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②旅立ち役立ちがんばります!

道中、12頭程の狼系の魔獣に襲われたけど、みんながサクッと倒してくれた。


マーギアさんが雷属性の魔法で動きを鈍らせ、人馬一体(人竜一体?)となったリッターさんが狼のリーダーを倒し、うーちゃんが近づく個体を尻尾で薙ぎ払う。マーギアさんが魔獣の頭に点火して、ちょうさんが蹴爪でとどめを刺していた。


ドラごんもリーダーに噛み付いて動きを封じ、とどめを刺す手伝いをしていた。連携プレーカッコいい!


……殺戮現場なのに怖くないのはなんでだろう?


あっ!!

血が出てない!!


「魔獣は瘴気の塊なので生き物ではありません」

「だからほら」


狼たちはキラキラした光の粒になって消えていく。後には牙と爪だけが残っていた。


「瘴気に蝕まれた狼の牙と爪だ。回収して神殿で浄化してもらわないとまた魔獣になってしまう」

「……苦しかったかな?」

「分かりませんが、光になって消えたのですから今はもう、苦しくないと思いますよ?」


瘴気に蝕まれて、と言う言葉にアレルギーで苦しんだ記憶を刺激され、思わず落ちていた牙を撫でた。すると牙は光に包まれ、七色に光る石(?)に姿を変える。


「……さすがだな」

「これって……?」

「その牙は浄化されました。辛くなければこちらも浄化して下さいますか?」


いつの間にか集めてあった12頭分の牙と爪。一つ一つ丁寧に撫でれば皆、一様に浄化された。


「この浄化された石は魔石と呼ばれ、あらかじめ魔法を閉じ込めておく事ができます」

「マーギアさんの髪飾りって、もしかして……?」

「はい。この装飾品は全て魔石です。使いきりですし、多く持つには重量がかさみますから、最低限を身につけて、それ以上は異空間収納バッグで持ち運びます」


最低限……?

髪の毛キラッキラだよ。






誰も怪我をしなかったので少し休憩しただけで出発した。


途中、ウサギ、ネズミ、鳥、虫の魔獣に襲われたけど、単体だったので全部リッターさんがやっつけた。小さな魔獣は何も残さず消えるようだ。


「お! 蛇苺だ。神子様、食うか?」

「食べられるの? ……ところでその口調で様付けなの、変じゃない?」

「じゃ、神子ちゃん」

「ぶはっ!!」

「ふふふ……、真名を呼ぶ訳にはいきませんからねぇ」

「なら神子で呼び捨てにしてよ!」

「はははは! じゃ、それにするか。ミコ、よろしくな!」


真名……つまり本名は伴侶しか呼んではいけないなんてルール、面倒くさい。面倒くさいけど、誓いを立てて神様から祝福してもらわないと悪い事が起きる、と言われれば従うしかない。大抵は肩書きで呼ばれるけど、肩書きのない子供達は家に割り振られた数字+くじ引きで決まった子供用の名前。


ちなみに2人の呼び名もまんま肩書きを表すもの。魔法があるのも大変だなぁ。


蛇苺は林檎サイズで、味は甘い苺だった。地球のは毒があるんだっけ? いや、無毒だけど味がないんだっけ。




「お風呂は1人で入りたいです」

「護衛だからな」

「片時も側を離れる訳にはいかないのです」


今日の宿のお風呂は大きくなかったので1人で入る! と主張したけど、認められなかった。危険なんてないと思うけど……。


2人がかりで洗わなくても!!


気を取り直して食事をして、川の字で眠った。川の字と言ってもシングルベッド3つが並んでるってだけだけどね。




翌日は舟!!

いや、船かな? 貸し切りでウマも乗せてもらえて3泊する。ここだとさすがにベッドは2段ベッドだから川の字にはなれない。


なのに!!


一緒に寝るのがどっちかで揉めないで!!


「どうしておれを子供扱いするの!?」

「おれ……?」

「ぼっ、ぼく!」


マーギアさんの穏やかな笑顔が怖い。笑顔なのに怖いっ!!


「実はな……、俺達人間の邪心が瘴気を生み出すんだ。疲れが溜まっても良くない。だからミコを可愛がって邪心が湧き出さないようにしたいんだ」

「邪心が瘴気を生み出す……」


魔獣は出るけど、2人とも強いから安全な旅だと思ってた。でも護衛として四六時中、気を張っているのか。


ストレスも溜まるよね。


「じゃあ、交代で寝る」


しばらく抱き枕になります。

マーギアさんは細身なので、それほど窮屈ではなかった。リッターさんは…… 少し窮屈だったけど、むちむちの雄っぱいは温かくて頼り甲斐があって熟睡した。






船員さんが休憩中に釣りをして、おれと同じくらいの大きな魚を釣った。お刺身美味しい!! 生魚は船乗りしか食べないそうでリッターさんもマーギアさんも初めは微妙そうな顔してたけど、3口目には美味い!って言った。


「坊主はかわいいなぁ。このままうちで働かないか?」

「ぼくは魔族の王様を癒しに行く所なんです」

「神子様だったのか。けど惑わしの森に入ったら出て来られないらしいぞ。危険だ」

「この可愛らしさで魔族の王を癒さねば、この世界は魔王に滅ぼされてしまうのですよ」


可愛らしさは置いといて。

魔王?

あぁ、魔族の王様が闇落ちすると魔王になっちゃうのか。苦しそう……。


「船長さん。ぼく、人間たちの出す瘴気のせいで苦しんでいる魔族の王様を助けたいの。だから行きます。心配してくれてありがとうございます!」


これは本心だ。

必要とされるのが気持ちいいってのもあるけど、自分の役目と言われれば張り切ってしまう。お調子者? 良いから良いから! 一人称に引っ張られて言葉が幼くなってる気がするけど、まぁ、いいか。マーギアさんに睨まれるよりずっと良い。


船長さんや船員さん達にかわいがられながらの船旅は3日で終了。水の中には魔獣はいないんだって。船着場の町に泊まり、翌日またうーちゃんに乗せてもらう。


昨日はまたしても川の字で寝ました。

朝、先に目が覚めていたおれを見て、リッターさんが騎士の訓練で眠りは浅いはずなのに、と首を傾げていた。神子の癒しの力の影響でしょうか? とはマーギアさんの意見。



───────────────────



川向こうより魔獣が強くなった気がする。リッターさんが軽い怪我をした。


「ぼくの出番!!」


山猫型魔獣の鋭い爪の一撃で、肩から血が出て痣も出来ている。傷を水で洗って手をかざすと、淡い光が傷を包み、ふわりと花の香りがした。


「すごい! 治ってって考えただけで!!」

「ありがとうな、ミコ」


大きな手で頭をわしゃわしゃ撫で回される。少し乱暴だけど嬉しい。えへへ……。


その後も大きな蛇型魔獣や猪型魔獣、鹿型魔獣を倒しながら森の入り口の村に着いた。森には貴重な薬草があるけど、入ると迷って帰れなくなるので外周部に生える薬草を採取して生業としている村なんだって。


人の心から生まれる瘴気は魔族に悪影響を与えるので交流はないと言う。なんだか申し訳ない……。


「神子様方、ようこそおいで下さいました! どうか一晩、お寛ぎ下さい」

「村長、歓迎を感謝いたします。わたくし達を宿へ案内していただけますか?」

「もちろんです! 蒸し風呂には薬草を敷き詰めてありますので香りが良いですよ」

「蒸し風呂!!」

「ミコは風呂ならなんでも好きなのか?」

「うん!」


宿は村長さんの家で、民宿のような感じだった。蒸し風呂は川の側に建てられた丸木小屋。塀で囲った脱衣所が付いていて、ここで服を脱いで腰に手ぬぐいを巻いて入る。サウナで暑くなったら川に飛び込むんだって!


ひゃっほー!!



……………………。



熱い……。

息をすると鼻の穴が熱い!

口で浅く呼吸して何とか頑張ったけど、辛くて小屋から出たり入ったりしていた。マーギアさんが窓を開けて温度を調節してくれてようやく我慢できるくらいになった。


そしてしっかり温まって川へ!!


ばっしゃーん!!


(あれか)

(こどもだね)

(おとなもいるよ)

(コドモがみこさまだろ?)


ヒソヒソ喋る声がする。

子供の声だから、近づくなって言われたのに見に来ちゃったのか。


「誰かいる?」

「ぅわっ!」

「バレた!」


バレバレだったけどね。

そしてバレたら素直に出て来るあたりが微笑ましい。


「みこさま、森に入るんだろ?」

「まぞくにあうんだよね」

「あのね、まぞくにあったらね……」

「おれい、いってくれる?」


お礼?

何のお礼?

4人の子供達の言葉に首を傾げる。


「みこさま、しらないの?」

「まぞくはにんげんのだすしょうきをね」

「ひきうけてくれてるんだよ」

「それにやさしいの」

「ケガしたとき、治してくれたー」


人間は邪心から瘴気を生み、魔族は瘴気を引き受ける???


夕飯の後に説明してもらえば良いか、とその場では笑顔で頷いておいた。

お読みくださりありがとうございます!

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