3話 写真
な、なんで僕は殺した......?
まったく僕には自分の行動が理解できない。確かに、殺してやりたいと思ってた時もあった。でも、その理由はなかったはず。
気持ち悪い。目の前で人が死んでいるのだから当たり前だ。いや、それだけじゃない。この気持ち悪さは僕自身にも向いている。
心臓がドクドク暴れ出す。頭がぼんやりしてきた。
こういう時はまず落ち着こう。冷静さなしでどうこうできる問題ではない。
大きく息を吸って、ゆーっくりと吐く。
僕は殺人者だ。認めたくないし、まだ夢であって欲しいと思っている。
とりあえずこの現場から離れないといけないな。今誰かに見つかったら心中症の解決をする前に、僕が捕まってしまう。
まずここはどこだ? スマホを取り出し、位置を確認すると家から一番近い工場の倉庫であることが分かった。血まみれの服は脱いでビニール袋の中にしまっていこう。部活の用意を持っていたおかげでビニール袋も着替えもしっかりそろっている。
着替えて家にはすんなりと帰ることができた。
心中症を解決するためにはどこかにいるはずの黒幕を見つけなければいけない。その前に心中症の具体的な症状を調べるところから始めないといけない。
でも、症例を調べようにも発症者は全員死んでいる。
唯一の生存例が、僕......か。
インターネットを使って調べてみる。しかし、特にめぼしい情報はないな。
頭がおかしくなってきた。きっとストレスのせいだ。
頭を一回すっきりさせないと何ともならなそうだ。
家を出て、駅へと向かう。その道中で結衣が殺されたT字路を通りかかる。
あれ? 全く血の跡がない。もしかして、結衣が死んだのは幻覚?
淡い期待のもとに僕は結衣に電話をかける。
プルルルプルルルル......
やっぱり繋がらないか、と思ったその時、
「はい」
電話がつながった。
「キョウです」
「あら、キョウちゃん。今結衣と一緒にいないの?」
一瞬胸が高鳴ったが、結衣のお母さんだ。
「僕の近くにはいないです。おうちにもいらっしゃらないご様子ですね」
「ええ、結衣ったら携帯を忘れて行っちゃったからどこにいるか全く分からなくって......」
「もし結衣さんが帰ってきたら僕に連絡をくれるように伝えてください。僕も心配です」
「はーい。伝えてお......」
バン
銃声と共に誰かが倒れた音が聞こえた。
そのちょっと後にスマホが落ちた音がする。
バン
もう一回銃声が聞こえ、もう一人倒れる音がする。
「大丈夫ですか?」
大きめの声で連絡を取ろうとするが返答がない。
僕は結衣の家まで走る。
ついたがドアは開かない。家の裏までまわり、窓を割って部屋に入る。
僕は言葉を失う。
部屋には死体が二つ。結衣のお母さん、もう一人は結衣のお父さんだった。
お父さんの右手に銃があり、お父さんの頭に銃が向いている。間違いなく心中症だ。
......? なぜか死体が半身消えている。
一枚写真を撮る。心苦しい。気づくと死体が4分の1になり、どんどんと消えていく。急いで動画に切り替え、様子を撮影する。
20秒ほどで死体は消えてなくなり、血も残らなかった。
パシャッ
僕の背後からシャッター音が聞こえた。




