2話 偶像でもあり実像でもある
スピードも内容も安定する人に私はなりたい
隼人の家は、一人暮らしの部屋にしては大きめでリビング、和室、隼人の部屋、そして物置と大きな部屋は4つある。
今は、物置の部屋のドアに、可愛らしき看板みたいなものがかけられているので、ここが妹さんの部屋になったのだろうと凛は思った。
リビングや和室は誰が見ても普通の部屋に見えるだろう。その分彼の部屋はアニオタというのをぜんかいにだしているのだが。
ちなみに家賃はまぁまぁ安いことを隼人から聞いている。
荷物を和室に置かしてもらって、リビングへ向かった。
新しい情報が来ているかどうか確かめるために、凛が携帯の電源を付けると、一件の通知が来ていた。堕天使用に作ったアカウントからだった。
内容を見てみると、今度あるバレンタインライブについてのことだった。
(とりあえず、インフルエンザ対策としてマスクしていくか。まぁ自分より推しに移したくないって理由だけど)
そんなことを考えていると隼人から声をかけられた。
「もう直ぐバレンタインだな」
「オタクたちがソシャゲに課金しまくる日だな」
「違うぞ、推しに金を貢ぐ日だ」
バレンタインを前にしての、二十歳前同士の会話とは思えない内容である。
そして凛は知っていることがある。隼人はこんな会話をしているが、高校、大学で毎年ポップコーンのバケツがパンパンになる程、女子からもらっているということを。
ちなみにその光景を初めて見たときに「ラノベの主人公みたいだな」と凛が言ったら、「その例え方はやめろ」と言われ、割と本気で蹴られた。
「お前の場合、バレンタインでもらっても返せないって言っても、もらうもんな」
ため息を隼人はついた。
「正直、誰からもらったか全員覚えきれないし、困るからいらないんだけどな」
「モテる男も辛いんだな」
そんな話で盛り上がっているとゲームのロード画面が出てきた。
男2人で笑ったり叫んでいたが「そろそろ晩飯じゃね?」と凛が隼人に言いゲームに区切りをつけた。
「じゃあ台所借りるわ」と凛が隼人から許可をもらうと、置いてあるエプロンを着た。
泊めてもらうのになにもしないのは悪い、ということでご飯は凛が作ると決めている。
冷蔵庫にはそれなりに食材がある。彼も自炊はするのである程度の食材は入っている。
「あーそういや、妹さんの分作る?」
「ちょっと待って、今聞いてるから…こっちにまっすぐ帰ってくるらしいから頼む」
「ちなみに苦手な食べ物は?」
「貝類と納豆」
それを聞いた瞬間に凛は気付いた。
「それ、てめーのだろ」
「冗談、冗談。えーと蟹とえのきとほうれん草だって」
「了解」
「あれ終わったの?」
隼人はエプロンを脱いでいた凛を見て言った。
「妹さんが来るぐらいに、仕上げをするからまだだな」
やがて隼人が重いため息をついた。
「どうした?」
隼人がこんなため息をなかなかしないので凛は気になって声をかけた。
「ここ最近、女子と一体一で休みの日のお誘い来るんだよ…」
「あれ、まだ付き合ってるって体だよね?」
高校(中学の時かららしい)の時から、ずっとモテていたので、ものすごい数の告白を受けていて困っていたので、凛と2人で考えて決めたのが、オタクの2人に1人は言ったことがあるであろう、「○○は俺の嫁」作戦である。
どういうことかというと、彼女(2次元とは言わない)がいる情報を流せば諦めてくれるだろう。仮に彼女のことを聞かれてもある程度は答えられるので、いいのではないかと考えたのである。
結果として告白は減ったらしいので、今も続けている。
「なんで彼女いるって言ってんのに、大して仲良くない女子と行かなきゃダメなん?」
「もしかしたらチャンスある?!って思ってんじゃね?」
「ねぇよカス」
笑いながら吐き捨てるように隼人は言った。
その時、隼人の携帯が振動した。
「駅に着いたって」
「分かった」
そういうとエプロンを凛は再び着けて、仕上げの作業をした。
「やっぱすごいな、これから毎日俺の為に飯作ってくれないか?」
「お前、それ女子の前で絶対に言うなよ。腐女子がものすごい想像し損ねないから」
机の上には、オムライスとコンソメスープが乗っていた。
「こないだテレビで見て、一発勝負で真似てみたんだけど、良かったみたいだな」
凛が写真を撮ってchirpに上げていると、玄関から鍵が開く音がした。
「兄さん、ただいま」
凛にもその声が聞こえてきたが、何故か聞き覚えがあった。
そして隼人の妹の顔を見たとき、何故聞き覚えがあったかほとんど分かった。
「ほら、玲歌、挨拶」
「いつも兄がお世話になってます。橘玲歌です。」
隼人にせっつかれ自己紹介した子が推しと全く同じ顔だったからだ。
@Ametosamusa1217
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