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50. アンダーソン隊の帰還

 今回はあんまりドドンゴに売りつけるものがないな。

 ドドンゴすまない。

 小麦は豊作だったので、それを満載していったからいいか。

 朝、ドドンゴは(ほこら)にうれしそうに挨拶をした後、帰っていった。




 アンダーソンが来てから、あっという間に二週間が経過した。

 俺たちも旅立つ時だ。


「では、いってきます」

「「「いっています」」」

「ヘルベルグ騎士は勝手にコーヒーを飲まないように」

「ワシ、そんなに信用無いかね」

「いえ、冗談です。三日に一回ぐらいにしてください。お金は母ちゃんにお願いします」

「わかりました」


 こうして、やってきたヘルベルグ騎士と会った早々別れて、俺たちは馬車に同乗してアンダーソン騎士と一緒に領都を目指した。


 途中は村や町の宿屋に泊まった。俺たちはまだ子供だから一緒の部屋だ。

 ドドンゴよりも間の村をスルーして先に進み、集落から五日後、マーリングに到着した。


「わああ。なにあれ、すごーい」

「すごいにゃ」

「そう、ですね」


 メアリアは見たことがあるらしい。感動がいまいち。

 ドロシーとリズは馬車の前を占領して、興味深そうに見ていた。

 後ろに乗ってると、前見えないんだよね。


 なおドドンゴの一頭引きの小型幌馬車じゃなくて、四頭引きの大型幌馬車だ。

 乗り心地はたいして変わらない。

 ただ馬が四頭いるのがなんかかっこいい。


 マーリングの町は城塞(じょうさい)都市なので石の壁がある。

 土魔法製なのか人力で積み上げたのか定かではないが、俺の知識の範囲では人力の可能性が高い。

 最近できたものではなく、それなりに年数が経っているもようだ。


 道から続いている跳ね橋を通り通行税はないので、検分だけしている兵士たちから敬礼を受けて、入場していく。

 なんだか敬礼とか、こっ恥ずかしいな。


 とにかく中に入ってしまえばこっちのもんだ。別に悪いことしに来たわけじゃないけど。


 町中を領軍の馬車で通過していく。

 そのままお城の横にある領軍の駐屯地にご到着。


「みんなお疲れさま。本日解散だが、今回は私たちは知っての通り辺境伯と会合があるので、別命あるまで宿舎で待機だ」

「「「はい」」」

「あ~休暇でも待機なんですね」

「まあな」


 というのも、帰りの馬車は基本暇なのだ。

 軍なら当たり前だけど俺たちは違う。活発なドロシーとリズが黙って待ってるわけもなく、ほぼずっと。うん。ほぼずっと歌を歌ったり演奏したりして過ごしていた。

 そんなことを一週間近くしていたので、全員全曲歌えるようになっちゃった。

 美少女天使合唱団 with ヨーラル山警備部アンダーソン隊になってしまっていた。

 そこでついでにそれも報告して、場合によってはみんなで辺境伯の前で歌ってやろうということに。

 どうしてこうなった。


 アンダーソン騎士についていく俺たちは、騎士の実家とやらにお世話になることになっている。

 ドロシーもリズもそしてメアリアさえも、緊張してきている。

 やっぱりイケメンの騎士の実家なんて緊張するよな。

 町中の貴族街の一軒家だった。


 とりあえず徒歩だけど、なんか場違い感がすごい。


「はっはっは。これはアンダーソン騎士じゃないか、今日は子供連れかね、人気者だね」

「ええまあ」

「可愛い子ばかり連れて、どこで拾って来たんだい。そういう趣味だったかな」

「ちょっと、やめてくださいよ。教育に悪いです」

「ははは、冗談だよ。そういう野蛮人ではないことくらい知ってるさ」

「それならいいです」

「では、また」

「はっ」


 誰だか知らないけど軍の偉い人みたいだな。

 アンダーソン騎士が敬礼して見送るので、俺たちも真似する。


「みんなお行儀もいいな。感心だ、では」


 びしっと決めた渋い五十代だろうか。ちゃっかりウィンクして茶目っ気のあるおじさんらしい。


「今のは?」

「あれはユドルフ将軍だね」

「将軍、ってことはかなり偉い人ですね」

「かなりというか、上から三人目ぐらいですね」

「三人目……」


 俺たちは口も開けないわ。

 一番上が辺境伯その人。その下に副官の宰相ポジがいて、その次ですよ。事実上の軍のトップじゃん。


 リバリエ家では、俺たちはカチカチでテーブルマナーとか気をつけて食事をした。

 確かに美味しかったし、スープも透明な高そうなコンソメスープとか出てきたし、お肉もステーキでパンはふっくらだったけど、食べた気がしない。


 男女七歳にして席を同じゅうせず、というがこの世界ではそうでもないらしく、俺たちは十歳にして同じ部屋に放り込まれた。


「あのアンダーソン騎士、あの、俺は別の部屋にしてほしいんだけど」

「おっと、もうそういう歳か。すまない、了解したブランダン殿。では、あちらのお部屋へどうぞ。この部屋より狭いが我慢してくれ」

「狭いなんて、俺の家の大きさ知ってるでしょ」

「ああ、そうだな」


「なにブランいっちゃうの?」


 そんなうるうるした目で俺を見るんじゃない。

 ドロシーの顔が泣きそうだ。


「わ、わかった、俺もこの部屋で、いい」

「そうか。うん、仲良くていいな、お前らは、はい。じゃあいいね」


 いいんだろうか。まあいいんだろうな。



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