4話 殺したのはあなた
背後からシャッター音。すぐさま振り向くが誰もいない。良くない気がする。
僕が死体が消えていくところを撮っているのがもし黒幕に知れてしまったら、殺されるかもしれない。
でも、今、得られる情報は全部回収しておいた方がいいな。お父さんが持っていた銃を拾う。銃なんてどこから手に入れたんだ? 銃なんて日本では流通しているわけがない。結衣のお父さんが警察官だったわけでもないし。
他に何か情報がないかな......
結衣の家を勝手に物色する。もうこの家には誰も......
泣きそうになる。
いや、僕が何とかしないといけない。まず結衣をさらに救えるのであれば結衣の家族全員を。
結衣を悲しませたくない。
リビングには結衣と僕のツーショットが置いてある。まだ5歳の頃だったかな。初めて海に行ったんだよな。あの頃から、僕はもう、結衣のことが好きだった気がする。
二階に上がり、結衣の部屋に入る。
僕のあげたものがいたるところに置いてある。水族館のイルカのキーホルダーとか......
そこで、結衣の部屋から目を背けて、黙って部屋を出る。あの空間にいるのがあまりにも辛い。今になって結衣がいないことが心を絞める。
涙がこぼれる。愛されてたんだな、って。
ひとしきり泣いて、心を落ち着ける。さっきは堪えられたのに、ダメだった。
絶対に救う。
その意志だけが強くなった。
僕は銃を持って結衣の家を出る。銃はこれからの手がかりになるはずだし、護身用にもなる。
今日は自分の家に帰ろう。心を休ませるどころではなくなったし、すごく苦しいが、今息抜きなどに出かけられる気がしない。
家に着くとしっかり鍵をかけたことを確認したうえでベッドに行き、すぐさま眠ってしまった。
朝になる。昨日さっさと寝たせいでまだ朝5時なのに目が覚めた。
いつも通りにテレビをつけ、ニュースを見る。
「昨日の心中症の犠牲者は203人です」
奇数人。僕の分がカウントされていないせいだ。
そういえば、犠牲者数ってどう数えているんだ?
心中症で亡くなった人の死体は消えてなくなると昨日確認した。動画もある。通常、死体を確認して、死亡診断書が出されて初めて死んだことになるはずなのに死亡ということになっている。
また、犠牲者数は毎日、国の機関から発表されている。つまり、国とテロとが関わっている、ということになってしまう。
もしそうだとするなら、僕はすでに国ごと敵に回している、ということになるのか?
やめだやめ。事態を深刻にとらえすぎるな。僕はまだそんなに大きなことに手が届いているわけじゃない。一歩ずつ着実に進もう。
今日は何をしよう。そういえば、僕を助けた水色の髪の女の話を全く聞かないな。ただの殺人事件ならこの辺で話題になっていてもいいはず。
インターネットで僕の住んでいる地域名と殺人を入れて検索をかけたが何も出てこない。
あそこは誰にも使われていないのか? それなら、まだ隠蔽することができるかもしれない。できないにしても様子を見ておいて悪いことはないと思う。
どこからあの女は情報を得ていたのかも気になるところだ。
家を出ようとする。
あれ? 鍵、昨日閉めたよな......
倉庫まで軽く走っていく。まだ朝早いため、人も車もいない。
倉庫のすぐ近くに来た。よし、入るか。
その時、後ろから女性の声がする。
「ねぇ、あなたが倉庫の女の人、殺したんでしょ?」




