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①召喚されて助かりました。

「神子様、どうか魔族の王を癒し、この世界を救って下さ……、神子様っ!? 神官長! 早く治癒を!!」




おれはアレルギーで絶命した途端、異世界に神子として召喚されたらしい。天寿を全うしていれば若返った健康体で来られたのに、事故死だと死んだ瞬間と同じ状態で召喚される、って!

それじゃまた死ぬじゃないか!


まぁ、生きてたから良いか。


3日ほど寝込んで目を覚まし、改めて説明をしてもらいました。


100年に1度、魔族の王様が瘴気に耐えきれなくなり、闇落ちする。闇落ちした魔族の王様を助けるため、癒し属性の神子を探して喚び出す。肉体ごと召喚する事は出来ないので亡くなった人の魂を喚ぶ。


死にかけの身体がついて来たよ?


「肉体の再構築をする際、記憶に残る状態に影響を受けるのです」

「うぅっ、……助けて下さってありがとうございましたぁ!!」


生きてるのに連れてこられたら帰らせろ! ってなるけど、結局助からなかったなら、こっちの人の説明を受け入れるしかない。


それに何より、いつになく快調なのだ。以前は体は痩せているのに顔は浮腫んでパンパンだった。肌荒れに湿疹、抜け毛、慢性的な胃腸の不調。今はそれが綺麗さっぱり治っている。


異世界召喚、ドンと来い!

むしろありがとうございます!!


「魔族の王が住む惑わしの森は人間を阻むようにできております。供を2人、お付けしますので森の入り口で案内役の魔族と合流して下さい」


危険そうなのにパーティーがこじんまりしてる。「はじめてのおつかい」の曲が脳内に流れてくるのは不謹慎だろうか?


魔族の王って、ゲームに出てくる魔王とは違うのかな?


闇落ちはしてるんだよな。助けるって事は人間と仲良し? でも人間を阻む森の中に住んでるの? うぅむ……。


召喚されて元気になるまで3日、旅支度の調整に3日、壮行会に1日。1週間を王城で過ごし、おれ達は旅に出た。


詳しい話、マダー?


「神子様、疲れたらすぐおっしゃって下さい」

「我慢しちゃダメですよー」


お供の2人は騎士のリッターさんと魔法使いのマーギアさん。治癒は神子のおれができるから神官はいない。お城で転んで擦りむいた膝が、痛いの痛いの飛んでけー! でみるみる治ったのには驚いた。




……この世界の大人たちは発育不良なおれを子供扱いする。


身長154cm、体重40kg、ムダ毛は全て抜け落ちてつるっつる。生っ白くて童顔、女顔。可愛がるなと言う方が無理なのか。


あるべき毛が残ってて良かった!!

髪と眉と睫毛。

服の中はね……。諦めました。


「魔族の王様のいる所までどのくらいかかりますか?」

「神子様、我々に敬称・敬語は不要ですよ」

「魔族の王の住む惑わしの森までは7日間ほどだ」


マーギアさんが敬称、敬語不要と言うけど、敬称はもう少し保留で。


「そこまでずっとウマ?」

「いえ、始めの2日はウマで、その後は船で3日、そしてウマで2日です」


おれはウマ(人が乗り物にしている生き物の総称)の中の『兎馬(とま)』に乗せられている。

兎馬……これ、カンガルーだよね? 地球のカンガルーと違って袋はないけど、抱っこ紐みたいなので装着され、優しく腕を回されている。赤ちゃんプレイ、辛い……(涙)


でもめちゃくちゃ速い。

ぴょーん、ぴょーんと跳ぶから絶対酔うと思ったのに、何故か酔わない。


そして多分、時速40kmは出てる。


神子には状態異常無効の加護があるから乗り物酔いしないんだって。もしかしてお酒飲んでも酔わないの?


「気分が悪くなる事はありません」

「気分が悪くなる事()?」

「……眠ってしまったり、歌い出したり、踊り出したりする方はいるようです」

「お酒飲まないぃぃ!!」


そんな恥ずかしい事になる可能性があるなんて!! ……あれ?酔っ払いなら、普通?


それはともかく、リッターさんは2足歩行の青い竜、マーギアさんは白とピンクの大きな鶏、(どちらもカンガルーサイズ)の背中に乗っている。なんでおれだけ抱っこ!?


「振り落とされないのでしたら、こちらでも構いません」

「だが兎馬の方が安全だ」


庇護欲が強く、一定以上小さな個体を抱かせると全力で守ろうとする、家畜化された兎馬。竜や鶏は下手な乗り方をすると振り落とされるんだって。


「……兎馬さん、よろしくね」

「………………」

「うーちゃん、よろしく」

「ぶぼっ!」


『とま』なのに呼び名は『うーちゃん』。他の呼び方だと返事をしてくれない。『うさぎうま』のうーちゃんなのかな?


自分の体に回された兎馬の手(?)をポンポンすると、程よい力加減できゅっと抱きしめられた。



────────────────




休憩を挟みつつ進み、宿泊予定の町に着いた。宿のウマ小屋に兎馬達を預ける。


「うーちゃん、頑張ってくれてありがとう。明日もよろしくな」


ウマ達は種族ごとに呼びかける名前が決まっていて、他の名前を受け入れないらしい。だから兎馬はみーんな「うーちゃん」。竜は「ドラごん」、鶏は「ちょうさん」。


ややこしくないのかな?


「さぁ、神子様。湯浴みをして食事をいただきましょう」

「ごはん!!」


状態異常無効になったおれに怖い食材はない! メニューはミモザサラダに魚の干物入りホワイトシチューに薄切り肉のソテー、ご飯、らしい!


ご飯!! お米!!


小さなまん丸おにぎりになって出てきました。


「おいひぃ! はふはふっ! んぐんぐ……」


牛乳も小麦粉もアレルギーだったからホワイトシチューはこちらに来て始めて食べた。こんなに美味しかったのか!!


「神子様、あまり食べ過ぎるとデザートが入りませんよ?」

「食べる! 入る!!」


お城でもそうだったけど、何を食べてもアレルギーが出ないので大盛りサイズの料理をしっかり食べる。リッターさんと競うように食べていたらマーギアさんに温かい目で見られた。


デザートは木の実たっぷりの素朴なケーキ。ナッツアレルギーも無くなってる!!(感動)


「ぐぅぅ……、も、むり……」

「お腹がパンパンですね」


食堂で山ほど食べて動けなくなり、リッターさんに運んでもらってベッドに寝かされ、マーギアさんがお腹をさすってくれた。気持ちいい……。


「ほら、着替えろ」


リッターさんは気安く話しかけてくれる。親密度が上がったのかな? マーギアさんは敬語の方が楽なのだと言うので無理は言わない。


……それにしても眠い……。







おれは着替えの途中で寝落ちして朝までぐっすりだった。




目を覚ますと2人がおれを挟んで寝ていた。観察させてもらおう。


リッターさんは短く整えられた癖のある濃紺の髪で、男らしくて凛々しい顔立ち。竜騎士だから無駄のない筋肉がしなやかについている。男の色気というやつが漂っている、……ような気がする。


マーギアさんは魔法使いだからかどうか分からないけど、細身で中性的。まっすぐな淡い紫の髪は胸あたりで切り揃えられ、起きている時は宝石が散りばめられている。小ぶりのアクセサリーをたくさん付けているから余計に中性的に感じるのだろうか。女の人に見間違うことはないけど、とっても美人。


昨日、貸切風呂で見た2人のアレは……、正直、羨ましかった。


マーギアさんは30歳まで禁欲して魔法使いになった訳ではなさそうだ。






「うーちゃん、おはよう。今日もおれを運んでくれよ?」

「神子様っ!! お、おれなどと言ってはいけません! ご自分の事は『ぼく』と仰って下さいっ!!」

「えー……、はい……」


おれの使命は魔族の王様を癒す事なので一人称は『ぼく』にするよう言われている。いや、おれ21歳だよ?


「ぼくなんて似合わないだろう?」

「「似合いますっ!!」」


似合いたくないよぅ……。


とは言え、お世話してくれる2人からの唯一の要求なので前向きに努力をしよう。


「うーちゃん、ぼくを乗せてね」


言い直したら2人がウマにしがみついて悶えた。(苦笑)

お読みくださりありがとうございます。

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