヒッカは高速移動の風魔法を唱えた。ヒッカは風をその身に纏い、たちどころに空を駆けていく。急に自分に迫る敵対者を見て、ドラゴンが一瞬怯んだ。が、衝撃波は放たれた。

「【サイクロン!】」

今日だけで何度目の発動だろうか。咄嗟に迎撃の構えをとり、ヒッカは再び風魔法を放った。風魔法は衝撃波を打ち破り、ドラゴンに魔法をぶつけた。だが、無理な体勢で強引に放った魔法に比べるとやはり威力は劣るのは明白だった。ドラゴンにはかすり傷程度の傷しか与えられていなかった。

(くそっ。コイツ、ヤバい。滅茶苦茶強い…!)

「ヒッカー!下がれー!!」

ヒッカは思わず後退しながら声の主を見た。ヴェルンが炎魔法を構えているのが見えた。ドラゴンはまだ気づいていないのか、ヒッカを睨みつけているままだ。ヒッカはドラゴンから距離を取りつつ、ヴェルンの炎魔法の射線軸上に誘導した。

「ヒッカ!離れろ!!」

ヴェルンの声を合図に、ヒッカはドラゴンから距離を取った。

「くたばれ!!」

ヴェルンが炎魔法を放つ。


さしものドラゴンも回避は間に合わない。はずだった。こともなげにドラゴンはその体躯を器用に羽ばたかせる。炎魔法の射線軸上から外れてしまった格好だ。

「くっ!」

ヴェルンが険しい顔をした瞬間、ヴェルンの炎魔法が爆発した。ドラゴンの背中に熱風と衝撃が伝う。

「へへっ。俺もやるもんでしょ?」

「ガルダス…!」

ガルダスは自慢の炎魔法を唱えてヴェルンの炎魔法にぶつけていたのだ。大きく体勢を崩したドラゴンは地上へと落下した。

「よし!今だ!」

「行くぜ!」

ヒッカとガルダスはそう叫び、得意の魔法を放った。

「【サイクロン!】」

「【メギドフレア!】」

荒れ狂う風と灼熱の光球が一つに重なり、大きな爆発を巻き起こした。

「グガァァァ!」

ドラゴンのうめき声が聞こえる。

「どうだ…?」

「手応えはあったかな。」

噴煙の先を見据えるヒッカとガルダス。

「「!!」」

凄まじい風が巻き起こり、二人は思わず構えをとった。

「グ、ガァァァァ!!」

体の一部が赤熱化したドラゴンが空へ飛び立つ。

「そんな…」

ガルダスの顔に狼狽が窺える。

「…。」

ヒッカは無言で彼方のドラゴンを見据えていた。


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