はじまりの話
そこは、ただの平原であった。草の色が永遠と続く世界。
水と空気、高大な土地がある美しき世界。だが、時の止まった世界。美しいまま静止したかのような写真世界。ないのは、生命。土を分解する微生物。空を舞う鳥、陸を四足で歩く動物。そして、人間。
ここには、それらがない。枯れることのない植物。動くことのない大陸。
美しい箱庭。
その箱庭には、突如現れる光があった。
明るいオレンジの光を帯びた光色の球体と暗い紫の光を帯びた漆黒の球体が現れた。
二球体は、一定の距離を保ちながら、全ての停止した世界に降り立った。
明るい茶色の髪がふわりと広がる。瞳は燃えるような赤だった。何もかもが完璧な外見だった。美しい。背が高く、一見男か女か判断がつかない人物が降りったった。光色の球体だったものだ。
漆黒の球体だったものも、同時に降り立つ。
表情は一切なく、その眉目秀麗な顔は白く、濃い新緑の瞳は強い意思が宿っていた。
漆黒の球体だったものは、ここにいることが堪らなく不本意というような、拗ねたような顔をしていた。その表情は、女性的ともいえる。
その顔を見た光色の球体だったものは微笑んだ。やっと会えた、という安堵の表情だった。
二人が写真世界の地に足を付けた瞬間、この世界は、動き出した。写真は動画になった。
そう、ここは、彼らが神さまの箱庭。美しき生命が誕生する場所。
彼ら二人はこの世界の始祖であり、後に太陽と月の神と呼ばれることになる。
二人の出現。それが、この世界のはじまり。




