第一話
俺には何の能力も無かった。
剣の才能も、魔法の才能も、マッピングなどの後方支援の才能もない。
しかし、それでも、俺は勇者の仲間として選ばれた。選ばれたのは本当の偶然で、勇者の親友だったからだ。齢15で勇者に選ばれた親友、ルートは旅立つときに俺も誘ってくれた。誘ってくれた理由は単純に、俺の母親が病気でお金が必要だったからだろう。彼の優しだ。
その優しさに応えるために俺は努力した。けど、剣も、魔法も、呪法も、なにも、身に付かなかった。
けど、森の魔王との闘いである力が発覚した。
死後、時が巻き戻る。タイムリープだ。
発動条件は死ぬこと、戻る時間は、何かしらの条件があるようだが、いまだに不明。なぜ、使えるかも不明。
そして、この力のことを誰かに伝えようとすると死ぬ。
この能力を使って、俺は何度も勇者パーティの仲間を助けてきた。率先してダンジョンで先頭に入り、強敵を倒すために何度も繰り返して、勝てるように誘導した。
それにより、海、山、空の魔王を倒した。
これで、俺は錯覚していたのだ。俺は役に立っているって、みんなの力になれているって錯覚していたんだ。
みんなからしたら、俺は妄言を吐いてる雑魚でしか無かったんだ。
「お前、もう、実家に帰れ。クビだ。」
炎の魔王の住まうダンジョンへと挑む直前で、ルートからそう呼ばれた。意味がわからなかった。昨日はパーティ5人で楽しく過ごしていた。
言葉は悪いが、このパーティにはギスギスした空気なんて無かった。だが、何故?
「これから先、アンタを庇いきれないってことよ!別れ!」
黒いローブを被り、顔が見えない少女、天才的変態魔法使いであるサーニャはいつも通りの淡々とした口調ではなく、激しい口調でいった。
「あ、ああ、その通りじゃ。もう、分かっておるじゃろう?お前は、もう、足手まといなんじゃ。」
格闘家にして呪法使いの老人。拳聖のショーは髭をさすりながらそう言った。今までパーティのご意見版として支えてくれた彼からの言葉だ。かなり思い。
そして、
「ええ、あなたはもう帰りなさい。私たちと離れる、それが全てなのです。」
三重苦の修道女、カサエルは手を組み祈るように、そして、歌うようにそう言った。正確には喉を潰されて話せない彼女は魔法、いや、祈りの力で空気を振動させて音を出しているのだが、
いや、そんなことはどうでもいい。彼女とは、その、自慢ではないが、いい雰囲気だったと思う。キスは、してないが、勘違いでなければ、かなり仲が深まっていたと思うんだ。
なのに、そんなのって……
「これが、パーティの答えだ。帰れ、もう、顔を見せるな。」
頭が真っ白になり、もう、涙も出なかった。
そして、気がついたら故郷の村にいた。