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22. ザリガニ

 夏の終わりごろ。また沢にきて、今度はザリガニ取りをすることにした。


「というわけで、今日は沢でザリガニを取ります」

「「はーい」」


 ザリガニを取るのは初めてではない。

 去年も一回ぐらい食べた気がする。

 だから二人もその味は知っているはずだ。


 夏服の涼しい格好で、沢に向かった。


「さあ、誰が一番多く捕まえられるかしらね」

「わわ、わたしが一番にゃん」

「さあどうだろうな。俺かもしれないし」

「「それはない」」

「えーなんで」

「ブランはこう見えて、あんまりすばしっこいの苦手にゃん」


 そうだったのか俺。

 まあ普通くらいかな、俺の運動神経は。


 こうしてザリガニ素手掴み合戦が始まった。

 今日はちょっと固めの籠を持ってきているので、それに取れたザリガニを入れていく。


「取れたにゃああ」


 最初に取ったのはリズだった。


「ま、負けないわ」


 そこにドロシーの魂に火が付いた模様。


「あはは、取れたわ」


 ドロシーが今度は一匹目を手に取って、持ち上げる。けっこうでかい。

 俺もたまにザリガニが取れて、そこそこの数を揃えることができた。


 沢の水はそれなりに澄んでいて、泥抜きとかもしなくても泥臭くない。

 これが池とか沼だとかなり臭うのを俺は知っている。

 だからあまり食欲涌かないのだけど、味は一級品だ。

 特にこの山の中で、海のエビとか食べられるわけもないので、貴重な機会だ。


「いっぱいと~れ~た~♪」

「にゃんにゃがにゃ~♪」


 ドロシーとリズは結局どっちが勝ったか分からないけど、勝利の歌を二人で歌い、お互いほめ合っていた。

 ケンカにならなくてよかった。


 家に帰り、塩茹でにしてもらう。

 塩はベルガル王国では一部の領土が海に面しているので、そこまで貴重ではない。

 俺たちのいるマーリング辺境伯領は海に面していないから、ちょっとだけ他の領よりは値段が高いらしい。

 それでも塩茹でするぐらいは大丈夫だ。


 ザリガニの茹でるいい匂いが漂ってくる。エビみたいな感じしかしない。

 そう、どう見てもエビ。匂いもエビ。

 ただハサミがついてるぐらいなもんだ。あとは殻が固い。


 日本人としては、若干ザリガニに忌避感あるんだけど、この美味しそうな匂いの前には、そんなもの吹き飛んでしまう。


 茹で上がりのザリガニは赤いいい色をしていた。


「「「いただきます」」」


 ザリガニは、みんなのお昼ご飯になった。

 ぷちパーティーみたいな感じ。

 俺ブラン、両親のゴードン、ナターシャ。ドロシーの両親のバドル、メーラ。そしてリズとカエラばあちゃん。

 みんな集合して、ザリガニをいただいた。


 ザリガニは取りつくすほどではない。繁殖力がすごいらしく、一年で数はすぐ回復するらしい。


 エビみたいな甘みと旨味がすごい。これは美味しい。


「おいしーです」

「おいしいにゃ」


 みんな、殻を()いてザリガニをいただいた。

 夏野菜のサラダも一応、添えられている。


 実験農場は大活躍で、秋収穫の麦以外の野菜類が大豊作で、おかずが増えていた。


 この人数で食べるには、ザリガニ取りは年一回ぐらいが限度かなというところ。

 もちろん川とか他の沢まで行けば、もっと取れるかもしれないけど、そこまでしようとはあまり思わない。




 今度は何をしようかと考えて、タンポポコーヒーだけだと普段はお水ばかりだなと思い至った。

 そこで、カエラばあさんに話を聞き、お茶になりそうな葉っぱを探すことにした。


「というわけで、タンポポコーヒーの代わりに、葉っぱを取りに行きます」

「「はーい」」


 毎食、みんなの分だと結構な量がいる。

 特に今は夏だけど、寒い冬の間は暖かいお茶っぽいものがあると喜ばれるだろう。


 カエラばあちゃんとともに山に入っていく。

 まだ暑い夏だけど、木陰なども多く、緑の葉っぱはたくさん生えている。


 一種類ではなく、候補になる草は目星がついていて、いくつかあるので、それらを取って歩いた。

 もう山登りも慣れてきた。子供の体力ではきついかなと思っていたけど、案外慣れるもんだな。


「この葉っぱだ」

「そうじゃな」


 こうしてぷちぷち葉っぱを取って、背負い籠に入れていく。


「あったにゃ」

「こっちにもあったわ」


 リズとドロシーも見つけて左右見える範囲で手分けして取っていく。

 むろん、一か所で取り過ぎて全滅させないように気をつける。

 古い葉っぱは固かったり、苦かったりしそうなので、取らないでおく。



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