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④恥はかきすて?

2度目の曲の途中、頭に色とりどりの花かんむりが出現し、綺麗な色の小鳥が肩に止まる。手首と足首にも花飾りが出現。何が起きているんだ……。


「あぁ、神子様……、なんて尊いのでしょうか」

「これは癒される」


周りで倒れていた人達が起き上がり、跪いて拝んでる。元気になった……?


「お前が……、ぐっ、神子、か……」


まだ苦しそうな王様だけど、意識を取り戻したようだ。次はどうしよう?


「王様、大丈夫ですか? して欲しい事は何ですか?」

「して欲しい、……事?」

「できることなら何でもします!」


やっと触れることができた王様の手は大きくてもふもふで、鉤爪が付いていた。ぎゅっと握って見つめると、黒目が紅くて瞳孔が縦になった目を大きく見開いた。


「この姿が恐ろしくはないのか?」

「王様が優しいって知ってるから怖くありません」

「優しい……?」

「優しいです!」


ごわごわの毛に覆われたごつごつした手を、引き寄せて頬ずりすると、顔を覆っていた黒い毛がハラハラと抜け落ちて、輝くばかりの美貌が現れた。


うわうわうわ!

これこそ目の保養だよ!

癒されるよ!!


目の前に現れた神々しいまでの美に目を奪われ、おれはまぬけ面を晒した。


「愛らしいな。ではもう1度、今の舞を舞ってくれ」

「ぅえっ!? い、今ので良いんですか?」

「あぁ、もう1度見たい」


服がいつの間にかギリシャ神話風になっていて驚いた。シャツとベストとズボンにショートブーツにローブだったはずなのに。


こうなったら最後まで責任を持って癒します!!


もっと可愛く。

もっともっと可愛く!!


自分に言い聞かせながらさらに踊ると、徐々に世界が巨大化した。


いや、おれが縮んだんだ。


手足と頭に花をつけたギリシャ神話コスプレのおれが縮んだ。花飾りはフィットしたまま、だけど……服は縮まなかった。






踊り終えたおれは全裸でした。

幸いな事に幼児化しており、見られても恥ずかしくない!


……と、考えよう。


……


…………


………………。



うぅ……、脱げた瞬間、きゃー!とか言えたら良かったのに、そのまま踊り終えしまった。いろんなポーズでぷりけつをふりふり。


むりぃぃぃぃっ!!


恥ずかしいに決まってるだろぉぉぉぉ!


「ふぐっ……ふぅっ、ふっ……!」


しゃららららら……ん


恥ずかしくて泣きそうになって、座り込むおれを見た王様の角は、虹色に光り輝き、美しい音を立てて砕け散った。


身体に生えていた獣っぽい毛も光って消え、爪も砕け、完全に人型になった。人型、だけど金髪で真っ白な鳥の羽が生えてて、何だかキラキラしてて……。


天使かな?


あ、目も普通の形の緑の瞳になってる。


「神子は本当に愛らしいな」

「はっ! で、でも、はだか…… みんなに見られて……、恥じゅかしい……」

「服なら欲すれば良かろう」


……噛んだ。

そう言えばさっきまでの服もマーギア達からもらった服じゃなかったな。


「服を下しゃい!」


あれ?

噛んだんじゃなくて舌も幼児化してるのか。服をイメージする時にさっきのチェッコリの印象が残ってたのか、体操服になってしまった。半袖とハーフパンツ、短めの靴下にスニーカー。


幼児が着ると何でも可愛いから良いけどね。


「落ち着いたか?」

「はい。教えてくりぇて、ありがとうごじゃいましゅ」


……うまく喋れない。元に戻らないと!


「あっ!? 服!」


小学校のマーク入りの半袖&ハーフパンツのまま、大人になってしまった。これは別の意味で恥ずかしい!!


「……それは下着だったのか?」

「違います! でも主に子供が着る服で……」


せめてジャージだったら……。

リッターに落ち着くよう言われ、深呼吸して普段着に着替えた。イメージするだけで着替えられるの、超便利!


白の綿Tシャツに若草色のジップアップパーカー、ベージュのカーゴパンツ。うん、いつもの服だ。


ボロボロの肌やガリガリの体が目立たない服。もう隠す必要はないけど、落ち着く。


「神子よ、今から城内の者の瘴気を我に集める。今一度、癒しの舞を舞ってくれるか?」

「え……? 終わったんじゃないの?」

「ここにいる者達は癒された。だが城内には魔力の少ない者が多いゆえ、我が浄化せねばならぬ」


王様が吸い込むように瘴気を集めるため、魔力の少ない人は王様のそばの方が安全だったんだって。だから魔力の多い人が森の外縁部を守り、少ない人は王様のそばで城の仕事をしていたと言う。


この大きなお城をあちこち歩き回って浄化するより、王様が吸引してひとまとめに浄化する方が効率的なのは理解できる。


でも、もう1度チェッコリを踊るのは……勇気が……。


「で、できるだけの事をします」


……結局他の何かを思いつけず、幼児化して体操服になって踊りました。


うん、裸じゃなければ良いよね!



───────────────────



浄化は終わり、しばらくは魔族の通常の状態で瘴気の処理ができる。


で、おれはそのまま王様の茶飲み友達としてここに住むつもりでいた。


だけど。


「神子よ。我の名を呼んでくれるか?」

「良いですよ」

「そうか。我の名はヒルフェ。

ヒルフェ=グランツ=ライストゥングだ」

「ヒルフェ。ぼくの名前は小撫(こなで)花見小撫(はなみこなで)

「小撫か。なんと相応しい名であろうか」


どこからともなく光が降り注ぎ、花びらが舞って花の香りが漂う。なんだろう?


名前は相応しいかどうか自分では分からないよ? だいたい小撫って何? ちょっと撫でるの? 両親は小さな手で撫でられると癒されるから、なんて言ってたけど大きくなったらおかしいじゃないか。


……大きくならずに死んじゃったけど。

いや、成人してたから大きくなってた、かなぁ?


「あれ? 真名って呼んじゃダメなんじゃあ……?」

「神の祝福を得た。死が二人を別つまで、我の伴侶として共にいてくれ」

「は、はんりょ!?」

「伴侶だ」

「だだだ、だっておれ、男だよ!?」

「性別など些細な事だ。神が我に与えた者は、我の唯一無二のもの。歴代の王達もそれぞれ神子を伴侶に迎えている」

「え? じゃあ次世代の王ってどうやって生まれるの?」

「我らが仲睦まじく過ごせばすぐに卵が届くであろう」

「たまご!!」


魔族はまさかの卵生。

どんな種族が生まれるか、生まれるまでわからないと言う。


……それ、ガシャポ○?


授かりものを大切に育てるのだ、と王様は綺麗な顔で微笑む。人間は男女で睦みあって女性が妊娠出産。


……仲睦まじく、って仲良くするだけじゃないよね? 男女ならともかく、おれも、もしかして……こ、子作り、するの?


王様はにっこり笑うだけ。

え? え? え?


説明を求めて振り返り、リッターさんとマーギアさんを見れば2人で和やかに話し合っている。テテさんとリーゼさんは席を外していてもう居ない。王様の側に誰もいないって、どう言う事!?


「魔族でもっとも強いのは我だ。緊急時にはそれぞれ家族と共に過ごすよう、言い含めてある。それに今は遮音結界を張ったゆえ、人間達に我らの声は届かぬのだ」


闇落ち国家消失エンドを免れたので、みんな家に帰って家族の無事を祝っているらしい。


じゃあ、説明は誰がしてくれるの?


「真名を口に出さぬならば結界を解こう。できるか?」

「はい。王様って呼ぶのは良いのでしょう?」

「うむ、それで良い」


突然見えた大きなシャボン玉がぱちんと割れて、音が聞こえるようになった。


今はここに居ないけど、リーゼさんはテテさんのお兄さんだったらしい。呑気な兄としっかり者の弟……。


おれも妹に心配かけてたなぁ。


「国王陛下、お願いがございます。私達を神子様の世話係として雇っていただけませんか?」

「国へ帰らぬのか?」

「俺達は国に帰るとそれぞれ嫁を押し付けられるんだ。だからこの国で伴侶となりたい」

「えっ!? リッターさんとマーギアさん、結婚するの???」

「えぇ、以前から約束していたんです」


人間の国では同性婚が認められていないので、魔族の国へ亡命して結婚しよう、魔族の国に入るには神子の護衛になれば良い、って計画してたんだって。


恋人だったのか……。

お読みくださりありがとうございます。

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