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第二話



「母さん、身体の具合は?」


「ええ、最近、調子が良いのよ。あなたが持ってきてくれてた薬のおかげね。」


 実家に帰るとパーティでいた激しい日々とは縁遠い優しい時間が流れていた。母の病状は安定しており、きっと、王都と薬師の薬が効いてきたのだろう。


「ああ、そういえば、お父さんは遅いわね? お兄ちゃんも起こさないと……。」


 そう言って母さんは椅子から立ち上がった。


「あ、まって、父さんと兄さんは!」


 もう死んでいる。母さんの病気は身体ではなくて頭の病気である。記憶障害といえば良いのか、妄想と現実の区別がつかなくなることがあるのである。

 以前、一時的に村に帰ってきた時は俺がサーニャと結婚しいることになっていたり、勇者パーティが全滅してしまったことになっていたりもあった。 

 今は村の人たちや、雇ったヘルパーさんの力を借りて治療に当たっているが改善はみられない。

 とはいえ、今はパーティをクビになり無職のため、ヘルパーも治療も暫く止めるしか無い。


「ねぇ、そういえば、アルファードとはどんな感じ?また、幻想国家として君臨しているの?」


 また、変なことを言い出した。しかし、アルファード?どっかで聞いた名前だ。しかし、幻想国家か、たしか、空間の魔王が作り上げた国だ。あそこでは、迫害された一族が身を寄せ合って暮らしていた。

 魔王を倒さなければ、後々、世界の均衡が崩れてしまう。特に空間の魔王は、空間という概念が実体化、いや、擬人化した存在だ。やつはどんな善人で、善行を積もうとも、存在するだけで空間を乱す、災害となる。

 だから、厄災の王なのだ。


「……幻想国家は、滅んだよ。うん、みんな」


 迫害され、魔王に縋った一族は、元いた国々へと帰っていった。その後のことは分からない。勇者パーティに与えられたのは世界に現れる魔王を倒すこと、それだけなのだ。

 きっと、魔王の元での平和な暮らしではなく、元の迫害に戻る事になっただろう。人間相手の狩猟なんて、ふざけた暮らしに。


「そう、なの。残念ね……。アルファード、世界中の人が平等になるように頑張ってたのに。けど、彼女なら、きっと大丈夫ね。だって、まだ、夢をおって頑張ってるんでしょう? じゃ無いとこんな素敵な旦那さんと離れないわ。」


「は、はぁ……。」


 妄想、妄想。

 俺は結婚なんてしていない。

 ああ、カサエル……。だめだ、泣くな。また、母さんが混乱する。


「けど、残念ね。アルファードと結ばれるためとはいえ、勇者パーティと離ればなれなんて。だって、勇者の魔法って、5人揃わないと完成しないはずなのに。」


「あ」


 妄想の中に事実が入っていた。勇者パーティが使える究極魔法。天空を操る究極の技だ。そこからサーニャが発展させて、ブラックサンダーバイブレーション、という必殺技となった。

 発動には勇者とその仲間4人の絆、というか、勇者パーティの証である、指輪かトリガーとなる。その指輪は未だに俺の指に嵌っている。

 この指輪は精霊との契約上、おいそれと新しいのを作ることは出来ない。つまり、この指輪がないと新たな仲間を入れても究極魔法は使えないのだ。


「クビにするなら、何故?」


 分からない。何故、指輪を没収しなかった? 

 分からない。何故、仲が良かったのに?

 

 何か背筋を凍るような気がした。

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