20. 氷と山ブドウ
俺は暑い夏なので、最近、魔法の練習の遊びは、違う魔法を試している。
「はい~、アイス」
「ああ、ドロシーにもくださいです」
「にゃにゃ、リズにもちょうだいにゃん」
「はいはい、順番ね」
こうして俺は氷魔法を使ってアイスを作る。
アイスって言っても、ただの氷の塊なんだけど。
「にゃん、冷たいにゃん」
「最高ね」
二人にも好評だ。
もっとも俺たちの村では、流れてる沢の水は湧水なので、夏でもそれなりに冷たくて、少し涼しいのが欲しければ、沢の水のところに行けばいい。
空気は乾燥していてとても暑いけど、水のおかげでそれほど辛くはない。
ということで、アイスは嗜好品というところだ。
「そうだ、アイスの魔法が使えるんだから、あれ作ろう」
「なんだにゃん?」
「また何か始めるにゃんか」
「うん、まあね」
俺は冷蔵庫を作ることにした。
冬は正直、あまり必要性がないけど、夏はあるといいような気がする。
でも、よく考えると、何入れるんだろう。
余ったときの卵ぐらいだろうか。肉は干し物になっているし、小麦とか冷やしてもしょうがない。
水を冷やして飲むにしても、最初から沢の水は冷たいから、意味ないし。
まあないよりいいだろう。
あれだな、現代社会とかと違い、冷蔵庫無いなら無いなりの生活ってのがあるんだなと。
冷蔵庫を作るのは簡単だ。
棚の仕切りをいくつか作って、それで箱を作るだけ。
一番上の部分に、氷魔法で作ったアイスを入れるだけで完了だ。
ということで、うちには冷蔵庫が設置された。
意外というかなんというか、リズのばあさんのカエラがこれに興味を示していた。
そりゃそうか、確かに素材の中には冷やして保存したほうがいいものもある。
「おほほほ。冷蔵庫ねえ、いいねこれは。うちにも一台作ってくりゃれ」
「カエラがそこまで欲しいならいいよ」
「ありがたい」
「いつも山に連れてってくれるから恩返しだね」
「そうだね」
こうしてカエラの冷蔵庫もできた。
そしてカエラも氷魔法が使えるので、自分で氷を設置するらしい。
カエラとまた山に行った。
今日の目標は、山ブドウだ。
この世界では、それなりにいい感じのブドウが自生している。
去年もちょっとだけ食べたので覚えている。
「わーい、ブドウだ、ブドウ」
「にゃにゃん、ブドウ」
「そんなに騒ぐでないぞ」
「「はーい」」
うれしそうに騒ぐ、ドロシーとリズを横目に見ながら、ブドウの生えている山まで登っていく。
といってもすぐ近くだ。
「わーすごい」
「ブドウいっぱいにゃん」
大きな木が生えていない、比較的日当たりのいい斜面が、一面ブドウ畑みたいになっていて、たくさん実っているのが見えた。
籠にいっぱいになるまで、ブドウを収穫した。
ナイフだったら枝を切るのはちょっとコツがいるが、収穫用ハサミがあるから簡単だった。
「おもーい」
「あはは、おもーい」
ドロシーもリズも楽しそうだ。
みんなで籠を背負って帰った。
家に帰ってきたら、さっそく作業をした。
ブドウを煮る。何をしているかといえば、ブドウジャムにする。
蜂蜜は家のもあるけど、この前町に行ったときに投資として、購入した分があった。
ただブドウは町でも多少は流通しているらしいので、ノイチゴジャムほどレアではないということはある。
だから値段は前回ほど高くないとはいえ、やはりそれなりになるはずだ。
この辺のことは、ドドンゴと話してある。
ブドウを入れた鍋をぐつぐつしていくと、いい匂いが漂ってくる。
それに蜂蜜を投入して、ジャムに大変身させる。
もう後ろのドロシーとリズはよだれが垂れそうだ。
「はい、これぐらいでいいかな。ほい試食して」
「わーい」
「やったにゃん」
スプーンでちょっと掬って食べてみる二人。
ついでに俺も試食してみる。
「甘い!!」
「美味しーい!」
ほっぺに手を当てて、喜んだ。
「そりゃよかった。これも売れるかな」
「うん、売れる、売れますわ」
「売れるにゃんね」
「二人は何か欲しいものとかある?」
「え、どういうこと?」
「なににゃんです?」
二人は売れるとは言ってくれるけど、売れて何か買えるという視点はあまり考えていないみたいだ。
そりゃそうだ。この村にいると、購入はドドンゴが持ってくるものに限られるから、贅沢するという考えがまったくなかった。
なるほどなぁ。




