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卒業後

第三十四章 大学入学


前章で、二人の物語の一様の終止符を打ちましたが、その後の物語を抜粋してお届けしたいと思います。 


 初めてのデートから、二人の距離は本当に近くなって、何も用事がない時は、二人のデートの時間となっていた。もちろん一度だけ、楓と春香が同伴した事があったが、それは、バレンタインのお返しのホワイトデーの買い物を一緒にした時だった。彼女持ちの身分なので、何が欲しいか尋ねた所、誕生日に貰ったクリームが又ほしいとのリクエストを頂いたために、琴葉を含めて四人でショッピングモールへ繰り出して、本人達と専門店に出向いて、お気に入りのハンドクリームやリップクリームを選んで頂いて、ホワイトデーの贈り物にした。この時、高校生として四人が揃って出かける最後であった。このお出かけの時も、何故か楓と春香が卓也と腕を組んで歩いていたのだが、琴葉と何やら取引がされたようで、その光景を後ろから琴葉は嬉しそうに見ていた。このお出かけ以外は二人だけのデートで、分かれる時は、別れのキスをする事がいつの間にか、お約束になっていた。卓也は恥ずかしいからやめたいのだが、琴葉のせがむ顔にいつも負けて、公園の中で人がいてもキスを求めて来る琴葉に困っている卓也だった。

 4月、大学の入学式があった。卓也・琴葉・楓・春香は、それぞれ、別々の大学に進学していた。もちろん自分が目指す将来の為である事は事実だが、琴葉は、卓也と同じ大学に進もうとした経緯があったが、自分の夢を捨てないでほしいとの言葉に、一緒の大学は諦めて、工学部建築学科がある大学にしていた。卓也自身プログラミングは、一人でも大丈夫なので、経済と経営の事を学べる大学を選んでいた。春香は看護師になる為に看護学科に進んでいた。楓は、物を販売するために商学部のある大学に進学していた。それぞれ自分の夢を叶える為に選んだ道をまっすぐに突き進んでいた。楓と春香はサークルに入部して大学生活を満喫していたようだが、琴葉は、部活やサークルに入らず、ほんとに帰宅部をしていたようだ。ウエイトレスのアルバイトはしていたようだが、卓也といる時間を削る気はなく、何よりも卓也との時間を優先していた。卓也は、プログラミング関連のサークルに体験入部したようだが、自分には合っていないと判断して以降、帰宅部をしていた。サークル活動では、全く自分の為にならないと判断した為だったが、なんと、前島健太が同じ大学に入学していた事を入学式でばったり会って知った。お互い、進路については話をしなかった事を思い出して、大笑いしていた。

 入学式当日は、卓也は一旦北島家によって、琴葉と一緒に家を出て、記念写真を撮ってから、それぞれの大学に向かって行った。お互い、家から通える大学を選んでいた。式の夜はささやかながら「おめでとう」の会食が行われ、父のはしゃぎ方は尋常ではなかった。娘の彼氏なのに、すでに息子扱いをしている父に、まだ結婚も、いや婚約すらしていないと、突っ込みを入れたくなる琴葉だった。

 琴美と幸樹は、何かいつもと違う事に本能で気が付いていたのか、なかなかいつものように膝の上に座らなかったが、今までの様にしていいのだと気が付いてからは、さらに卓也にくっついていたので、琴葉は特に琴美を卓也に近づけないように必死に防御している姿がほんとに可愛らしく母は見ていた。当の卓也は全く気が付いていなかったが。

第三十五章 ・・・・・


 卓也が十九歳の誕生日を迎えた時、卓也は琴葉との関係をどう進めたらいいか迷っていた。キスは十分にした。でも、その先の事を考えない日は無かったが、どうしていいか分からなかったので、誕生日の日に誘ってみたら、了解してくれたので、ホテルの前までは行ったのだが、やはり琴葉の覚悟が出来ていなかったので、ホテルの前まで行って帰ってきたのが最初のアタックだった。ただ、今度は、琴葉の十九歳の誕生日の日に、琴葉から誘ってくれたので、慎重に事を進めて、晴れて二人は結ばれる事となる。

 その後は、定期的にいや、あまり琴葉が積極的では無かったために、毎日ではなかったが、やはり、抱き合う幸せは琴葉の方が大きいようで、琴葉が求める時だけ結ばれていた。卓也から求める事は自重していたのであるが、卓也も男の端くれ、琴葉を見て欲情しない方がおかしいのだが、会う度に求めるのは、色欲に溺れていると言われるのを恐れて、自重していたのである。琴葉も、会う度におねだりする事に抵抗があって、いつも抱きしめてほしいのに自重していた。

 此の頃から琴葉は、平日には、自宅に帰宅していたが、週末は卓也の部屋に入り浸っている琴葉の姿があった。さすがにこの時ばかりと求め合ってはいるようだが、普段の日に求め合う事は無く、抱きしめたい、抱きしめられたい気持ちを抑えて、会う日々が続いていた。まあ、ちゃんと避妊はしていたようだが、母が、琴葉に避妊の指導をしていたようで、自分が失敗をしていたので、口うるさく言って避妊の方法を母として、いや、女として伝授していた。

 夫婦の夜の営みになった時は、一時は今まで我慢していた分、毎日求める琴葉の姿があったが、それをほんとは嬉しいのに、その気持ちを隠して、仕方がない振りをして求めに応じている卓也の姿があった。それでも、なかなか子供は授からなかったのは、琴葉が一番気にしていた事ではあった。



第三十六章 成人式


 それから一年、二人は二十歳になった。琴葉が二十歳になった時、卓也も一緒に記念写真を撮りに写真館に出向いていた。卓也は、琴葉の晴れ着姿を成人式前に生で見ていた。それは、この世の者と思えない程綺麗だった。そばで見ている父は、人目をはばからず、大泣きして母に怒られていた。琴美と幸樹はまだ小さいけれどそんな父の姿にあきれていたのか、感心していたのか分からないが、幸樹は父を慰めていた。

 その後、本来の成人式は、大勢のクラスメイト達との再会の場所となったが、やはり、琴葉・楓・春香が目を引く存在だったのは間違いなかった。大人の女性に変身して美人になった女子生徒もいれば、そのままの女子もいたので、なかなか面白かったが、男子が見栄えしなかったのは当然かもしれない程、女性陣の輝きがすごかった。もちろんその夜は夜通し騒いだのだった。

ちなみに、卓也は楓と春香に久しぶりに会っていた。琴葉は、何かと二人に会っては近況報告をしていたようで、もちろん卓也との事がほとんどだが、何故か、卓也には二人はあっていなかった。これから、卓也とデートだと聞かされても、二人は卓也に合わずにいた。卓也は琴葉から二人の写真を見せて戴いていたので、久しぶりに会っても直ぐに、楓と春香と認識できていた。

 此の三人が揃っているのだから、自然に周りに人が集まるのは当たり前なのかもしれないが、一緒に記念写真を撮る光景が見られた。中には一緒に撮るときに、肩に手をまわして怒られる一幕もあって、爆笑する様子が写真に収められていた。

 琴葉は、そのまま大人の女性へとなっていて、ほんとに変わらない美しさを保っていた。楓は、大人の女性へと変貌していて、直ぐには楓だと気が付かないくらいにさらに美人になって、その上に、可愛らしさもプラスされて、反則レベルになっていた。春香は、琴葉と同じように、そのまま大人になって、さらに可愛らしさが際立つ存在になっていた。

 



第三十七章 起業


 成人式当日、北島家で記念写真を撮った後、大事な相談があるとの事で、次の休みの日に北島家に赴くと、北島の父から、起業の話があった。要は、父の会社の後を継いで卓也が社長として会社を継いでくれとの事であった。卓也も二十歳になったので、問題はないとの事で、いつでも起業できるように準備はしてあるとの事。起業しても学生優先だから、大学卒業するまでは社長一人の体制でも構わないとの事であった為、卓也は「古城企画」と言うパソコンに関わる全てを請け負う会社を設立して社長に就任した。大学を卒業するまでは一人でする事を決めて、船出したのだが、ここで以前おこなったシステムが気に入ってくれたホテルから、システム開発の依頼があり、期間は設けない事を条件に受ける事にした。ホテルの入館システムに加えて、退館システムを一から作る作業なので、時間に余裕が欲しかったのであるが、大学卒業後は改めて契約する事となった。かなりホテル側が譲歩して頂いたようで、卒業パーティーで使ったシステムがかなり気に入って頂いた様だった。授業の合間にホテル側の要望を聞きながら、システムの構築を進めていた。卒業前には、試作システムが完成して、使用した所、改善すべきところはあるがおおむね合格点を戴いて、今度新しく建てるホテルの、システムの開発までさせていただく事となった。

 嬉しい事に、卓也の起業を聴いた元部下が、卓也が起業するのを待っていましたと、現在働いていた会社の仕事にけりをつけて、転職してくれたのである。会社の人物で、面識のあるのは山根夫妻だけと思っていたが、一緒に映った写真を見せられて、面識があった事を思い出して、若手の中でも、父が頼りにしていた人物だと思いだしていた。ほんとに父の事を尊敬してくれていた事を認識して、安心できる為、ホテル側の依頼を受ける事にした。 


第三十八章 卒業と就職


 大学の卒業式は、北島ご夫妻が海外出張でいなかった為、穏やかに過ごせたのであるが、出かけるときはほんとにうるさかったので、式当日はいなくてよかったと、琴葉は心の底から思っていた。人生最後の卒業式なのだが、その後の期待と不安の方が強くて、その日だけは、それなりにはしゃいだが、それで終わりのような感じで少し寂しい気がして、北島の父の存在が本当にありがたい事に気が付いていた。

 琴葉は、父がいた会社の設計部門に就職、北島の父は新たに作られた子会社の社長に就任していたので、同じ会社ではないがグループ会社ではあった。

 春香は、無事看護試験に合格、関連病院で看護師として働きだしていた。

 楓は、懲りない女だった。卓也の会社は当初の予定より社員が増えていた。卒業した時には五人の社員を抱えていた。もちろんホテルの依頼をこなすためだが、社員を増やすと初期投資が莫大になるので、よく考えなければならないが、卓也の貯えと、ホテル側の支払いのおかげで、社員を増やす事が出来ていた。社員の中には、クラスメイトの姿もあったが、人が増えると事務系統の仕事をする社員が必要と思い募集をすると直ぐに応募があった。応募者に合って驚いた、楓が来たからだ。楓はなに食わぬ顔で面接に来ていた。立ち会った人は事情を知らないので、断る理由が全くないとの事で採用する事となり、晴れて卓也の会社の社員となった。元々楓は事務系統の仕事の為にスキルを磨いていたのだが、卓也が起業した事を聞きつけた時、会社の事務に必要な資格を習得すべく頑張っていた、大学で資格を取れるものは落とさず取って、それ以外は自力で勉強していた。特に公認会計士の資格は魅力的で、まだ、卓也を諦めてはいなかったようだ。

 春香もまだ卓也の事を諦めきれていない節がある。大学時代、一度も彼氏を作らなかったようだからだ、卓也と比べて落胆する日々が続いていたようだった。

 それぞれの思いを胸に社会人として歩き始めたのであった。






第三十九章 プロポーズ


 働き始めて最初の琴葉の誕生日の日に、卓也は琴葉にプロポーズをした。もちろん飾らない「「僕と結婚してください」とはっきり申し込んだのである。その場で琴葉に泣きながら抱き付かれて承諾して頂いて、その足でご両親の所へ、次の年の六月に式を挙げて結婚する事を報告して承諾頂いた。

 直ぐに、楓と春香に報告が琴葉からされると、二人は、飛ぶが如く駆け付けて、ほんとに飛んできたのかと思うくらい早かったのだが、二人のほんとに嬉しそうな笑顔に琴葉は救われていた。もちろん、披露宴に友人代表で出席するのは明白な二人は、何をするかその場で話し合っていた。だが、友人がどれだけの人数になるか分からないので、出し物については、一旦保留となった。

 婚約の報は、すぐさま周りに広がって、祝福の嵐だった。もちろん同級生、クラスメイト達の反応は早くて、直ぐに二次会の段取りを開始するほどであった。琴葉にあこがれていた男子、卓也に密かに恋心をいだいていた女子、いろいろな思惑が交差する、婚約の報だったが、それをねたんだりする者はいなく、ほんとに心から祝福していた。

 結婚式当日、それは、それは、琴葉の花嫁姿は言葉に表す事など出来ない程綺麗だった。そう、ただ綺麗だったとしか言葉が見つからない程、綺麗だった。同級生たちによる二次会とそれ以外の人達による三次会が行われた。三次会は当日、二次会が後日行われる異例の形を取っていた。 

式や披露宴については、二人で考えて決めていった。もちろん父や母に相談したり、友人にも 相談したりと、自分たちで案を示しての相談をしていた。 

結婚式には、新郎の友人代表で、健太と公平が出席、この二人は、卒業後も連絡を取り合う親友であった。もちろん、新婦の友人代表は、楓と春香だったが、札幌の魚前寿司のご家族を招待したのだが、お店を休めないとの事で、代表で親友の夕子だけが新婦の友人として出席していた。久しぶり会う四人はお互いの報告をして、同窓会気分だったが、ただ、四人で大学時代に一度札幌に遊びに行った事があり、夕子も遊びに来たことがあるのだが、女性が揃うとおしゃべりが止まらないのは、いつの時代も変わらない風景なのだろう。もちろん、新婚旅行は、想いでの北海道へ行ったので、ここで魚前寿司によって、結婚の報告をする事になったが、それは大歓迎されて、一日臨時休業してまで歓迎してくれていた。

 結婚式当日の、琴葉の父の話は、ここではしない事にする。どんな風になったか想像は出来ると思うのであえて語らない事とする。

 琴葉の結婚は会社では大事件であった。婚約の時は、瞬く間に会社に広がって、一時的に、社の業務が止まるほどの大事件になっていた。もちろん、琴葉自身の魅力もあるが、父の立場に、社長や会長がほんとに頼りにしていた為で、設計部に所属していたのだが秘書課のお手伝いもしていた。社長と会長に結婚の報告をする事を求められて、報告に行った時には、「我が社の男子社員は何をしていた!」とご立腹で、卓也の事を説明すると納得して頂けた。中には琴葉にアプローチしていた男子社員もいたようだが、ことごとく粉砕された為、すでに親公認の彼氏がいる噂まで流れていた事を、本人が否定しなかった為、それ以降は、憧れの人になっていたが、それでも、琴葉に触れた男子達は好きにならない訳にはいかなかった。結婚後も、琴葉の人気は落ちなかった。後輩たちが憧れの先輩としてあがめていたからだ。人妻と知っても人気は落ちなかった。それは男性社員より女性社員の方があんな風になりたいと憧れを抱く為であった。

 結婚後、なかなか子供を授からなかったが、三十を前に子供を授かり、今は、二人の子供を授かっている。お産は、春香のいる病院で、産科医は、春香のご主人だった。春香は、同僚の医師と結婚したのだった。楓は、卓也の右腕と称される人物が、苦労の末楓のハートを射止めていた。もちろん、琴葉・楓・春香はあの時、自分をさらけ出す行動をとってからは、新の友人になったようで、何かと集まっているので、家族ぐるみの付き合いとなっていた。ここでも、子供たちは卓也にべったりで、皆が集まると卓也の膝の上の取り合いになる事が当たり前になっていた。それを、琴葉・楓・春香は嬉しそうに見ていたが、ご主人たちは最初何が起こったか理解できず、戸惑っていたが、最近では、楽できると、卓也に押し付ける始末であった。いつも一人大変な思いをするのが卓也だったが、琴美と幸樹に助けを求める卓也の姿があった。

 追伸

 楓のハートを射止めた人物は、前島健太である。彼は、ずっと楓の事が好きで、一度諦めていたが、楓が古城企画に就職した事を知り、一旦他社で腕を磨き、自信をつけて古城企画に転職して、楓に何度当たって砕けたかもしれないが、あきらめずに自分をアピールした結果、根負けをしたようで、楓が健太を受け入れてめでたく結ばれ結婚の運びとなった。婚約の時は、卓也と琴葉は我が事の様に喜んで、会社の業務を一時的にだが止めてまで嬉しい気持ちを表現していた。

 春香の相手は、同級生で五組に在籍していた目立たない生徒だったが、春香に思いを寄せたまま卒業、最後のチャンスの告白タイムにも手を挙げる事が出来なかった小心者であったが、医師となり、勤務を開始した病院で春香に再開、神がくれたチャンスと、こちらは、誠実に春香への想いを伝えて春香の愛を勝ち取っていた。まあ、看護師となった春香が、勤務先でアイドル的な存在になるのは必然で、多くの男子の交際の申し込みの中から選ばれた幸運な男子である事は疑いのない事実ではあるが、本人の並々ならぬ決心と、奮起して頑張った結果、その恋を成就させていた。

 余談ではあるが、この三人は卒業後も出かける事があったので、結婚しても三人だけで出かける事をやめる事は無かった。春香が看護師なので、なかなか時間が合わないが、時間が合った時には、子供達をお父さんに押し付けてまで出かけていた。


第四十章 今、現在


 あれから何年経ったのであろう。あの時、卓也と琴葉を結びつけるきっかけを作った幼かった琴美と幸樹は高校生になっている。

 卓也・琴葉夫妻は子供に恵まれ、上が女の子で現在三歳、下が男の子で現在一歳、現在琴葉は子育てに奮闘中である。琴葉は一旦仕事を休職して子育てに専念している。母と同じ道を歩んでいるのだが、社が退職を許してくれなかったのも、母と一緒だった。琴葉は、社長、会長などの重役が直接関わる案件に同行する事を命じられて、交渉時の設計部門としての判断を任されている為、重要な判断をしている事となる。顧客の要望を直接聞く役目を担っている為、通常の契約場面は別の者が立ち会っているが、重役が直接関わる案件は、琴葉が立ち会わないと顧客から文句が出る事もある為、もちろん相手が男性だけではなく、相手も秘書が対応する事もあるので、むさくるしい男性よりは琴葉の方がよい事が多いので、育児休暇中も、どうしても琴葉でないと駄目な交渉は呼び出しを受けていた。下が一歳になった事で、本格的に復職していたのである。子供たちは、孫が出来た事で引退している、母の琴が祖母として頑張っているので大丈夫だが、妹の琴美は、初めて叔母さんになった時から、昔の琴葉の様に子守を頑張ってくれているので、心配はなかった。弟の幸樹は、あまり子守に参加していなかったが、高校生になって、何やら部活に精を出しているようだが、本来、幸樹の尊敬する人は、父ではなく義理の兄となった卓也なので、同じ道を目指していろいろ頑張っているようだった。子守をすると昔の卓也のように、二人ともくっついて離れないのだが、それが恥ずかしいようで、あまり子守には参加していなかった。琴美も幸樹も卓也・琴葉が通った高校に進学していた。琴美の目指す道も琴葉と同じだったからだ。

 卓也の自宅は、以前住んでいて売却をした自宅を買い戻して住んでいた。あの時、売却した不動産の方が、それ以降は、社宅や賃貸で使用していて、卓也の結婚後子供を授かった事を聞くと、家をリホームして卓也に購入の話を持ってきてくれていた。元々そのつもりで売却に応じてくれていたようで、北島家との距離はさらに近くなる為に良い事ばかりで、ありがたく購入を決めて、子供が出来るころには引っ越しを済ませて、親子三人での生活をスタートさせていた。今は亡き、両親と弟の思い出が残る自宅で、新生活を初めた時は、卓也は密かに涙を流して喜んでいたのを、琴葉は見逃さず、一緒に泣いて喜んでいた。

 琴葉の父はまだ引退はしていなかったので、卓也と琴葉に仕事で絡む事もあるので、頼もしい存在ではあった。卓也にとって、この父の存在は、有難い事ばかりで、自分の事をほんとに息子として、褒めても叱ってもくれる存在だった。

 卓也の会社は順調に業績を伸ばして、今では社員五十人ほどになっていた。ほとんど経営の事は、父の下で働いていた者に任せて、自分は開発に専念していたのであった。もちろん、重要な案件は、社長として判断をしていたが、基本は手広くするのではなく、地道に、顧客の信用を得て事業の拡大を進める方向性は変えていなかった。その為、いつの間にか、会社が大きくなっていたようで、システム・セキュリティー対策は、気の長い事で、顧客に納品するまで、開発期間が一年・二年は当たり前で、会社としての初期投資が莫大になるので、慎重に・かつ大胆に事業をする必要があった。もちろん、周りの人達の助言は大きい事は間違いないが、社の経営に携わる人たちが優秀なので安心して任せる事が出来ていた。

 二人の人生に、この後、どんな波乱があるのか誰も分からないが、二人で協力して乗り越えて行く事であろう。

 そんな琴葉の今現在の悩みは、妹の琴美が卓也から離れない事である。どこかに出かける時も、腕を組んで歩く始末で、高校三年生にもなっているのに、いまだに卓也のそばから離れなくて、いつも琴葉とけんかになっていた。家の中ならいいが、外で卓也をめぐるけんかが勃発すると、恥ずかしくて幸樹が「恥ずかしいから」と、止めに入る始末で、小学生までは可愛かったのだが、中学生の時は、少し距離を置いていたので卓也離れしたと思っていたのだが、高校生になると、遠慮することなく腕を組む始末で、確かに琴葉にそっくりだから、卓也もまんざらでは無いようで、それが琴葉には納得いかなく「若い方がいいの」と愚痴の一つも出る始末だった。琴美は姉に似てモテモテで、昔の琴葉の写真を並べるとどちらか分からなくなる程で、高校時代の琴葉と今の琴美はほんとにそっくりだった。告白された男子は姉より多いと思われるが、すべて断っていた為、彼氏がいた事は無かった。琴美曰く「兄と比べると、勝負にならないから、比べないようにしているのだが、やっぱり比べてしまって、落胆するのが決まりになっている」と、理由を説明していた。その為、怒りながらも、納得する琴葉がいて、琴葉の現在の最大の悩みになっていた。琴美のお眼鏡にかなう男子が現れる事を祈るしかない琴葉だった。


あとがき


 卓也と琴葉の恋の物語はこれで終わらせていただきます。この先どんな事が待ち受けているのか誰にも分りませんが、二人ならそれを乗り越えて、ほんとに幸せな人生だったと言える最後を迎える事でしょう。ほんとに琴葉のような女性に、卓也のような男性に巡り合えたと自負できる人が羨ましく思えるこの頃です。卓也も琴葉も、ある意味、理想とする人物像を描いたつもりだからです。もちろん、楓も春香も同じくらい理想とする女性像として描いたつもりです。 

 此の二人の物語は、出会いから彼氏彼女になるまでを描く事を決めていた為に、中途半端な所で終わる事をお許しいただきたい。

 それでは、琴葉の恋する乙女心の物語と、卓也の自分が愛する人への思いを描くのは、これで終わりですが、二人の、人を思いやる心が永遠である事を信じてペンを置くことにします。


 最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました。読んだ事で何か得る事があれば幸いです。

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