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14. 町村へ

翌朝、スモーレル地区を出発してトハムン村に向かう。


「じゃあ、リズ、ドロシー行ってくる。すぐ戻ってくるよ」


「ブラン、気をつけて行ってきてね」

「ブラン、いってらっしゃいにゃん」


 ドロシーは心配そうに、リズは平気そうに興味のある顔で見てくる。


「私も一緒に行けたらよかったんだけど、お金も無いし」

「わたしは黙ってついていこうかなぁ」


 リズが不審なことを言っているけど、俺たちは馬車なので歩きでは追いつけないだろう。

 いやあ、まあリズの体力なら走っても追いついてくるかもしれないけど、やめようね。絶対だよ。


 まあ道そのものは安全だから大丈夫ではある。

 道は田舎すぎて盗賊が出ないのだ。

 モンスターは出るかもしれないけど、そちらもほとんど出ることがないらしい。


 馬車といっても一頭引きの小型馬車で、気持ち程度の幌の屋根がついているだけの質素なやつだった。


「では出発。ハイヨー」


 ドドンゴが掛け声と鞭で合図を送ると、馬車が進みだした。

 集落には道だけでなく馬車が回転できるミニ広場がある。


「いってきま~す」

「「「いってらっしゃ~い」」」


 みんなが見送りに出てくれた。ドロシーが今にも泣きそうだ。

 気がついた時にはすでに半分一緒に生活していたドロシーにとって、俺と別れるのは初めてのことだった。もちろん俺にとっても。



 昨日のうちに、うちだけでなくドロシーの家とリズの家とも取引を終えている。

 荷物は実質物々交換みたいなもので、売った分減って買い取った分増えて、行きとあまり変わらないらしい。


 裏街道のために道があるだけで、この辺には何も無かった。

 だからこの村の中心地から半日の距離の場所を開拓村として決めたらしい。

 徒歩で半日ごとに村があれば、旅人が野宿をしなくていい。いわゆる宿場町としての機能を考えられる。

 半日なのはマージンみたいなものだ。急な雨とか不調とか色々考えられる。


 この辺の道は左右は森と川だけで他には何も無い。

 小川がところどころあって、洗い越しという道上に浅い沢が流れているところもある。

 現代なら土管とかで地下を通すだろうけど、そういう配慮もない。




 特にすることもなくトハムン村中心地についた。一応俺たちのスモーレル地区もこの村の辺境ということになっている。

 ドドンゴのおやじは昨日もここを通ったので、一泊するだけで特にすることもない。

 集落で仕入れたものの中でこの村で売れそうなものは竹のコップぐらいだろうか。

 あとは、おばばの薬、おやじの干肉なんかも売れるといえば売れるかもしれない。


「一応コップが売れるか商店には寄っていこう」

「分かった」


 俺たちは村の商店に行く。

 ドドンゴさんはそこの商店への品卸もやっているらしく顔見知りだそうだ。


「おやじ、安い竹のコップがあるんだが買うかい? 使い捨てとまではいかないけど、高いコップが不安な用途とか緊急用にどうだい」

「そうだな。念のため十個ぐらい買っておこうかな」

「やった」

「ああ。この坊主ブランダン様が作ったんだよ。竹のコップ」

「そうか、色々な品を先に仕入れて万が一に備えておくのが商売人ってもんだぜ」

「ありがとう」


 竹のコップは思ったより高評価のようだ。

 実際に買う前にものを見て、飲み口などを触ってとげとげしていないか調べていた。

 ちゃんとドロシーたちにヤスリ掛けをしてもらってあるので抜かりはない。

 側面も白い汚れかロウのようなものが付いていたので、布でこすって綺麗にしてある。

 まだそれほど作ってから時間が経ってないので、緑と茶色の中間ぐらいの色をしていた。


 他に商談することもないし、今は夕方なのでそのまま宿に泊まることにした。

 獣肉の入った野菜の多い鍋みたいな料理だった。

 いつも食べているスープとあまり違いがない。


 翌朝、村の朝市を見学した。いくつか知ってる野菜があったので、それの確認をした。マールラ語で発音しないと他の人と意思疎通に困る。

 頭の中では日本語の植物名でも全然困らないが、発注したりするときにはマールラ語にするのは必須行為だった。

 豆があったので、ちょっと買っていく。大豆みたいなやつだと思う。

 次の町へ進む。


 三日間、村々を伝っていき、町と呼べる大きさの場所までくることができた。



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